São Lourenço do Barrocal
リスボンから車で西に2時間ほど走った先にポルトガルの風土をまとった理想郷が存在する。都会のリスボンから離れ、葡萄農園のある田舎へと向かう。国土の狭いポルトガルはリスボンから2時間も走ればもうスペインの国境近くである。果てに理想郷があった。名前は sao rorent barrocal。バローカルと呼んでいるが果たして合っているのかどうかは分からないがひとまずそう呼ぼう。
ポルトガルは前情報として陰気な雰囲気が漂っていると聞いていたが、人も土地も建築物も暖かい雰囲気を醸し出している。温暖な気候も相まってとても心地よかった。
barrocalの入口には迷い込ませる。まるで千と千尋のトンネルのような、そう知らない世界へと導いてくれる導入がある。
barrocalは19世紀に建てられた「monte alentejano」と呼ばれるポルトガルの伝統的な農村をホテルとして復元した場所である。穀物、オリーブオイル、ワイン、牛などの食品や商品を独自に生産しており、今もたくさんの農家の方立ちが働く。建物は美しく、実る果実や、植物、生活する生き物たちにホテルとしての確かな生命力を感じる場所である。
到着したのは15時頃。もう少し早く来れば良かったと後から後悔した。ここには2000エーカーと広大な土地がある。とてつもない広さで、回り切るつもりも無いがそれでも限界迄この世界を見てみたいと思った。言葉では言い表せない豊かな場所なんだなと。なんとかしてでも持ち帰りたいと強く思った。
建築物の美しさに心を惹かれる。日本の昔ながらの古民家みたいなものなのだろうか。しかしそこには古い新しいの概念は無く、時代を超えて新しさと驚きを与えてくれる。僕はこの建物と放つ空気に感動を覚えた。
barrocalのスタッフは皆とても柔らかい。見せる笑顔に異国の地での緊張が和らぐ。育っているみかんを好きに食べて良いと良い、もぎ取って渡してくれた。
次の日は朝から建物の周りや農場等散策をした。この巨大な場所には野菜畑もぶどう畑があり、牛も馬もいる。広い土地に無邪気に元気に暮らしていた。牛たちの真横を自転車で横切った。びっくりするかもなので、小さな声で挨拶しておいた。モ〜って言ってた。
こもる五所川原は間違いなく「湯宿さか本」と「barrocal」から多大な影響を受けていると思う。まさか日本から遠く離れたポルトガルの地にこんなホテルがあるなんて知らなかった。barrocalの横にあるcorval(コルヴァル)という街は陶器で有名であり、かわいい器がたくさんあった。これは五所川原と津軽金山焼きの関係に似ている。勝手に親しい関係を築き、妙に納得した。
どちらも正反対の特徴を持つ宿だと思う。間を取ろうとは思わないが良いところをなんとかしてでも持ち帰ろうと、そしてこもる五所川原に反映しようと思うが、道のりは遠い。