敵を称える阪神ファンが日本一を呼び込んだ
プロ野球・阪神タイガースが日本一になれるぞ!と。思ったのは、昨日(11月4日)のことだった。
相手オリックス・バファローズでライトを守る、森友哉選手のナイスキャッチに大歓声と拍手を送ったのだ。
それも、リードを許している場面で、得点のチャンスが消えた瞬間である。本来なら意気消沈するところを、ナイスプレーと喝采を挙げたのだ。
本当に嬉しかった。
阪神ファンが、大観衆の単位で敵選手を称える姿など思いもよらなかった。
確かに、森友哉選手は阪神ファンにも好かれている
昨年まで阪神に在籍した藤浪晋太郎投手は、大阪桐蔭高校の一学年先輩。捕手として、藤浪投手などとともに、高校野球全国大会を4連覇(春2回、夏2回)を成し遂げるなど、阪神ではないほうの甲子園の星である。長らくキャッチャーとして知られているからこそ、ライト・外野での好守を、素直に称えた面もあっただろう。
それでも、タイガースファンの多くが成熟した証拠だと思っている。
敵を称える余裕があり、栄冠を迎え入れる資格を十分に持ったファン。この日負けても、明日勝って日本一の歓喜に沸くだろうと。
そして、本当に日本一になった。
岡田監督いわく、38年ぶりにアレのアレを掴んだ。
阪神ファンながら、阪神ファン嫌いに
阪神タイガースファンでありながら、かなりの数のタイガースファンを嫌いになった時期があった。
冷静になれず負ければ敵味方関係なく八つ当たりするトラキチたち、そういう構図が頭を離れなかった。
31年前、ヤクルトファンが青い傘を盾に・・・
1992年10月10日の甲子園球場。高校の友人と連れ立ち、まだ販売設定があった当日席を目指して前夜から現地で一泊しての観戦だった。
目の前でヤクルトスワローズにリーグ優勝を決められた。
2連勝すればリーグ優勝の可能性が残っていただけに、観客の95%ほどが狂いだした。
客席にあるものすべてを、グラウンドに投げ込んだのである
野村監督を3度ほど胴上げしたヤクルト選手は早々に避難し、全観客の 5%もいないヤクルトファンはレフトスタンドから外に出ることも出来ず、持っていた青緑色の傘で飛んでくる物品から身を守る有様だった、東京音頭どころではない
さすがに貴重品や自分の持ち物までは手にしないが、バックに入っていなかったり置いてあるものなら、ごみでも何でもグラウンドに送り込まれた
雑誌20冊が、フェンスの向こうに消える
すると、友人の一人が大きな嘆き声を上げた
「俺の、サイクルスポーツ全冊が無くなった・・・」
徹夜のために持ち込んだ月刊誌2年分ほどが、天然芝の中に吸収されたらしい(そんな重い荷物を持ってくるのがバカという説もあるが、この友人は、この一年後に旅先の古書店で巨人の星30巻ほど全冊を買うような人物であるから止むを得ない。今も阪神ファンである。)
衝撃だった
暗黒時代に差し込んだ光が消えたことへの爆発ではあっても、正気の沙汰とは思えなかった
東京から関西に戻って、さらに・・・
しばらくして就職で東京に移り、穏健?なタイガースファンとともに、合唱や手振りやらを強制されることもなく、応援を楽しんだ。
その間、観戦した対巨人戦は7戦全勝(東京D5勝、甲子園2勝)だったことと、2003年のリーグ優勝が決まった試合を甲子園で観たのは、今でも自慢である
だが、阪神ファンの気持ちはすこしずつ弱くなっていった
関西に戻ってきたからだ
甲子園にすぐ行けると思ったら、そうではなかった
年間予約席を持つ方のご好意でネット裏席に座れたこともあったが、多くの場合は予約不可。当日券設定など当の昔にない
大阪駅前ビルの金券ショップでは、2倍3倍の値段でチケットが並ぶ
優勝争いをしてない時期でこれだから、やるせなくなる
相変わらずの偏重報道
なにより、大阪の各マスコミが阪神びいきを続けているのが、違和感を強めた
オリックス球団とは阪急時代からの縁である関西テレビ(カンテレ、フジ系列)は別として、あとの各局はタイガースびいき一色。テレビをみなくとも、ネットなど別の媒体からでも、報道偏重が伝わってくる。かつてはパ・リーグ人気のほうが強かった関西で、この地位を掴んだ阪神サイドの努力は認めるにしても、何だか面白くない。
私のようなひねくれ者は、メジャーな存在を嫌う。
ブランドにすがるものを遠ざける。古い表現をするなら、判官贔屓なのだ。
ファンの質が悪いから勝てない?
さらに、様々な若手選手がタニマチ(金持ちのファン、大阪の地名・谷町に由来)の誘いを断れず、夜の酒宴に誘われて体力を奪われたという。なかには天狗になって成績を落とすケースもあったそうだ。
真偽のほどは別として、どうしてもそう思うほかない有力選手がいたから、「阪神タイガースが最後に勝てないのは一部ファンのせいか?」と疑うようになった
そしてこの5年ほど、裏方から選手に至るまで、様々なタイガース関係者のご尽力がわかってきたからこそ、応援しがいがなくなっていった
たとえ一部であっても『ファンが足を引っ張んな、ボケ』と
徐々にオリックスファンに転向
しだいに、もう一つの関西球団、オリックス・バファローズを応援するようになっていた
回数券なら、日さえ良ければ一回3,000円程度でバックネット裏にも座れる
人気がないことが、皮肉にも私がファンになるきっかけとなった
なにより、実家にも自宅にも本拠地が最も近いチームである
同郷の平野佳寿投手がいるのも大きい。ベテランの彼が動けるうちに、優勝してほしい気持ちもあった
気楽に応援
オリックス球団は、ネット配信も駆使し、選手のキャラを押し出すのも上手い
阪神と同様、人材確保と育成の技術も高い
気が付けば、リーグ連覇のうえ昨年は日本一、今年は断トツでリーグ優勝し3連覇となった
オリファンは、応援強制はしないし、私のような単に野球観戦を楽しみたいヤツもそっとしてくれる
ちょうどよかったのだ
地味に比率を増やすオリファンとともに
最近は大阪の街中で、オリックス応援歌「SKY」が聞こえたり、ユニホーム姿の人(特に女性)をみかけることが多くなっていった(本来、阪神の本拠地は兵庫県、オリックスこそが大阪府である)
そうしているうちに、天はほほえんでくれた
今年のリーグ優勝試合を、京セラドーム大阪の現地でみることになった
大人しいオリファンでさえも、逆転を決めた場面では、知らない人同士でもハイタッチしたものだ
これで、関西球団のリーグ優勝二つ、それも本拠地で立ち会ったことになる。個人的に、思い残すことは無い
ついに・・・
今年の日本シリーズは、関西両チームの対決となった
どっちを応援していいのかわからない組み合わせで、複雑な気分だった
が、森選手への歓声が阪神側からも大きく聞こえたことで、腹は決まった、
「今年は、阪神日本一でええ」
なんとも横着な感想だけど、気持ちが落ち着いた
と、缶ビールを一杯あけながら、一気に書いてみました・・・
おめでとうございます!
チームや所属に関わらず、全ての関係者の皆様にお礼申し上げます!
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ケイゾクエナジー近藤
SDGs的なことを書いていると思いきや、情報社会関連、大学でも教えているボランティア活動などを書き連ねます。斜め視点な政治経済文化評論も書…
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