明るい日陰に鳴るGUZMANIA
グズマニアはパイナップル科の花の名前。
南米の花らしい明るい色をしている花。
そんなグズマニアの花言葉は「いつまでも健康で幸せ」だ。
明るいイメージが盛り沢山のグズマニアは、そのイメージに似合わずサンサン照りの太陽の下ではなくて「明るい日陰」で管理するのだそう。
なるほど、SAKANAMONにぴったりかもしれない。
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大好きなバンドSAKANAMON(サカナモン)が通算5枚目となるミニアルバム『GUZMANIA』をリリースしました。わーい!
全6曲+ライブ音源4曲の計10曲で1800円。安い。
タワーレコード特典ではなんと同じ値段で4曲分のライブDVDまで付いてくるよ。お得!(DVDの選曲センス大拍手!)
「SAKANAMON?知ってるよ。ミュージックプランクトンとかマジックアワーのひとたちでしょ」っていうひとにこそ聴いてほしい!あの時のさかなもんからはまたグイグイ成長しているんだよ、って。
MCは変わらずふにゃふにゃだし、相も変わらずへろへろな大人たちだし、シュールな曲もいっぱい作るし、だけどそういう変わらない部分がさかなもんの愛すべきところだよね。
1、並行世界のすゝめ
アルバム1曲目の第一声を聴いて「あ、このアルバム好きだ」って思えた。何年経っても、こうして新鮮な「好き」を与えてくれる数少ないバンドです。やっぱり好き、もあるんだけどそれだけじゃなくて、今回のアルバム好き、って思えることが嬉しい。
サビのメロディーは結構さかなもんらしい感じがするんだけど、曲の始まり方は今までに無いタイプ。うわあ、これライブで聴いたら始まった瞬間ぶわあっと鳥肌立つんだろうなあ。元生さんのギターと歌で始まるんでしょう?そんなの最高じゃないか。
2回目の「嗚呼」の声、めちゃくちゃ好きです。
論争は中断し落ち着いた方向に進むんだ 従順に
でもそうもいかない
Aメロ終わり、「そうもいかない」から演奏が盛り上がってサビにいくのたまらない。1番のサビラストの歌詞もすごく好き。
出来合いの正論はいらない
爽やかなようでいてどこか捻くれたような歌詞。大衆受けはしないのかもしれないけれど、確実にさかなもんの音楽が必要なひとはいるんだよ。そういうひとたちにしっかり届いておくれ、と願うばかり。
いちばん好きなのはラストのサビの歌詞。
罰点が何度付けられたろう
でも違うと言う事は特別だろう
無くしたんだ色んな物
でも手元にほら 誰にも奪えない結晶
頑張れーって大きく旗を振っている訳じゃなくて「うーん、そっか。でもさ、そのままでいいんじゃないの」なんて川原で隣に座った友人が言っているような、さかなもんの歌の背中の押され方ってそんな感じ。
2、SECRET ROCK'N'ROLLER
前作のアルバム『・・・』収録の『反照』もそうだったんですけど、さかなもんの学生モチーフの曲、良いですよね。学生の頃のキラキラした青春を、完全に「憧れ」として観ていた側の歌だよなあ、とじわじわ伝わってくる感じが好きです。学生当時よりも社会人になってからの方が沁みる気がします。
自分の好きなマイナーなバンドのライブをひとりで観に行ったら、ライブハウスにまさか「同じクラスの女の子」が!…っていうこのシチュエーションときめくなあ。「気になる女の子」でも「好きな女の子」でも無くその場にいた「同じクラスの女の子」というフレーズ。好きな女の子、よりもむしろドキドキしちゃうのはなんでなんだろう。
サビで繰り返されるこのワード、良いなあ。
僕等シークレットロックンローラー
それこそわたしは学生時代からさかなもんを聴いていて、テレビに出るようなバンドでは無いし周りに他にさかなもんを知っているひとなんてほぼいなかったけれど、それでもわたしにとっては大好きなバンドだった。あの時のわたしにとってさかなもんは間違いなくわたしのシークレットロックンローラーだった。(さかなもんの3人にロックンローラーという言葉が似合わないことには目を瞑りましょうね。)
こんなにもときめくシチュエーションなのにラストは、
これからは一緒にライブに行こうよ
いや別に変な意味では無いから
皆には絶対内緒にしようよ
いや別にそんな関係じゃ無いけどさ
いまいちキマりきらないこの感じ。
そう、この感じがさかなもんなんですよね。
3、箱人間
わたしの思う名曲ってこれです。こういうのです。
さかなもんのバラード曲、前からすごく良かったんですけどここ最近の曲たちがズバ抜けて良い。「箱人間」「テヲフル」「アフターイメージ」どれもこれもすごくすごく良い。
曲の途中からだし、僅か1分なんだけど、とっても好き。
明日の朝も駄々を捏ねるよ
だけど何も投げ出さないよ
曲の終盤、テンポががらりと変わってこの歌詞に入る部分でいつだって鼻がツンとしちゃう。
「捨てられない」ってネガティブな言葉のように思えてしまうけれど、それが「投げ出さない」に繋がるのは、ひとによっては救いだと思います。ありがとうね、さかなもん。
4、YAMINABE
闇鍋って…闇鍋って…!
そしてこの曲でまさかの初ラップだなんて。
ベースが目立っていてやたら格好良いです。ベース音とラップってこんなにも格好良い組み合わせだったんですね。
ライブで元生さんがハンドマイクでYAMINABEを歌う姿が観たい!観たい!観たーいっ!
社会に対して上手く接していけないのがさかなもんらしさ、みたいな部分あると思うんですけど、そういう部分のワードと闇鍋ワードがうまく合わさっていて本当にこういうの上手いなあ、とうっとり。
灯消せ / 体に毒 / 食い違って
浮かばれない / 臭み無くなってふやけている
ぷかぷか / 灰汁を取れ
共に煮詰まってくれるのなら
うだうだ 召し上がれ 平らげて 蓋して
5、BAN BAN ALIEN
これぞ藤森元生ワールド全開の曲!ライブ映えしそうだなあと思います。盛り上がりそうですよね。言いたくなるもんね。
エンガチョしちゃえ
「エンガチョしちゃえ」というフレーズの軽快さとユニークさ、だけど意味的にはちょっと核心に迫るものがある。こういうの好きそうだよね、元生さん。
エンガチョしちゃえば良いと思うんだ、なんて歌われたらちょっとエンガチョしてみようかなって思えるかもしれないよね。
6、矢文
イケメンと可愛い女の子のラブコメを俯瞰で眺めている脇役にすらなれない男が主人公、の歌なんだそう。
「でも、そんな奴でさえキラキラしたヒロインのことを好きになってしまうものなんだよ」ということを伝えたかったんですよね。
ナタリーのインタビューで元生さんはそんなことを言っていたけれど、そういうシーンを汲んで歌にしてくれたんだなあと思うと愛おしくってたまらないです。手紙でも無く「矢文」っていうのも良いなあ。
自分でも「あり得ない」って思いながらも「どうしよう」と悩んでしまう見えない主人公に自分を重ねて応援したくなります。
「御用事何」という歌詞は童謡のやぎさんゆうびんから取っているのかなあ。きっとそうなんだろうなあ。そういう部分も好きだなあ。
ライブで聴いてもすっごく良かったです。
さかなもんの不器用バラード、推していきたい。
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明るい日陰で咲くグズマニア。
さかなもんの音楽は、社会の中で明るく見せていても心の中ではぐずぐずとしている、そんなわたしたちの生活を照らしてくれる。
いつまでもわたしたちの味方でいてね、さかなもん。