日貫一日(ひぬいひとひ)
島根旅行2日目。隠岐諸島を後にし日貫へ向かった。山深くにあるこの場所には、所謂日本の原風景が残っている。関西で育ってもどこか懐かしい気持ちになったので、日本人は田舎の原風景を懐かしいと思うようになっているのだろうか。
日貫には夕方に到着した。見渡す限り、田んぼと畑と赤茶の瓦屋根(レンガのような色合い)の日本家屋しか無い。どの家も赤茶の瓦屋根を使っているのだが、釉薬の特徴なのだろうか。
…と思い、調べて見た所、石州瓦と言うらしい。緑豊かな風景に赤茶の瓦屋根が日貫の風景を形作っている。
そして、日貫という町は大変長閑で、澄んだ空気がたっぷりあった。思わずグッと息を吸い込んだが、めちゃくちゃ美味い。青森でも空気が美味い美味いと言っていたが、ここ日貫も美味い。
目的地である「日貫一日」は直ぐに見つけた。事前に見た大きなガラス窓がある建物である。….と思っていた。
ここは宿では無く「一揖(いちゆう)」と呼ばれ、チェックインや、翌日の朝食会場ともなったり、何かとスタート地点になる場所だった。元々は工場跡だったらしい。壁には当時の記録が残っていて、こうやってリノベしたのか〜と参考になる。全く、素晴らしいなあ。
優しいスタッフのお二人が出迎えてくれた。一棟貸しの宿はほんの少しだけ離れた場所にあるらしい。少し歩くの悪くない。車で移動したけど。
1000平米ほどありそうな敷地内にぽつんと安田邸が佇む。良い雰囲気だ。山間にある古民家を大胆にリノベした宿。こもるに通ずる所が多々ある。外には自然の音しか聞こえない、静かなで心地よい場所。
入る前から好きな雰囲気だった。町が持つ長閑な空気を受け、出迎えてくれるその佇まいは優しい。
キッチンの土間、三和土はこもるも同じスタイル。窓からの光が気持ち良い。個人的には家にこんなキッチン欲しいよ〜。
ヒノキ風呂は写真以上に大きく、天井が高いこともありもの凄く気持ちよかった。温泉じゃなくてもここまで気持ち良い風呂があるのかと感動したが、ヒノキの香りと湯船の大きさと天井の高さなのだろうか。
夜は自分たちでご飯をつくり、食べるスタイル。この日は石見ポークと野菜たちをBBQスタイルでガッツリと焼き、土鍋でご飯を炊いて食べた。肉への火加減が絶妙に難しく、何度も火にかけ、食べ、生焼けでもう一度火にかけというのを繰り返してしまった…..BBQ難しいよ…
そして、静かに夜が更けた。ぐっすり寝て癒やされた。
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ここは、アクセスの悪さで言えば、「さか本」と一緒かもしれない。他の宿と違うのは「日貫一日」は優しさがあった。ぴんと張り詰めた空気ではなく、日貫の町並みが持っている優しさ、スタッフの皆さんの優しさを一手に受けた見事の佇まいだった。野菜にも町に住むみなさんの優しさを感じた。そして、一棟貸しの宿に守られる安心感があった。日貫には初めて来たのに優しく受け入れてくれる、そんな気がする。
宿だけでなく町と触れ合うこと、そこに住む人を感じること、宿と町の関係を感じる新しいきっかけだったと思う。また日貫に来たいと思える宿だった。