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アイする

「愛しい」と書いて「カナしい」と読ませる歌詞がよくあると思います。
「宇宙」を「ソラ」と読むことがあるように。

これに対して、少なくとも私は、大した違和感を感じません。
何故でしょうか?
結論から申し上げますと、アイには愛しいも哀しいも、どちらの意味も含まれるからです。

昔、どこかで読んだ話ですが、言葉の響きには意味があるというお話です。例えば、「ナク」と言えば「泣く」「鳴く」「亡く」「無く」……と言ったように同じ響きでも複数の意味を持ちます。
私たちは、文脈によって意味を感じ取るわけですが、もし「ナク」だけを聞けばどの意味を指しているのかわかりません。
つまり、文脈によって複数の意味から適切なものが選択されるのであり、文脈がなければ多くの意味が一つの音の中に潜んでいるということです。

これが意味することは「愛しい」は「哀しい」ということなのです。

考えてもみてください。哀悼。これは何と読むでしょうか?
アイトウですよね。アイ。哀をアイと読むのです。

愛しいは哀しい。哀しいは愛しい。
日本人の死生観と合致します。
すべてのものは分つことができず、表裏一体である。

アイすることは難しい。
ええ、全くです。

気負うことない、空気のような場所であってほしい。 記事に共感していただけたら、 サポートしていただけると幸いです。