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味の違いはわかりません

食べ物に頓着がないし、味の違いってよくわからない。
ありがたいことに現代の日本っておいしいものが沢山あるし、ほとんど料理できない私でも何とか生きていける。

コーヒー豆の味の種類の違いはわかるけど、同じ種類で産地が違う、とか、同じ種類で値段が高い安いとか、そういう違いは全くわからない。安くても自分がおいしかったらいいじゃん、という発想だし、逆に言うと本とか芝居とかにお金かけたいから、高級店で何か食べたいと思ったこともない。


まあそれは私の感性だから、違いもわかるし、よりおいしいものに出会いたいって人もきっといるだろう。それはそれで良いと思う、それがその人の人生。


前置きが長くなったけど、サザコーヒーさんというお店でコーヒーとカステラを買ってきた。
https://www.saza.co.jp/


ほとんどの店舗は茨城県内なんだそうだけど、都内にも丸ノ内と品川に店舗があって、何とか足を伸ばせそうだっていうタイミングがあったので初めて行ってみた。
……正直言うと、全商品がじゃないんだけど、ものによっては「たっっっっか!え?何これ?一杯でこれ?え?」ってなりました。ベローチェで200円くらいのコーヒー飲んで「おいしいねえ」って言う人種なんで、びっくりしちゃった。(でも今調べたら、ベローチェも300円まで上がってるんだね。時代だね)


で、まあ自分で飲んでも多分味の違いもわからないし、「さすがこのお値段」とも思えないんだろうなあと予想しつつも、何種類か買いました。ドリップパックを3,4種類と、カステラ。カステラがまた、マデラワインを使っているらしい手の込んだ一品で、片手にぽんと乗るくらいのサイズなんだけど1,980円。おおー…………なかなか普段は出さない値段(↓これこれ)


購入して数日後、コーヒーもカステラも頂きました。コーヒー。うん、コーヒーってなんでもおいしいよね……けっこう苦味が強い系なのかな、ストロングな苦い濃いごりごりのコーヒーは好きなので、好きな系統の味だなとは思いました。(お値段相当なのかどうかはわかりません)

カステラ。食べて、家族にどう?って聞かれて、第一声で「お金をかけてる味がする」って言いました。最低(笑)。ワインねえ、お酒も飲まないからマデラワインの風味がどうこうとも言えないし、でもしっとりしてて、ざらめがじゃりじゃり言ってて、おいしかった。かなり甘さがしっかりしてて濃厚でした。濃い目のコーヒーと飲むには、相性よかったかも。


という、自分では味も価値もわからんコーヒーを買ったのは、なぜかというと、父がずっと飲みたい、お店に言ってみたいと行っていたから。たぶんテレビか新聞かでサザコーヒーさんを見たんだろうな。どこからかそういう情報仕入れてきては、「あれ食べたい」「あそこ行きたい」とか言う人だったから。

あと、それこそ父も食べ物には全然こだわりなくて、母の作る料理はなんでも残さず食べてたし、文句つけるようなことも絶対になかったし、それでいてカップ麺とかでも喜ぶから「作り甲斐がない」とは母に言われてたけど。
でもそういう感性の父だけど、コーヒーだけはずーっと好きで、銘柄にこだわりがあるというよりは、コーヒーという存在が好きだったのかな、と今は思う。

亡くなる前、入院する前、家にいた頃、サザコーヒーって名前を父から聞かされて、ずーっと頭の片隅にはあって、ふと一周忌を前にして、「あ、買ってこよう」と思った。


ドリップしたコーヒーをマグボトルに入れて、カステラは箱のまま紙袋に入れてお墓に行った。プレートの掃除してお花供えて、父が使ってたマグカップに入れたコーヒーも置いて、お線香あげて、プレート墓地の真ん前にベンチがあるからそこに座って、コーヒーを飲んでカステラを食べた。果たしてこれが父がずっと望んでいた味なのかどうか分からないまま、とりあえず私が頂いた。
(母にもあげようとしたけど、「別にいい。そもそもサザコーヒーなんて初めて聞いた。お父さんそんなこと言ってたの?」ぐらいの反応。しょんぼりした)


お墓参りをする度に、正解のないまま父のことを考える。正解のなさと、もうずいぶん時間が経ったなあという虚しさと、でもこれとつきあっていくしかないもんなあという諦めと、お墓に向かって来たよーと言う時のほんのりした寂しさと嬉しさと、なんだか色んなものが去来する。
あとお墓にいる時は無理にしゃべらなくていいし、ぼんやりものを考えてもいいし、自然が多いからただ眺めててもいいし、無理しなくていい場所だから、お墓参り自体は好きだな。


本当の命日までにはあと数日あるけど、でも、もう一年になるのだ。一年が過ぎたら、何か変わるかな。変わらないかな。今年は年賀状を書いてもいいんだ。たった一年空いただけなのに、とても久しぶりのことのように感じるな。

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