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「すいません、好きなんで。」
全く羨ましさのカケラも無い恋愛映画を観ました。
それがこちら『友だちのパパが好き』(R15)。
タイトルの通りの内容なので映画を観なくても大まかなストーリーは分かります。
友だちのパパを好きになってしまった女の子と、友だちにパパを好きになられてしまった女の子の話。
「え、ええっ? 何それ、マジで言ってんの?」
「だってホントだから」
「やめてよ」
もし、自分の仲の良い友人が自分の父親のことを「○○さん」と名前で呼んでいたら。
「〇〇さんって格好良いですよね」ってにこにこしながらそれを自分の母に世間話のトーンで話していたら。
いつの間にか2ショット写真を撮り、連絡先を交換していたら。
…ぞっとした。
恋愛映画?いいや、この映画はもはやホラーだ。
それでもこうしていま、noteに書いている。
それだけわたしの心に残る映画になってしまった。
純愛は、ヘンタイだ。
コピーにも使用されているけれど、この映画は友だちの父親を好きになったことについてあくまでも「純愛」として描かれている。
『友だちのパパが好き』
このタイトルから友だちのパパを好きになる女の子のキャラクターをどう想像するだろう。好きになっちゃいけない相手に恋をしてしまった、どうしよう…なんて、そんな女の子は登場しない。
妙子(岸井ゆきの)の友人であるマヤ(安藤輪子)は、妙子の父・恭介(吹越満)を好きになり、そして好きになったことを妙子に告げる。
純愛として描かれるポイントはここだ。
マヤにとっては、恭介に娘がいてその娘と自分が友達であることは、どうでも良い。ただ単に好きになった相手が恭介だった、それだけ。
一切、不倫という空気を持ち込まない。
「恭介さんが好き」という気持ちだけで物語は進んでいく。
妙子からしたら正気か?と思うのも当然だ。
なぜそれをわたしに言う?って思うはず。
「いつでもくれてやるよあんな親父」
「えっ?」
「えっ」
アホらしい、とでも思っていそうな妙子の発言にもマヤは本気で喜ぶ。頬を緩ませて、ルンルンなんて文字が見えてきそうなほどにやにやと微笑む。
長回しで撮られる会話のリアルさも良い。
手軽なキャッチボールのはずが、相手はしっかりグローブを構えてどっしり座って待ち構えている。かと思えば変化球が飛んできたり、しばらく返球が無かったりする。このテンポの違いがリアルな会話をもたらしている。
「気持ち悪い」の面白さ
気持ち悪いだとか胸糞悪いだとかそういうレビューを見た上で映画を観たくせに「うわあ、気持ち悪かった」と思う自分が滑稽だった。もはや、ちゃんと気持ち悪かったことに安堵している。安堵しつつも、想像よりずっと気持ち悪かった。気持ち悪いというか気味悪いに近いかもしれない。
それでも、最後まで飽きることは無かったし、つまらないと思う瞬間も無かった。それに気が付いたときに初めて良い映画だったんだなあと思えた。
わざわざそう考えないと面白さに気が付けないほどには、気持ちが悪い映画だったのだ。
いやぁ、すごい。マヤ、すごい。恭介、すごい。
妻がいながら、娘と同い年のマヤに好かれて、さらにずっと関係を続けている女性がいる恭介。
そんなどうしようもない恭介を演じているのが吹越満さんなんですが、キャスティングが上手すぎる。だって、観ていても恭介がモテるのは納得せざるを得ないんですよ。吹越さん、声が良い。
そうだ、誰も嫌いにはなれなかった。
最低だな、とか気持ち悪いな、とか思っていても嫌いになる登場人物がいなかった。だって、あまりにも自然だったから。
どこかチグハグだけど、みんなそこにいるんです。
映画の中で日常を生きているのが分かるから。
ときめくことも、憧れることも、羨ましさも、共感も、どれも感じることの無い恋愛映画って初めてで、まさに映画ならではの体験でした。
それでも、これはれっきとした恋愛映画だ。
映画のラストは、マヤの突き詰めた純愛の結果なんだ。
すごいものを観ちゃったなあ、と思うはず。
そして、気持ち悪いなあ、って。
同じく岸井ゆきのちゃんが出演している映画『愛がなんだ』も重めの純愛映画だと思うけれど、テルコには共感があったし、テルコと一緒に心が動いたんだよなあ。
そういう意味でもマヤはやっぱりすごかった。
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