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世田谷美術館展覧会「作品のない展示室」
新型コロナウィルスの影響で、美術館が海外から作品を借用し予定していた展覧会を実施することが難しくなっているそうだ。私は集客や密ではない空間作りに美術館が頭を悩ませているのではないか、といったことまでくらいしか想像していなかった。
そんな折、世田谷美術館で行われているのが「作品のない展示室」だ。
普段は絵画などを魅せる箱としての美術館そのものと向き合う企画で、その名の通り、展示空間内には何もない。
これがとてもよい時間だった。
世田谷美術館は緑豊かな砧公園の中に位置している。この日も美術館に到着するまでの間にセミの大合唱に囲まれ、木の根元にはカマキリを見つけ、何人もの虫取り網と虫かごをもった少年少女に追い越された。
だから窓から見る公園の風景は作品になる。
この窓の前にずっといたいと思った。
世田谷美術館は1986年に開館した。設計は建築家の内井昭蔵。展覧会の説明文によれば、美術館を設計する上で3つのことをコンセプトとしたそうだ。
「生活空間としての美術館」
「オープンシステムとしての美術館」
「公園美術館としての美術館」
だから窓が多かったり、入り口が正面だけではなかったりするらしい。
そういえば先日みた日曜美術館で、今年リニューアルオープンした京都市京セラ美術館も鑑賞を目的にしていない人々も自由に通り抜けられる、開かれた美術館として紹介されていたっけ。
美術館というと高い壁に固く守られているイメージがなんとなくあるけれど、30年以上前も今も、いろんな人がアクセスできることを大事に設計されているものもある。
真っ白で何もかかっていない大きな壁を見て、
ここにかけられてきたであろうたくさんの作品は今どこにあるのかな。
次にここに海外の美術館の作品がかかるのはいつなんだろう。
美術館はまっさらな状態でちょっと肌寒かったり、するんだろうか。
なんてことが、つらつらと頭をよぎった。
物心ついた頃から両親にいろんな美術館にひっぱりまわされ、大人になってからは自分で国内外の様々な美術館に足を運んできたが、作品がかかっていない美術館を体験するのは初めてだった。
いつも情報の波とタスクの山の中で過ごしている中で、久々に穏やかにぼーっとして、美術館を後にしてからも公園の中をその続きのような感じで散策した。
美術館のスタッフにとってはもう開きたくない展覧会かもしれないが、あの窓からいつかまた砧公園をのぞいてみたいと思った。