映画 「侍タイムスリッパー」には正統派の時代劇魂が生きている
結論から。
この映画はお勧めである。
自主制作の映画なのに、アマチュアっぽさがない、豪快な作品だからだ。
大体、安田淳一監督が凄いやつなのだ。
「監督・脚本・撮影・照明・編集・他
安田淳一」
しかも兼業農家で米づくりも!?
すごい監督がいたもんだよな
見逃しかけた作品
実は、映画「Civil War」を見に行った時に「侍タイムスリッパー」のポスターをチラ見したのだが、きっと「ふざけたタイトルのドタバタ映画」なんだろうなとスルーしてしまった。
しかし、ネットでの評価を見て、「なんだかこれは面白作品いかもしれない」と思い、改めて映画館に足を運んだという次第だ。
江戸時代からのタイムスリップドラマ
ストーリー設定は単純だ。
「もしも幕末の侍が、現代にタイムスリップしてしまったら?」と言う設定。
当然、主人公の侍は混乱していろいろやらかすだろうな、と言う展開は想定内だが。。。
しかし、実は物語はここから始まるのだ!
なにしろ、主人公の新左衛門は役者ではなく、実は本職の侍なのだ。太刀さばきはどの役者よりも上手でリアリティがある。
そして切られ役としてメキメキと頭角を現し、遂に時代劇大作の準主役級の役がまわってくるのだが。。。
ネタバレするといけないので、ストーリーについてはここまでにしよう。
侍の魂を描くドラマ
本作は、実に後味のいい「侍魂の映画」である。
この映画はタイムスリップした先の現代で演じられる武士の映画であり、立派な時代劇でもある。
更に時代劇を盛り上げる裏方であるところの殺陣師や映画制作陣のリアルな姿を描く時代劇制作現場のバックステージ ストーリーでもある。
昨今の海外の映画界を見れば、ネットフリックスのSHOGUNの様な大作の時代劇が、エミー賞を受賞し、Samurai映画が高い評価を受ける時代である。世界的にニンジャやサムライが注目されてきている。その一方で、本家本元の日本の時代劇の現状はどうなのだろうか?
時代劇映画はおろか、お茶の間時代劇でさえ、制作数は激減してきている状況だ。
時代劇映画の凋落を嘆く東映京都撮影所の時代劇スタッフ陣がこの映画を応援し、撮影が暇な夏の時期にセットを解放したり、カツラや衣装小道具を貸与したりと撮影に協力したそうだが、その理由がわかる気がする。
殺陣師の関本役の峰 蘭太郎氏も随分本格的な演技指導っぽいなと感じたが、これは当然の事で、東映京都撮影所・専属演技者となって「斬られ役」として活躍する傍ら《殺陣技術集団・東映剣会》の役員・会長を歴任した方だったと知り、納得。
だから、この劇中劇の時代劇シーンはホンモノの時代劇のクオリティに仕上がっている。
自分の地元の映画館での上映の終わり。エンドロールが終了すると、数人の観客がスクリーンに向かって拍手する事態が起きた。普段シャイな日本人の観客にしては珍しいことだ。
シャイな日本人のひとりである自分は、やっぱり拍手する勇気はなかったが、コッソリと涙を拭って立ち去るのであった。
終わり