本能たる衝動
エンジ色の、ところどころに四角い模様が入っている椅子に座る。窓の向こうを時々白い電灯が過ぎ去っていく。車内には数分おきに、次の停車駅を知らせるアナウンスがかかる。
バイトを終えて帰路につく。
今日で期末テストとレポートが全て終わった。明日から春休みが始まる。大学2年生最後の夜だ。
1年前の、1年生が終わった時、時の流れの早さに驚いた。もう大学生活の4分の1が終わってしまったのかと感じた衝撃と焦りは、今でも覚えている。
2年生もどうせ早いんだろうと思っていた。サークルの先輩にも「学年を追うごとにどんどん体感が短くなる」と聞いていたし、今年から始めたことも色々あったから、だったら最初から腹を括って、やりたいこと全てできるようにしようと思って行動していた。
髪も染めたしやりたかったバイトも始めた。
彼氏もできたし納得できる曲も作った。
ほかにも、新しいことが色々とできた1年になったと思っている。
しかし、なぜだろう。
雑誌の編プロのバイトを終え、電車に乗っている今、無性に涙腺が緩んで堪らない。如何ともし難い空虚な感情にも襲われている。
私は、現状に満足していないのだろうか。
1年を全力で駆け抜けてきたつもりでいたが、心のどこかにまだ後悔や不完全燃焼の何かが残っているのか。
確かに、やりたいことを全てやり切れたのかと問われれば、答えはNOだ。
もっと曲を作りたかったしもっとお金を貯めたかった。
資格も取りたかったし欲をいえばフル単だってしたかった。
学生生活の半分が終わってしまったのに、まだまだやりたいことが残っている現状に、焦りを感じていないといえば、嘘になる。
でも、今ある欲望を全て消化しても、どうせ欲はまた際限なく産まれてくるのだろうし、それならいいかと考えてしまう、そういう詰めの甘さも自分だと、良い意味で認識できた1年だったと思っている。
ならば、この目の潤みは一体なんだろう。
この虚無感は、一体なんなのだろう。
私は、考えた。
そうして、乗り換えを終えた電車に揺られながら、1つの答えに辿り着いた。
そういえば、今日は昼過ぎにカップ麺を食べたきり、何も口にしていなかった。
そしてテストを終え、そのまま向かったバイトでは、4時間ぶっ続けでパソコンを見続けていた。
眼球が目薬を、そして胃が食料を欲していた。