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企業文化は、入社前に先輩から伝えられる?(フジテレビ経営陣は早慶出身ばかり)

先の記事で、フジテレビを追い出されたような形で辞めたアナウンサーの事に触れた。
長谷川豊氏である。私とは大学どころか学部も同じで、中央や組織の類が好きでもなく反骨心があるところなどは、いかにも!な思いで眺めている。

彼は、日枝久氏が社長として直接の実権を持っていた時期における、最後の新卒採用アナウンサーだったという。
長谷川氏によると、他局とは違い、アナウンサー部署が部クラスとしては独立せず、局の下にある編成部内に位置付けられる構造は日枝氏が築いたそうだ。営業支援いや接待要員として、編成部長からの要請いや業務命令を受けた場合、アナウンサーは直接の「部下」であるがゆえに断れないという。数々のアテンド行為の首謀者・Aプロデューサーとされる中嶋優一氏は、今年1月に(おそらく)左遷される直前まで編成部長であった。
その他の詳しい話は、堀江貴文氏チャンネルのYouTube動画を観ていただきたい。フジテレビ買収を阻止された男と、追い出された男の会話である。番組「とくダネ!」以来の知己らしい。

日枝氏が退こうが「上納」文化は続いた?

気になったのは、日枝氏が社長を引いて20年以上経ってからも、同氏が作ったアナウンサーを接待要員にしやすい仕組みが、続いたという所だ。以下、仕組みは「上納システム」と書き換えていく。
上納システムは、日枝氏が社長になった1988年頃から始まったと考えられる。あからさまにバブルな時代背景上、そういうものだと思われていた面もあり、当の「女子アナ」も受け入れるどころか、積極的に関与したケースもあっただろう。
フジテレビに限らず、他の業界・企業もそうだったはずだ。これを否定できる当時の働き手は、是非ご連絡いただきたい。『なかった』の証明は難しくとも、『守られた』ことがあるの証明ぐらいは出てくるかもしれない。

それがフジテレビに限って、21世紀になっても、昨年あたりになっても上納システムが続いていたとしたら、どうなのか。しかも、肝心の日枝氏は2001年に会長に退き、さらに2017年には現任である相談役に退いている。
入社してしまったら、アホな乗りに漬かってしまわねば!なスパイラルは、体育会な他業界の企業にもあるだろうが、フジテレビ(の一部)だけに残ったのなぜだろうか。

お台場移転がガラパゴス化の理由?

開局以来のフジテレビ本社は、新宿区の牛込地区・河田町にあり、他のコンテンツにアクセスしやすく、製作者にとって参考資料を集めやすかった立地だった。
他のコンテンツとは、当時であれば劇場や出版が該当する。
特に出版社が集中する千代田区・神田神保町近辺へは、曙橋駅から都営新宿線一本で3駅の距離で、当時なら日本テレビの次に近かった。河田町じたいが山手線の中央部にある以上、タクシー文化のテレビ局であれば、都内どこへでも出られるから、様々な情報が集まりやすかったのは、想像に難くない。

それが、港区といっても、台場に移転してしまった。
レインボーブリッジから海を渡らねば、最短距離で東京の主要部にはたどり着けない。封鎖されて困るのはフジ自身だ。都会の離島というか、コンテンツに限らず、様々な企業文化がガラパゴス化して残ったのだろう。よく、フジは昭和を残していると言われるが、素直に納得する。
もちろん、(代表権がなくなっても)日枝氏怖さが理由に残ってきた文化もあるだろう。
そもそも移転自体が、日枝氏の実権獲得に直接絡んでいるそうだ。
オーナーの鹿内一族による持株比率を下げるべく新株を発行したが、資金を追加する(表向きの)主な理由が、お台場での新社屋建設だった。鹿内一族を取締役会から追い出すことには成功したが、代償は大きかったかもしれない。

普通の学生に「企業文化」は伝わらない

アナウンサーも接待要員にしますよ~なんて明文化されたものはないから、採用に望む学生達は知る由もない。実際にひどいことをしていたのはプロデューサーA氏だけだとしても、画面を通して見える、ふざけ騒ぎ好きな社風がどこまで深いものか、あるいは本当かはわからない。
長谷川氏によると、学生のうちから「フジの女子アナはキャバ嬢だから」との定説を耳にしていたそうで、『下ネタ男性でも上手く転がしてやる能力が必要』との(建設的な?)意味合いが含まれているという。

だが、長谷川氏が一定の情報を得られたのは、彼が学内放送局のアナウンサーを務め続けて業界からの注目を浴び、専攻も情報社会学で、早々から志望を固めていたからだと推察する。キャバ嬢だから~もOB訪問に来た学生に対する局員の発言という。

長谷川氏に前後して、普通の就活学生だった私は

私は、同じ学部・専攻かつ1学年違いでしかなかったのだが、全くそんな情報は入ってこなかった。マスコミ対策向けセミナーにでも通っていれば、少しは耳にしたかもしれないが、新聞社の採用セミナーを何社か回っていても大したことは聞かなかった。

既存マスコミでの就活成績は、新聞2社(全国紙と地方紙)、出版3社(すべて東京)、テレビ3社(すべて在阪)の筆記試験に合格するも、次の面接に受かって役員面接まで進んだのは出版1社のみ。
各社の文化を考えず、勝手にしゃべっていたのだから、落ちて当然だ。
役員面接では、東京までの交通費をもらえた。父から聞いていた昔の雑誌の話で盛り上がったものの、何かを見透かされようで落とされた。現役学生のうちに、人の金で遠出できただけでも有意義だった。

かつて企業文化に合う学生を採用する仕組みが全盛だった

2010年代からは「ブラック企業」とのフレーズが定着したが、ブラックと言われる企業でも、適した人材はいるだろう。当人がブラック企業を望むケースだってあり得る。

では、広報手段を通じて企業のありのままを広げればいいかといえばそうではない。少し前の吉本のように「ブラック」感を話のネタにできるようなイメージを持っていればまだしも、多くの企業にとって下手なことは言えない。
該当の企業に勤めている張本人が、学生に実態を話すこともまずない。飲み屋とかでの裏話ならまだしも、公開の場では晒さないのが大人の事情だ。ネット上で匿名アカウントで明かすにしても、出元がばれるリスクがある。
むしろ、ハッキリと顔を出す公表アカウントで「公人」として語るほうが、炎上や勤務先の妨害はある一方、共鳴者から有形無形の手段で守られる可能性も出てくる。

企業文化に合う学生を採りに行くには?

であれば、勤務先の妨害や炎上も避けられる形で、ほんとうの企業文化にかなった新人を採用するにはどうすればいいか。

一つにはコネ採用がある。すでに親を知ってのことだから、近い人間性もわかっているし、親あるいは子を人質のような形で雇用しておく形態も考えられる。戦国時代じゃあるまいしと言われそうだが、現代でも使える、もっとも穏健なセキュリティ対策かもしれない。

もう一つが紹介採用だ。
だが、学生と直接話すようなサラリーマンなど、その手の業界・職種にいないかぎり皆無だ。人材エージェントも使わずにとなると、最も確実なのが先輩後輩の縁、いわゆる学閥を使うのが手っ取り早い。

イエスマン予備軍?としてのリクルーター採用

学閥による採用は、かつて(一部では今も)リクルーター採用と呼ばれていた。
本来のリクルーターは、自衛隊の応募担当よろしく、自らの職場(または依頼元)への理解を求めつつ、適性も探るような立場で、最近では、こちらの意味で使われることが多い。

2010年ぐらいまでは、有名企業による、各出身校に設定された募集枠の採用担当者を指した。
たまたま、メガバンクにお勤めだった方との学生について話していたところ、新卒で入社した都市銀行Aでのリクルーター採用の話になった。また近藤なりの意訳ながら、以下にまとめてみる。

古巣の銀行で(学閥型の)リクルーター採用が始まったのは、まさに自分の母校(旧帝大)が発祥で、自分が入行する何年か前(1970年代半ばとみられる)だった。
同じ大学の部活やサークル経由であれば、サラリーマンと現役学生が本音で話せる機会も得やすいから、上手くやってくれ・・・とのことだそうで、自分自身、共に練習したことがある部活の先輩から電話があって、面接をうけたら入行することになった。
入社2年目ぐらいからは、逆にリクルーターを務めることになった。本店会議室の一室が各大学ごとに当てられ、人事部から配分された採用枠を確保すべく、他の同窓生たちと入れ代わり立ち代わりで会議室に通う日々が続いた。会議室には数台の電話(とうぜん固定の黒いやつ)があって、黒板には採用候補となる学生の名前が並び、初回連絡はとったのか、反応はどうだったのかを書いて共有するようになっていた・・・

都市銀行Aにおける1980年前後の状況

もし、大意が間違っていたら、ご指摘いただければ幸いだ。

私のリクルーター受験体験談

私の頃(20世紀末)も、学閥型リクルーター採用は全盛期だった。
先輩に呼ばれる可能性が低い部活だった上に、その手の会社には行く気もなかったのだが、どういうわけか都市銀行Aの先輩から電話がかかってきた。
呼ばれたのだからと私は、大阪の中心部にある『○○倶楽部』まで足を運ぶと、銀行Aの本店は目と鼻の先である。
20~30分だったか、話が弾んだところで、『近藤、何か話してへんことあるやろ』と言われた。観念して、そこまで避けていた”先輩に呼ばれる可能性が低い部活”の話をしてみた。

結果は大ウケ。
『あとで電話かかってくるから、待っとけ』と笑顔とともに、先輩が話していたのを覚えている。
が、いつまで経ってもかかってこない。実家にも携帯にも形跡がない。
部活の話は、規約上可能とはいえ、連合組織の意思に逆らった話であったから、いけなかったのかもしれない。連合組織のほうは、銀行とはそりの合わない系統(要は左翼っぽい志向)であり、自分のほうもそっちと見られないよう部活の話を避けていたのだが、盾突いた事実のほうが疎まれた可能性も考えられる。

1980年ごろの話をしてくれた大先輩からは『単に着信に気づけへんかっただけかも』とフォローしてくれたが、私の母校は旧帝大の倍以上の学生がいるにもかかわらず、採用枠の人数が半分以下とみられる。もともと倍率が厳しかったわけで、そのことについても大先輩は触れてくれた。
さらに、リクルーター採用枠がない大学のほうが圧倒多数であることを考えると、ある種の差別型採用(だった)ともいえる。

フジテレビは、学閥型リクルーター採用がもたらした弊害の典型例?

フジテレビの話に戻すと、Wikipediaの記述を信ずる限り、経営陣のほとんど(全員!?)が早稲田大学か慶應義塾大学の卒業生である。主要人物で挙げると(以下・敬称略、太字は記事投稿時点で現職。持ち株会社のフジ・メディア・ホールディングスを”HD”、フジテレビをテレビと略す)

日枝久 HD相談役(元HD社長・会長、元テレビ社長・会長)・・早稲田大学教育学部(おなじ早大出身の森喜朗元首相と仲が良かったとか)
嘉納修治 前HD会長兼テレビ会長(2025年1月まで)・・慶應義塾大学経済学部(灘の酒造家一族出身、嘉納治五郎の遠い親戚)
遠藤龍之介 HD副会長(元テレビ社長)・・慶應義塾大学文学部(作家・遠藤周作の長男)
金光修 HD社長兼テレビ取締役(元テレビ社長)・・早稲田大学第一文学部(なんと、中途入社らしい)
港浩一 前HD取締役兼テレビ社長(2025年1月まで)・・早稲田大学第一文学部
清水賢治 テレビ社長・・慶應義塾大学法学部
中嶋優一 前テレビ編成局編成部長・・慶應義塾大学経済学部(プロデューサーAとされる人物、左遷)
宮内正喜 元HD会長・テレビ会長(2024年6月まで)、元HD社長・テレビ社長・・慶應義塾大学法学部

参考・騒動以前の社長や会長)
亀山千広 元テレビ社長(2017年6月まで)・・早稲田大学政治経済学部
太田英昭 元HD社長(2015年6月まで)・・中央大法学部
豊田皓 元HD社長・テレビ社長(2013年6月まで、HD副会長としては2017年7月まで)・・成城大学経済学部

2015年6月に太田英昭氏(中央大出身)がHD社長を退任して以来、HDとテレビの社長および会長に、早慶以外の出身者の名前はない。また、名前を挙げた方々では、金光氏を除くすべての方が新卒でフジテレビに就職している。学閥型リクルーター採用とコネ採用を併用しないと、ここまでの顔触れは達成できないだろう。
二つの大学出身だけでHDと事業会社の代表取締役を独占している時点で、十分に偏った構成であり、他の考えや時代背景を理解するのが難しそうにみえる。そこへきて、都会の離島・お台場に本社があっては・・・・

フジテレビや放送業界に限らず、こういった硬直化は様々な企業で起きているはずだ。
学生の皆さんは、ある学校の出身者で経営陣が固められている企業や団体への就職は、よくよく検討されたほうが良い。経営陣と同じ出身校であるならなおさら要検討で、社内外ともに「コネ採用だろう」「あの人の系列だろう」と捉えられるのはプラスマイナスどちらにも働く。先輩が不祥事の責任者となれば、可愛がられるメリットなど全部吹き飛ぶ。
というわけで、この一件とはかかわりのない、全ての早稲田大学または慶應義塾大学出身のフジテレビ従業者に深い同情の念をささげるとともに、ほんの少しだけ「どうせ学閥優遇を狙って、早慶に入学したんだろう」との冷たい目線を注がせていただく。

リファラル採用をしても、類は友を呼ぶだけ?

最近ではリファラル採用といわれる、社員などからの紹介を経た人材確保が流行ってきている。同窓でなくとも気が合いそうな求職者がいれば紹介すれば良く、リクルーターのように採用枠を満たすべく常に人材を探しておく必要はない。『良い人がいたら、引っ張ろう』というやつで、いちいち横文字にする必要が無いと思うぐらい、本来の人材獲得法かもしれない。

ただ、フジテレビ社員がリファラル採用をやったとすれば、「おふざけ」ノリやバカ騒ぎについて来れそうな人を優先しそうで、コンプライアンスや最新の時代背景に敏感な方は難しそうな気がする。そもそも「フジの女子アナはキャバ嬢」と明言している時点で、そういう覚悟をもっているか、あるいはへ平気な人材しか入ってこないだろう。
無理矢理にでも、違うタイプを入れるしかない。
早慶出身者を採用枠の2割以下に制限するとか、外部の基準でフジテレビ(テレビ業界全般でもいい)の批判や再建案が優れている人から採用とか、それぐらいの覚悟で多様性を目指すぐらいでちょうどいいだろう。

その前に、経営陣の刷新だ。
私のようなヤツにまで「学歴バカの集まり」などと誤解?されるような人材偏重とならないよう、取引先やOB・OG、株主はもちろん外部をも巻き込んで、配慮されれば良いだろう。

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SDGs的なことを書いていると思いきや、情報社会関連、大学でも教えているボランティア活動などを書き連ねます。斜め視点な政治経済文化評論も書…

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