「広い世界を見ろ。あとは自分で決めろ」
これは、僕が中学生の頃に読んで、一番影響を受けた小説の中に出てくる言葉だ。
中二病という言葉の通り、14歳の頃は思春期の真っ盛りだった。
何をしていいか分からない。でも何かをしたい。
でも自分には何もできない気がする。いや、でも実はできる気がする。
そんな悶々とした気持ちを抱えながら、毎日、自分で思いついた人生訓を大量にノートに書いて、それを自分で読み返していた。
今思い返してみると結構ヤバいが、当時は大真面目に書いていた。そして書けば書くほど、悩みは深まって行くばかりだった。
そんな時に読んだのが、金城一紀の小説『GO』だった。
『GO』は主人公の杉原が自らのアイデンティティに悩みながらも、家族・友人・好きな人と関わりあう中で、自分の生き方を掴んでいく青春小説だ。(映画版もとても良い)
初めて『GO』を読み終えた時は、身体に電撃が走るような衝撃を受けた。当時自分が抱えていた悩みの答えが、そこに書いてあった気がしたのだ。
物語を身体に染み込ませたいと、作中に出てくるカッコいい言葉たちを一生懸命ノートにメモをとって、暗記していた。
知らない音楽・映画・文化の話がたくさん作中に出てきて、全然分からなかったのだけど、ただカッコいい・・・と憧れていた。
目的地を決めずにブラブラ街歩きをするデートをする描写に、いつかこんなことをしてみたいなあと思ったりもした。そんな「憧れ」の詰め合わせのような作品で、大学生の頃くらいまで、何度も読み返していた。
今回noteで『GO』について書こうと思い、10年振りくらいに読み返した。
たくさん影響を受けた作品なので、良き思い出として大切にしまっておこうと思って、社会人になってからは読み返さないでいた。大人になって読み返して、いまいちだなあという感想を持つのが怖かったという面もあった。
そうして若干の不安とともに読み返してみた結果、初めて読んだ時と同じくらいめちゃくちゃ感動した。夢中で一気に読んで気づいたら夜中になっていた。興奮して、その夜はなかなか寝付けなかった。
初めて読んだ当時、『GO』は憧れの作品だったが、今回は物語が自分の人生とも重なって、肌で物語を感じることができたのだ。
『GO』に影響を受けて、「広い世界を見る」べく、たくさんの未知の体験をした。小説に出てくるような人との出会いもあった。難しい本・映画・文化にもたくさん触れた。
それらの経験が物語と重なって、新たな感動をすることができた。また感動できたことが、嬉しかった。
数年後に『GO』を読み返してみたら、今度はどんな感想を持つのだろうか。それを楽しみにしつつ、頑張って生きよう。
本棚に大切にしまっている小説や漫画を久しぶりに読み返してみるの、とても素敵なことだなあと思ったので、良かったらぜひやってみてください。新たな感想を聞けたら嬉しいです。
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