第2回 「ものが流れていく作業」から「生み出す仕事」へ|就労継続支援B型事業所ぽんぽん所長 鰐川華衣さんインタビュー
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ひまわりから運営を引き継いだ当初は、どういう仕事をしていたんですか?
鰐川
当時は、今よりもリサイクルが収入になる時代でした。自分たちでアルミ缶を回収しに行ったり、地域の人が集めて下さったアルミ缶をもらいに行ったり。そうして集めたアルミ缶をプレスして、買い取ってもらえるところに持って行きました。
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へぇ~!
鰐川
他にも、建築資材の部品を組み立てる内職もありましたね。たくさんたくさん、こなして。重たい段ボールを何十個持って行って何千円っていうのを毎週。納期に間に合わせるために「ほら頑張れ、やれ頑張れ」ってやらせるしかない感じで、それはちょっともうしんどいねって。作業だけやっているから、誰とも会話をしないし、休憩時間もそれぞれ休憩してって感じでした。
他には、遊休品のバザーかな。近くの小学校や公園でイベントがある時に福祉枠で参加させてもらって、収益を上げていました。
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リサイクルと、内職と、バザーが当時の仕事だったんですね。
鰐川
自分たちで何か生み出す仕事っていうのは、ほぼなかった時代。横から横に物が流れていくだけの作業なので、みんなも、やっとることに自信や誇りも持てないし。給料もらって嬉しい人は、お金が喜びに繋がるけど、そうじゃない人は給料袋持って帰るだけなので、生み出す仕事をしたいなっていうのはありましたね。
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お金が喜びに結び付かない人にも、仕事の喜びを感じて欲しいですよね。
鰐川
アートを仕事にするってことは、最初はね、できてなかったんだけど、みんなと楽しんでやっていることが少しでも社会に出いくきっかけになったらいいなっていう思いはありました。PTAのイベントで物を売りに行ったりする時も、ちょっと絵を飾らせてもらったりとか。遊休品も売るけど、みんなの絵をプリントしたポストカードを売ってみたりとか、少しずつやっていました。
「障害のある人=手伝ってあげなくちゃいけない人」みたいなイメージがあるけど、これだけ生み出すことができる人たちなんだっていう、見方を変えればそういう力もあるんだということを知ってもらえたらいいなという思いもあって、作品を見てもらう場を作っていましたね。そうしたら、これも製品になったらいいね、と欲が出てきて。(笑)ちょこちょこ色んなことをやって。やっては失敗し、やっては失敗し。色々やりました。あはは。
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うふふ。(笑)チャレンジも失敗もたくさんあった上で、今があるんですね。
鰐川
試行錯誤していた頃、初めて絵が売れたことは忘れもしません。当時、ぽんぽんに取材に来た記者さんが「これはいいわって」言って山内くんの絵を買って下さったんです。確か3000円だったかな?ちっちゃい絵を3枚ぐらい買って下さって。あれはすごく励みになったというか…お金を出して彼らの絵を買ってくれる人がいるんだ!と。彼らの作品が「買ってもらえる作品」として見てもらえた嬉しさは、今でも忘れられないなあ。
山内紀彦さん初期作品
「ゾウさん」(2011年)山内紀彦
ちょうど同じ時期にアート・ルネッサンスも始まりました。最初の年は、応募はしたけど入選しなくて、2年目ぐらいから入選しだしたのかな?ちょこちょこ入選するようになってくると、最初は「何やっとん」みたいに見ていた家族の人も、だんだん反応が変わってきて。
*アート・ルネッサンス…ひゅーるぽんが立ち上げた障害のある人の公募作品展。2022年で21回目を迎える。
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へぇー!入選するって家族にとっては…
鰐川
アートに興味がある人が見ればね、すごいな、面白いなって思っただろうけど、本人たちがずーっとルーティーンのようにやっている、本当にその人の生活の一部になっていることを、作品として見られるかって言われたら…家族の人は見られなくて当たり前だと思います。
作品展で入選したり、審査員や専門家の人が「ここが良いよ」って言って下さったりすると、見てわからなくても「あ、そうなんだ。良いものなんだ。」と思えるところがきっとあるんだと思います。
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そうか、そうですよね。
鰐川
入選したら、本人はどうでもよかったりするんだけど(笑)家族や親戚みんなですごく喜んでくれて。アート・ルネッサンス会場におばちゃんが来た、次の日はお兄ちゃんと弟が来た、そのまた次の日は違うおばちゃんが来たって感じで、毎日家族や親戚の誰かが来てくれました。
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それは支援者としてとても嬉しいですね。
鰐川
そうそう、本当にね。そうやって周りが変わっていったかな。
konkon
障害のある"人の魅力"を伝えるために①障害福祉サービスの商品販売、②作品展企画、③常富芳香さんマネジメント等広島を拠点に行っています。
ひとりでも多くの方に「こんこん」と気軽にノックしてもらえますように。
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