公立保育園の民間移管(民営化)
民間法人の立場から
公立保育園の民営化、民間移管の流れが続いています。
当法人も令和3年度に移管先法人として選定を頂き、本年度(令和4年度)に引継ぎ保育を行っているところで、来年度(令和5年度)より、移管法人として保育園運営を開始します。
「公立保育園の民間移管とは何か」
移管を受ける側からの視点を紹介します。
なぜ、民間移管しなければいけないのか
ズバリ、少子高齢化です。
社会を支える世代が減少します。
大きな行政では支えられないのです。
そのため、「民間で出来ることは民間で」という大きな流れが出来ました。
少子化も含め、この流れも含め、これは私達、国民の選択です。
「同じ保育を行うのに、公立が民間になると、なぜ支えられるようになるのか」「費用が下がることで、保育の質が低下するのではないか」
そのような疑問も出ようかと思います。
行政の担当者も言っていました。
「例えば、同じシステムを導入する場合でも、民間が行うことに比べて、行政が行うと、10倍以上、コストがかかる」
「公立は金太郎飴。一定の標準化が出来ている。そのため、良い方向にも悪い方向にもブレない。民間は公立より質の高い保育を行っているところもいっぱいある。」
公立より質の低い保育を行っているところもある、と暗に認めています。
ただ、一般的な傾向として、自法人の拡大を目指す組織は、質の向上へ熱意の高い法人が多いです。一法人一施設で、職員など、組織の内側に視点を向けている組織は、現状維持が精一杯で、それを良しとする考え方が強く、質の向上への意識が欠ける傾向が見られます。
あとは、個々の話になるので、様々なポイントからご判断ください。
その一助となる情報を提供できれば、と思っています。
行政はコストがかかる。
ここが最大の問題です。
個人的には改善すべきと考えますが、改善コスト、改善スピードを考えると、保育園については、まず民間移管してから、ということも選択肢の一つです。
民間移管する理由、その2
こちらも「お金」という同じ理由になりますが、こちらの方が大きな理由になるかもしれません。
多くの公立保育園は、建物の老朽化が深刻です。立て替えが必要です。
今回、当法人が移管選定を受けた園も、建物の老朽化が進んでいます。
建物だけでなく、設備の老朽化も深刻です。
当法人の拠点となる認定こども園で、エアコンのメンテナンスを業者に依頼しました。
10年以上経過し、性能の劣化したエアコンは入れ替えの必要性を指摘されました。
その最も古いエアコンより、移管を受けた公立保育園の最新エアコンの方が、型番が古いのです。
この酷暑の中で、幾度も動作が止まった、と言っていました。
「動かないよ。入れ替えないとダメだよ。」と担当者に伝えると、動作を確認に来て、その時に動作すると、「動いていますよね」とそのまま帰ります。
担当者が悪いのではありません。
それぐらい、行政の懐具合も厳しいのです。
その中で、公立保育園の建物を建て替えるとなると、費用は全て自治体持ちです。
それが民間保育園の建物建て替えになると、国から補助金が出ます。
そうです。コストとして、もう既に自治体は、もたないのです。
民間法人って、、、儲けばかり考えるんじゃない?
民間法人=金儲け主義
そのように考えられがちです。
それは、社会福祉法人の知名度、周知活動が出来ていないことの証でもあります。
社会福祉法人は、非営利法人です。
蓄えて良い資金も、制度として決められています。「社会福祉充実残額」と言います。
「法人として、自立して事業を継続するためには、これだけの費用が必要だよ」という計算式です。
この充実残額を超える費用を保有している法人は、超えた額について、公益的事業へ使うこと、および、5年以内に使用する計画を報告することが義務づけられています。
本来は、この充実残額を出して、地域への公益的事業を行うことが使命です。
ただ、実際には、充実残額がプラスになっている法人は、全体の1割未満です。自立して事業継続が怪しい法人ばかりです。何を行うにも行政等からの補助金、助成金がなければ活動できない体制です。
それぐらい、社会福祉法人は、福祉事業の活動に集中しすぎて、経営の概念が弱いとも言えます。
「儲け主義になるのではないか」という懸念ではなく、「儲けをきちんと意識しないとダメだよ」という懸念の方が大切です。つまり、「倒産するなよ」です。
何かの参考になれば幸いです。