見出し画像

航空機事故から学ぶ:どうにもシップが止まらない4️⃣

カーッとなって乱暴に着陸したガルーダ・インドネシア航空200便オーバーラン事故:2007年3月7日、乗員7名と乗客133名を乗せたGarda Indonesia航空200便(B737型機)は、インドネシアのJakarta空港からAdisucipto空港へ順調に飛行していた。午前7時前、到着空港の天候は微風、視程8kmと安定しており、機長は副操縦士に対してRwy 09へ進入すると告げた。フライトの途中でコックピット内では口論があり、機長は急速に高度を下げながらアプローチしていった。途中機長は口数少なくFlap 15°副操縦士へ指示したが、アプローチ速度が過大であり、副操縦士は何も言わずにFlap 5°だけ展開した。副操縦士や管制塔からは進入が不安定であることを度々指摘されたが、機長は黙ってそのまま進入継続した。遂には機体の姿勢が激しく揺れながら、通常の着陸速度134kt(248km/h)よりも87kt(161km/h)も速い221kt (409km/h)でRwy 09の手前860mの草地へ接地した。同便はハードランディングでバウンドし、フルブレーキをかけたがポーポイズ運動しながら3回跳ね、前輪が出火して脱落した。機体は機首を滑走路に押し付けた形で滑走するも、速度超過で滑走路端で停止できず、過走帯を逸脱して水田に突っ込んで止まった。機体が割れ、右翼が破断し、火災が発生したため、乗客は乗務員の誘導を受ける間もなく、一目散に機外へ逃げ出した。機体前方のドアは開放できず、このセクションにいた乗客らは逃げ遅れた。この事故で乗員乗客140名のうち乗客20名と客室乗務員1名が死亡し、110名が負傷した。

1つのことに固執して全体が見えなくなるfixation(固着)と呼ばれる異常な心理状態は、誰もが日常で経験することです。しかしPFがこれに陥ると大事故につながることは度々あり、特に口論してカーッとなった機長が操縦している時には、よほどCRMが確立されていないと副操縦士が機長の誤りを補正できず、そのまま事故に直結しまうのです。
事故機の乗客にはオーストラリア外相のインドネシア訪問の下準備で同地へ入る豪州政府関係者と報道陣が搭乗していて、そのうちの一人は降下速度が異常に大きく、かつアプローチ速度が速いことを心配し「自らbrace positionを取っていた」と、ナショジオのドキュメンタリー番組「Mayday!」で証言しています。
航空身体検査の医学的な進歩によって、高齢機長の身体的な不調はある程度予知出来るようになりましたが、パーソナリティー検査による精神状態や認知能力の一過的または潜在的な障害は、年齢に関わらずまだまだ予見できない分野なのです。

いいなと思ったら応援しよう!