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【BMSG】バイブスを乗せて世界に漕ぎ出す

"Be MySelf Group"の頭文字を掲げたこの会社は、2020年9月18日に男女混合ユニットAAAのメンバーSKY-HIによって立ち上げられた音楽プロダクションである。今や23人のアーティストと13人のトレーニー、そして約80人の社員を抱える企業に成長し、2024年10月での第4期決算では純利益約20億円を達成したと発表した。

アーティストと楽曲はもちろん、会社のビジョンごと推している筆者個人の想いも含め、BMSGの数ある魅力のうちの2つに絞って紹介していこうと思う。


「才能を殺さないために。」


これはBMSGが設立当時から掲げている基本理念である。

メジャーのアイドルとアンダーグラウンドのラッパーの顔を持ち、14歳からキャリアを開始したSKY-HIは、才能があってもクローズドな芸能のルールにハマることができず活躍する場を得られなかったり、心身をすり減らして半ば搾取されていたりするようなアーティストを数多く見てきたという。時に音楽自体のクリエイティビティやクオリティよりも愛嬌や親しみやすさが重視され、「接客サービス業」をせざるを得なくなってしまったアーティストが存在することも、筆者のような一視聴者でも容易に想像できる。

それにフィットできなければ、日の目を見る機会が少ないというのが日本の音楽業界の現状だ。

素晴らしい才能があっても、芸能の特殊なルールや空気に埋もれてしまってはもったいない。それをすくい上げて「ありのままの自分」でいられる居場所となるのがまさにBMSG: Be MySelf Groupなのである。

BMSGでは、アーティストのマネジメントや音楽制作だけでなくデビュー後のメンタル面のケアや事務所とアーティスト間の対等な契約、ファンとの信頼関係の構築にも注力している。また、義務教育を受けているアーティストには学習面でのサポート、そのほか英語のレッスンや金融リテラシーや薬物乱用防止のためのセミナーなども実施しており、「芸能のルールよりも社会の常識」を徹底している。

これにより、BMSG所属アーティストは人間的に成長でき、彼らの音楽は、言葉は、アティチュードは、観客の心を動かし、アーティストとファンとの絆はより深まるのだ。

こちらの動画は2024年9月に開催されたBMSG FES’24での総勢23名のブリンブリンなアーティストによるライブ歌唱の様子である。

これを見れば、どのアーティストものびのびと音楽を楽しみ、ファンへの愛と感謝とリスペクトがパフォーマンスに込められているのがわかるだろう。なお、筆者は現地にて大号泣した。

日本から世界へ -業界の問題をBMSGなら解決できる理由とは-

BMSGは、初期から海外でのな活動を見据えていた。特にBE:FIRSTは2024年7月に韓国のボーイズグループATEEZのLA公演にてオープニングアクトを務め、2025年春からワールドツアーの実施も発表されている。

まるで順風満帆そのもののように感じられる彼らの歩みだが、SKY-HIは決してすべてが最初からうまくいったわけではなく、幾度ものトライがあったと語る。

こちらの動画で、これまでのBMSGの成長や今後の展望について、SKY-HI本人が詳しく話している。非常にアツい。

SKY-HIは、日本音楽業界に対して、海外でも十分活躍できる素質を備える日本のアーティストがなかなか海外へ進出できない理由として、下記の2つの問題について警鐘を鳴らす。

  1. 日本の音楽ビジネスがCD販売に依存していること

  2. 海外での活動のためのコストをかけるというリスクを選択できる勇気ある会社が日本に存在しなかったこと

順を追って説明しよう。

CD販売ビジネスへの依存

日本の音楽業界は、CD主体であった視聴スタイルがストリーミングサービスに切り替わった際に、完全に後れを取ってしまった。

そのため、ストリーミングサービスで気軽に楽曲を入手でき、YouTubeで多くのMVやライブ映像などのコンテンツを無料で視聴できる海外のアーティストに対し、かなりドメスティックでCD購入をしないとフルMVを観ることができないようなクローズドな展開を続けていた。結果、他国のアーティストに比べて、海外リスナーを獲得できなかった。

2020年代では、日本でもメジャーアーティストの大半がサブスクリプションサービスを解禁し、YouTubeでのMVやライブ映像の配信が当たり前になりつつあるが、この後れはK-POPとJ-POPの世界におけるプレゼンスの差を決定的なものにしてしまった。

また、世界進出以外の観点からも、SKY-HIは推しのアーティストのCDを「積む」行為をヘルシーな状態ではないと指摘する。

握手会参加などの特典を付けたり、ファンが何十枚何百枚と同じCDを買う、いわゆるチャートハックによりアーティストをヒットチャート上位に押し上げたりすることは、ファンの購買を半ば煽るような戦略である。しかし、その利益はファンが望む形でアーティスト本人に還元されてはいない。これは、CD販売にはアーティストと購入者の間に複数の中間業者を挟むためである。

この長らく続いた音楽業界の収益化システムをSKY-HIは「ファンを騙す行為に近い」と痛烈に批判し、CD依存からの脱却は持続可能な音楽ビジネスのためにも必要だと提言している。(もちろん、BMSGは手元に残すという意味でCDを制作すること・ファンに買ってもらうことには賛成しており、より良いプロダクトを生み出すというアティチュードは健在だ。)

世界進出のためにリスクを選択できるか

当然、海外で公演を行うことは国内公演よりもはるかにお金も時間もかかる。SKY-HI曰く、クオリティの担保された素晴らしいアーティストなら、この初期投資は数年でペイできるとのことだが、この直近の支出を日本の音楽事務所は耐えることができなかった。

海外へのアプローチには、国内で一番ホットな時期にホームを留守にする勇気、直近の利益を捨ててでもチャレンジする覚悟が必要となる。(そういえば、人気絶頂期にメンバー脱退が発表されたグループがあったっけなと筆者は思う。)

その点、BMSGはまだ若く小回りの利く企業でありながら、利益の20億円の3分の1を海外進出に向けた投資に回しているという。すでに発表されているものでは、BE:FIRSTのワールドツアーがあるが、BMSGはすでに彼らの留守を埋める素晴らしいアーティストを多数抱えている。

さらに、2025年1月にはBMSG初となるガールズグループのオーディション"No No Girls"から"HANA"という、つよつよなグループが爆誕した。筆者は、最終審査の配信にて、またも大号泣した。

そう、BMSGのこの4年半の軌跡は行き当たりばったりではなく、まるで始めから決めらていたような"Masterplan"に則っていたのだ。

おわりに

本記事では、「人」としての成長を促し、世界への挑戦を掲げるBMSGについて、ほんの一部ではあるが推しポイントを紹介した。
筆者個人として、BMSGは個々のアーティストや楽曲のみならず、企業理念ごと推している会社なのだ。

最後に、社長であるSKY-HIがライブの最後に客席に向ける言葉で締めくくりたいと思う。

「一緒に幸せになろう。」

引き上げるでも、背中を押すでもなく、隣に寄り添い、心に響く音楽を届けてくれる。それがBMSGである。こんな素晴らしい会社は、後にも先にもないだろうと筆者は確信し、次の現場を心待ちにしている。


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