
建築の愛着について
note初投稿です。なかなか自分が建築に関して(それ以外でも)考えたことを発信する機会がなくてもやもやしてたので少し落ち着いた今、投稿してみました。
もしこれを読んで意見とかコメントある人がいたらくれたら嬉しいです。
最近、建築の愛着について考えています。
もともと卒業設計で広島の基町アパートを扱って、メタボリズムの遺産とその未来みたいなものを考えました。
卒業設計について
ざっくり説明すると、
広島基町アパートとは1945年の8月6日に落とされた原爆によって広島市中心部には巨大な「原爆スラム」が形成され、そのスラムクリアランスとして建築家大高正人によって建設されたアパートです。
細かいことは割愛しますが、このアパートの構成がめちゃくちゃ面白くて、考えられてくの字配置になっていたり、取替え可能な二層ユニット(いかにもメタボリズム)になっていたりと将来のニーズに沿った建築なのです。また都市計画的にも丹下健三の軸線上に配置されてるという、もう建築学んでいる者からすると非常に魅力的なアパートなんです。(上の写真見てもらえるとわかるように強烈な軸が存在します。この延長線上に基町アパートがあるってもう興奮しませんか)
じゃあ、今、大高の意思を継いでそんな使われ方をしているのか?
広島県民はあのアパートをどこまで知っているのか?
こんなにもすごいアパートがあるんだから現在の人々にも使われるようにコンバージョンしよう!というのが卒業設計の概要です。ざっくり言うと。
(ちなみにこの前高校の友達と飲む機会があって少し基町アパートのことを話しましたが、やはり基町アパートのことは全然知らないと言ってました。(真剣にきいてくれてありがとう))
コンテクストを読むと言うこと
でも卒業設計から何ヶ月か経って、改めて考えてみると表現のアウトプットの稚拙さはともかく、根本的な問題として建築にとって「作り変える」「壊す」ってどうなんだろうと考え始めました。またその際その土地のローカルな文化(卒業設計の場合、歴史性と構造をコンテクストとして設計の軸にしました)を生かす意味ってなんなのだろうと。
授業でチュミの『建築と断絶』を読んだんですが、チュミはラ・ヴィレット公園のコンペの際、一切のコンテクストを排除してグリッドプランに自由性を獲得していて個人的には衝撃でした。対して日本(芸工は特に?)はコンテクストを読んで、それを読み換えて設計することが多い。もちろんそのような設計手法は私もしてきたし、そういった建築を魅力的だと感じるシーンは多いです。
でもコンテクストを読むって暴力的な一面もあって慎重にしないと愛着とかその場所独自の使われ方を一切放棄してしまうことにもなりかねないのではないかなあと思い始めました。安易にコンテクストととか言ってはいけないと。表層的なコンテクストほど怖いものはないのでは?
安田の校舎建て替えについて思うこと
こんなことを考えるきっかけになったのは母校である広島県の安田女子高校の建て替えです。正直、完成パースを見て衝撃を受けました。まじでお嬢様学校ぽくなってるやん!!The 私立!!あの古い校舎は跡形もない!!
もうガンガン工事は進んででグラウンドは完成しています。
建て替えに関しては古い学校なので耐震的にも問題があるんだろうし他にも様々な問題があるんだと思う。
でも、通ってた人にとってはそんな校舎の古さ・不便さやめんどくささは思い出に変わるんじゃないかなと。
中学校校舎から遠い売店までみんなチャイムがなった瞬間ダッシュしていたし、みかんの皮投げてヒビの入ったガラスも校長先生の顔切り抜いて黒板の下に貼ったことも(時効ですよね)寒い中整列してた筋トレルームもめちゃくちゃ狭い部室の廊下も全部思い出に変わる。そこには面倒だったり狭かったり不便だったり、ちょっと汚いからこその「愛着」があるのかなあと。安田生ならではの建築の使われ方。
ここで建て替えの賛否を唱えるということよりも、(例え否定的でも、もう工事は進んじゃってるのでどうもできないけど)、新しい校舎ができたら、未来の安田生には校舎を使い倒して、校舎に「愛着」を持って欲しいなと思います。
これからのビジョン
卒業設計の話に戻りますがこの夏にでも基町アパートにまた訪れて具体的にどの部分に住民が愛着を持っているのかをヒヤリングできればいいなと思っています。あまりにも暴力的に物事を捉えすぎていたのできめ細かいコンテクストを拾い上げていきたいと思います。概念・構造・歴史上のコンテクストではなく実際の住民の住まい方を掴みたいなあと。
実際にプロジェクトを進めている人もいるので話を聞いて混ぜてもらいながら、これから長い時間をかけて卒業設計を完成させたいですね。
あと安田に関してはできれば古い校舎があるうちに写真とか取りにいきたいし、写真集とか作りたいなあ。大仰なものじゃなく本当に日常生活を切り取ったようなもの。カメラ好きな安田生、行きませんか。カメラの技量じゃなく安田生だから切り取れる写真があると思います。