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人類に想いをはせる足の裏

私は扁平足である。
足裏に土踏まずはまだない。多分これからもない。

これには度々悩まされている。
高校時代の部活ではこれが原因で脛を疲労骨折した。一部の人はわかるかもしれないが、シンスプリントから疲労骨折になるあれである。
これをきっかけにインソール(保険適用)をつけている。靴を買う基準は見た目、その次にインソールである。悲しい。

あと扁平足は散歩との相性が悪い。

小学校で全員購入させられた彫刻刀を久々に引っ張り出して円空の如き手捌きで巧みに足の裏を削り、アーチを作ろうかとも思ったことが何度もあるしそういう手術も実際にあるらしいが、術後に長期間散歩できなくなると考えると躊躇われる。

話は変わるが、学芸員課程の講義をとっていた。
学芸員になりたかったのと博物館をより楽しむためである。
正直、学部時代に楽しかった講義TOP3はこの課程の科目で埋まってしまう。それくらい面白かった。
だが履修期間に留学してしまったためいくつかの科目を履修できなかった。
そのため学部卒業では資格は取れない。
院でも取れることを祈っている。だってこれ以外特に欲しい資格なんてないんだもん。
そこそこ高めのTOEICかTOEFLの点数と引き換えにして欲しいまである。

閑話休題

学芸員課程のある講義で、東大の博物館を見学した。
するとそこに展示してあったのは私の足形だった。
インソールを作る時くらいしか足形を取られてないのだが、いつのまにかこんなところに来てたとは。
驚いた。展示するならせめて一言声をかけて欲しかった。
我が一族の誉となれたであろう。

しかしよく見るとその足形は私のものではなくアウストラロピテクスの足形だった。
念のため説明しておくと、アウストラロピテクスは地球で最初に登場したとされる人類「猿人」の一種である。400〜200万年前にいたそう。
私の足は最初の人類から進化してないということがわかった。もしかすると足だけじゃなくて脳も同様な可能性もあるが、ここで自信をなくしても嫌なので深入りしない。

https://www.um.u-tokyo.ac.jp/UMUTopenlab/library/b_49.html

ともかくかなり驚き凹み(おどろきべこみ)したので、消化すべく講義の中でその話を発表した。
悲しかったことは積極的に人に話しておもしろに昇華する。人生の鉄則である。
すると先生は、仏像の足裏の話をしてくださった。

釈迦の32個の外見的特徴を表したものを三十二相といい、仏像や仏画はこれを元に作られたり描かれたりする。
その中に「足下安平立相」というものがあり、これは足の裏が平らで全て地面についている、すなわち扁平足であることを意味している。
とのこと。

ついでに漫画「宝石の国」をもっと楽しむために買った「仏像図解新書」に書いてあった内容は以下の通り。

「悟りを得て仏陀となった釈迦には、人間を超えた特性や美しさなど、優れた身体的特徴が備わっていると考えられた。それが、仏の三十二相である。
(中略)
①足下安平立相=扁平足で大地に密着し安定している。」

仏像図解新書(2010年小学館新書):石井亜矢子/画:岩﨑隼


さて、私の足の裏はアウストラロピテクスであり釈迦であることが判明した。
われらの始祖たる猿人であり、かたや人間を超えた悟りの境地、私の足の裏には二つの世界があるということだ。
大陸を跨ぐセシルローズの絵を思い出さずにはいられない。

私がセシルローズだとこんな感じ。セシルローズ、理系の私にとっては世界史以来で懐かしいですね。

それはともかくとして、扁平足は人間を超えた特性や美しさなどの優れた身体的特徴の一つであるらしい。
今まで不便でしかなかったこの足にも、少し愛着が湧いた。

…んなわけもなく、今日もしくしくと痛む足の裏でアスファルトの地面をもりもり踏みつけて生きていく。
400~200万年前の初期人類の足で、そして人間を超越した足で。


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