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サラリーマンによる時間の使い方。イチロー氏と女子野球から。

今月 3日、高校野球女子選抜とイチロー氏率いる「KOBE CHIBEN」の試合が東京ドームで行われた。試合の様子は、TBSがアップしてくれているYouTubeで観られる。

気になって、KOBE CHIBENのメンバーをみると、私と同じ40代を中心に、比較的時間の取れそうな方々が名を連ねている。
イチロー・松坂大輔両氏を除く14名のメンバーのうち、「会社役員」を肩書とする方は 9名にも上る。ほかの 5名も、イチロー氏の通訳を務めたアラン・ターナー氏と今も野球のコーチを務める方が2名だから、会社員など、いわゆる被雇用者とみられるのは 2名しかいない。

この私でさえ「団体役員」と「大学教員」なら名乗れるから、実情はわかりかねるが、
勤め人だと、やはり時間の都合が難しいのだろうか。

いや、自分がサラリーマンだったころを思い出すと、土日は(趣味も含めて)休むものだと思い込んでいた節がある。
タイムカードでしっかり就労時間とそれ以外が切り分けられる立場。それでも社会活動系をやり続けたのは、奇跡だったかもしれない。

土曜出勤だった父だが

私の父は、70歳ぐらいまで、長らく野球をやっていた。

経歴を思い出すと、30歳前後から40代前半までは自営業、以降は多くの仕事を発注してくれていた親方のもとで働き、番頭的な立場にあった。
法人化後には取締役だから、名乗りは「会社役員」となる。

実態としても、残業と日曜出勤は一切なかった。土曜は出勤だが、仕事量(=受注量)が少なければ早めに切り上げてしまう。
自営業であれ、会社員や会社役員であれ、定時とかとは関係なく、自分で仕事の時間を決めていた人だった。

趣味の野球を続けるには最適である。

女子野球にプロはあっても社会人はない・・・

KOBE CHIBENと対戦した相手は、全員が高校生である。女子である。
その多くが、プロ野球入りを目指すと聞く。
保育士になってスポーツの楽しさを伝えたいとした選手もいたが、いずれにしても、野球に専念する時間を確保するなら、今の日本のサラリーマン文化では難しい面があるだろう。家事専念だとしても、地域の色々がどう出てくるかはわからない。

男性なら、社会人野球というのがある。大阪だけでも、日本生命とかパナソニックとか、大阪ガスとか。
が、これも選手を引いた後は、指導者や運営として関わらない限り、社業に専念するサラリーマン人生に切り替わる。(チームがあるような大企業だと、なおさら自由は効かないかも)

純粋に趣味で続けたければ、時間を割く自主性が必要になる。

サラリーマンの拘束時間は減っていく

無難に、普通に勤め人の人生に変わったほうがいいのでは。
とおっしゃる方も多いだろう。

ご心配は当然だが、多くの「サラリーマン」から時間を奪う職能が減ってきている。工場労働はロボットに、事務作業はITアプリに。営業やコンテンツ制作の一部までもがアプリに。
そのアプリでさえ、各個人で作れる時代がすぐにやってくる。

善し悪しは別にして、エッセンシャルワークとされる業種を除くと、労働者として拘束される人は、日増しに要らなくなっている。
逆に、一部の人に仕事が集中してしまう残念な傾向もみられるが、もし拘束されにくい立場になったなら、趣味に走る時間を増やしていいと思う。

趣味から、飯の種が生まれるかもしれないし、生まれなくとも楽しみながら社会のためになることだって出てくるだろう。

お金の使い方も違う

時間だけでなく、お金の使い方にも、知らず知らずのうちについた思い込みがある。

たとえば、収入を「手取り」でしか考えたことがない方は要注意だ。
勤め先によって、給料から税金や保険料が自動的に引かれる状況に慣れてしまっている可能性が高い。
そんなことぐらい知っているよ~と言われそうだ。が、確定申告をしたことがあれば、趣味に使ったお金でも、経費として扱う発想が出やすくなる。
あくまで推測だが、KOBE CHIBENのメンバーにも、交通費や練習場の使用量ぐらいは、何とか経費扱いにして、課税所得から差し引いている例があっておかしくない。少しでもスポーツに関わっていれば、堂々と経費にできる。法人・個人事業いずれにしても問題はない。

サラリーマンの仕事として関わることも

KOBE CHIBENメンバーでサラリーマンのうち一人・清家望氏は勤務先をワコールと公表している。
それなら、同社が経理上の「広報費」として諸経費を負担しているかもしれない。スポーツ系のブランドCW-Xも展開しているから、社員が参加している事実だけでも、絶好の宣伝機会だろう。・・というか、ワコールは、この試合の協力企業に入っているようだ。確実に経費を負担している。

それで、清家氏のことを検索してみると、以下のようなサイトが現れた。
イチロー選手、3000本安打達成を支えた 女性下着のノウハウとは
同氏は、CW-Xの開発担当を経て今は事業企画課長という。ざっくり要約すると、20年以上前から同ブランドはスポーツタイツに進出していたのだが、先に愛用したのはイチロー氏だそうだ。そのうえで、アドバイザリー契約を結び、今に至るという。

なお、清家氏は2004年の入社というから、イチロー氏とのアドバイザリー契約後に従事されている。むしろ、ワコール社に就職した役得を生かして、KOBE CHIBENに参加できているとも捉えられる。
本人が喜んでらっしゃるなら(職務上、決して本音は聞けないだろうが)、立派なサラリーマン人生ではないだろうか。もしそうなら(そうだと信じたい)、私もスポーツタイツの購入を検討したい。
(宣伝もさせていただいているので、引用の数々はご容赦くださいませ)

様々な”野球人”に触れる良い機会でもあった

硬式野球で羽ばたこうとする女子高生たちにとって、KOBE CHIBENのメンバーと出会えたのは大きい。
様々な人々がいる事実と出会う。それも、プロ経験者やアマの指導者、関連製品メーカーの社員から純粋な趣味人やイチロー氏の友人まで、それぞれ違った野球に関わる形がみられる。
この点で、男子の高校球児たちのそれを、はるかに超える経験になったのではないだろうか。イチロー氏のことだから、すでに趣旨のなかに入っていたと思われ、さらに脱帽の思いが深まる。

生き方を絞るのは、後でもいい

大学教員、NPO役員など様々な動きをする私だが、若い方々に対して最も留意しているのが、生き方の想定を簡単に絞らせないことである。

サラリーマン的なキャリアと、それ以外のキャリアの両方について、一回でいいから想像したほうがいい。特に時間の使い方について、自分が好ましい人生になるかが重要だ。
そのうえで、色々と思案したり動いたりすると、どちらで成功しようが失敗しようが、冷静になりやすい。

大都市圏だと、校区内に一戸建て住宅しかないような小学校がある。
ある対象校の児童について、「社会への関心」をあらわす指標が常に平均以下だと聞いたことがある。周囲に事業所や商店が少なければ、昼間の大人に出会う確率も低いのは当然で、社会への想像力が高まらないのは仕方がない。

上記のような当人・当事者の責によらない不足についても、接する大人の事例を増やすだけでも十分に補える。
事例に多く接し、想像が深まれば、サラリーマンであろうが事業主であろうが何であろうが、自分で考えた時間の使い方ができるだろう。



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