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「いい子のあくび」/ 高瀬隼子 / 集英社 / 2023
「ぶつかったる」
と、スマホを見ながら周りに注意も払わず、駅構内を闊歩する輩、ながらスマホで自転車に乗る中学生に嫌悪感を抱き、密かに体当たりする主人公直子。
よく気の付く「いい子」は、小学校の頃、校長先生の話をあくびを噛み締めながら熱心に聞いている振りをしていた。
そんな直子が思う
「なんだわたしやっぱりこいつならいいやって選別されてぶつかられてたんだな、と今更のように気づいたのだった。分かっていたけど、分かっていないことにしていたような、それで、わたしもよけるのを止めにした。よけない人のぶんをよけないことにした。」
これには、物凄く共感してしまった。
「こいつならいいや」と選別されている感覚。そういうモヤモヤを抱えて生きている。そこを明らかにしようとしゃしゃり出れば叩かれる。夏目漱石が言い放った
「とかくこの世は住みにくい」まさにそれだと思う。
結局、直子は恋人の裏切りに気づき、体当たりが仇になり、深い痛手を負うことになるのだけど、それを救ったのは、何気なく届いた友達からのLINEの言葉だったりする。その友達は、決して直子を救おうと手を差し伸べたわけではない。。なんか割に合わない気がするけれど、人はそんな風に救われているのかもしれない、と感じてしまう。
小説は最後、やっぱり体当たりしてしまいそうな直子の
「どうか、と祈りながら。」という言葉で締め括られている。どうか、あなた私をよけてください。と祈る気持ちのような気もするし、どうか、私の正義が通りますように、、と願う気持ちのようにも思う。。