Official髭男dismが奏でる、「音楽やってて良かった」という綺麗事
私がさとっちゃんをステージの上で最後に見たのは、2022年武道館、ショッキングナッツツアーだったと記憶している。
その日は余り調子が良くなさそうな歌声で、珍しいなと思っていた。subtitleからは声が出ずに苦しげに、一曲終わると「調整してくるね」的な言葉と共に舞台裏にはけてしまった。その間を他のメンバーが繋ぐ。帰って来てピアノのイントロと共に歌い始められたミックスナッツ。歌声は続く事なく、続いたのは「悔しいなあ」の涙声。悔しい、申し訳ない、と何度も呟いてピアノに突っ伏してしまった背中。私の記憶は、ここで止まってしまっていた。
今日、心から歌えて嬉しいと言わんばかりの伸びやかな声が会場に響き渡るミックスナッツがあった。subtitleを聴けた。これでもかってくらい震えるビブラートに、肺活量ギネス取れるくない?と言いたくなるくらいの途切れないハイトーン。考え抜かれたコールアンドレスポンス、2時間半に渡る公演時間、その全てからOfficial髭男dismのサービス精神というか、「心から音楽を楽しんでほしい」という気持ちが伝わってくるみたいだった。きっと、2年前だってそうだった。
今日、曲の合間にさとっちゃんが「みんなと歌えるかなって思って書いた曲、みんなが歌ってくれた!音楽やってて良かったって綺麗事が、内臓の底から湧き上がってくるよ」と言った。
2年前に東京のステージの上で泣いた背中は、はればれと伸びていた。私も、またヒゲダンの演奏聴けて良かった、元気でいてくれてよかった、音楽って本当に楽しい、と言う綺麗事が、内臓の底から湧き上がってくるようだった。