臨界学校の思い出 #架空ヶ崎高校卒業文集


 2008年
 3年U組 核弾頭 爆

臨界学校の思い出

僕の高校生活一番の思い出は二年生で行った臨界学校です。

臨界学校で訪れる虚穴原発へはバスで半日ほどかかりました。原発に近づくにつれ奇形の動植物がみるみる増えていくのを覚えています。
防護服を着て下車の準備をしていると、先に降りた班が三つ首の大鷲に襲われていました。
鷲に啄まれた田崎くんの防護服に穴が開くと、皮膚が爛れ落ち、タール状の液体を全身から吹き出しました。放射線を受けたのです。
虚穴原発の放射線が生命体を変質させると授業でやったばかりで、実際に見られてとても感動しました。

田崎くんはこれ以降ひどい悪臭を伴うタール状の液体をドバドバ噴出するようになり機関に引き取られました。元気でやっているでしょうか?


原発の中に入れたのはクラスの半分ほどでした。
目の輝きを失った人、吐瀉物が防護服内を汚している人など各人が様々な反応をしながら見学を始めました。

職員さんにも異形の方が多く、僕達の班を案内してくれた死ヶ峰(ですがみね)さんも腕と触手が三本ずつに足が七本ありました。
「ここで働く人はみんな手足が増えていくんだ。職業病みたいなものかな?」と死ヶ峰さんが笑いながら言うと、何人かの女子が金切り声を上げて発狂してしまいました。
この時から山本さんは人には見えない物が見えるようになったそうです。


見学で一番印象に残っているのは青く光る原子炉です。稼働中の炉からはチェレンコフ光という青い光が出るそうで、見学しに来た人の多くがここで目を奪われ命を落とすそうです。
僕たちのクラスも例外ではなく、ここに来た人のほとんどが炉に飛び込みました。炉がすぐに臨界に達し飛び込んだ人は原子レベルに分解されてしまいました。


帰り道はみんなヘトヘトでした。結局、帰ってこれたのは五人だけで、いつの間にか先生もいなくなっていました。

分解されてエネルギーとなった人、放射線を受けて形が変わった人、いろんな人を知れた臨界学校。
いつまでも忘れられない思い出ができました。

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