フォロー・ミー/キャロル・リード 監督/1972/アメリカ
「東京公園」という映画を観ました。主演の三浦春馬も監督の青山真治も鬼籍に入られています。青山真治監督の映画は、「ユリイカ」は見ていないので何とも言えませんが、「共食い」「空に住む」など、私自身は、ちょっと登場人物の感情に共感しにくく、全体的に第三者目線で「ふーん」といった感想を持つ感じです。
で、「東京公園」を観て「フォローミー」という映画を思い出しました。東京公園は、原作があるようなのですが、作者は「フォローミー」をオマージュしたのだろう、と想像します。
以下ネタばれありです。
エリート会計士とヒッピーあがりのミア・ファロー演じる娘が 運命的な出会いをして結婚するのですが、 上流階級のしきたりと不在がちな夫との生活に 嫌気がさしたミア・ファローは、毎日憂さ晴らしをするかのように朝から晩まで出かけるようになります。ロンドンの街を歩き回って、公園に行って白鳥に餌をやったり 映画を観たりしていたのです。
そんな妻の様子を見た夫は、妻が浮気しているのではないかと 探偵をやとって、素行調査を行うのですが、 この探偵が、ちょっと頼りない、でも人のよい人物で、 ミア・ファローの後を、一定の距離をあけて尾行するうちに 二人はいつしか心を通わせるようになります。。。そして、探偵は夫に
「奥さんは浮気してないかもしれないけれど、ハンサムな恋人 がいる」と 嘘をつくのです。夫は、雇ったはずの探偵が妻の恋人と勘違いし、怒鳴りこむの ですが、ミア・ファローは、夫と探偵に騙された、と姿を消してしまい ます。 やっとのことで、ミア・ファローを探しだした探偵は、彼女がまだ夫を愛していることを知って一考を案じます。 それは、夫に今日から10日間、一定の距離をあけて 彼女の後をついていき、彼女が観るもの聞くものを共有す る・・という事でした。映画のラスト、一定の距離を保ちながら 楽しそうにほほ笑むひと組の夫婦の姿が映しだされて ハッピーエンド。
何といっても、ミア・ファローと探偵が ロンドンの街を歩き回って、面白い道の名前を見つけたり 美味しそうなパフェを食べたり・・・と ロンドンガイドブックのような中盤が楽しいです。 ミア・ファローのファッションも素敵。 生まれ変わるなら、彼女のようになりたいものです。
二人は決して会話しません。
脚本は会話がないから、
「・・・・」
「・・・・」
が並んでいることと思います。 なのに、映像によって二人が徐々に心通わせる様子が描かれて いて 本当に楽しい気分にさせてくれます。 その時に流れる、哀愁漂うのにどこかコミカルなジョン・バリーの曲も印象的です。
大事件が起こるわけでもないのですが、 人と人との繋がり、夫婦関係について 上手に描かれていると思います。
監督は「第三の男」を演出した巨匠で、「フォロー・ミー」(原作、「パブリック·アイ」邦訳素晴らしい!)は、彼の遺作のようです。
「第三の男」も大好きです。 特に最後のシーン。 女を忘れられない男が、女を待ち伏せするのですが、 決して声はかけません。 女は男の気持ちを知っているのですが、 自分の恋人を死に追いやった男を許せなくて あえて無視して通り過ぎるのです。 有名なチターの曲が流れて 何度見ても、切なくなるシーンです。
探偵は、ちょっとミア・ファローに恋していたかもしれません。でも、楽しそうな一組の夫婦を見て嬉しそうです。その様子を画面越しに観る私は、ほんの少し切なくなり、この作品を忘れられなくなります。。