クズで自信家でウィッティな師匠
私には人生の師匠がいる。
顔も名前も知らない人だが、確実に私の人生の指針となった人だ。
彼とは19歳の時にとあるアプリで知り合った。
そこは文章を綴って投稿するnoteみたいなアプリで、あたたかい場所だった。
当時、海外留学をしていた私は日々の暮らしを細々と書いていて、彼は日常からお仕事関連(諸事情により当時はお休み期間だったが、元はエリートビジネスマン。かなりやり手だと思う。)のお話などウィットに富んだ文章を綴っていた。
確か最初のコンタクトは私から彼をフォローしたことに始まったと記憶している。
その後、私の「知的好奇心」についての文章に彼がコメントをくれたことをきっかけに私のコメント欄でよく絡むようになった。
彼は巷では有名な方で、私が彼の文章にコメントをすることはあまりなかったが、私の文章は毎回読んでコメントをくれた。
彼は西島秀俊さんと同い年のはずで、私と24歳差。自分より年上の彼の考え方やクズ談義(女性関係がね、うん。)はとても面白く、読んでいて心が躍ったし、コメントひとつひとつが秀逸であった。
私は、彼の書く文章を読むのが日々の癒しで、彼からのコメントが欲しくて彼が好きそうなエピソードを綴るぐらいには沼っていた。
そんな彼が人生の師匠になったのは、私が19歳の夏、一時帰国中に日本で仲良くしていたグループの子達と一緒に旅行のエピソードを書いたときにもらった言葉だと記憶している。
私は、帰国子女で中高6年間私立に通い、大学は海外へ学部留学するという、まあまあなスペックの女子大生だった。
そんな私が日本での地域ボランティア活動で出会った友達(年齢が自分より8〜24歳年上の男女4人と同い年の女の子1人)と旅行中に、1人の女性から自分だけ何か違う人種のように扱われ、自分がどう振る舞えば波風立てずにいられるか考えて旅行していたら疲れたという愚痴の文章に対するコメントだったと思う。
当時の私の主張は、雲の上のような存在として扱われたことに対して納得がいかず、自分は自分の中で普通に生きてきているのに、何故そんなに特別扱いされなければならないのか。
何故自分だけ「普通ではない」「いつものメンバー」ではないと言われなければならないのか。
ただ私は「普通に」生きているだけなのに、何故ハブられて、相手の顔色を窺って行動しなければならないのかと憤慨していた。
そこへ彼がこんなコメントしてくれた。
これを読んで、私は胸がいっぱいになった。
なんてこの人は優しいんだろうと。
たかが、アプリで少し仲良くなった19歳の小娘に、心と時間を割いて、ぶつかってきてくれるのかと。
別に何もコメントしなくてもいい状況にあるのに、自分の想いをしっかりと伝えてきてくれる。
確かに慰めてほしいとか、自分の考えに共感してほしいと思っている人には、厳しい言葉だろう。
それに彼は、よくいろんな人から配慮が足りない発言が多いと言われたりしていたし、実際にそう感じる人が多かったと思う。
でも、私にとってこんなに優しい言葉はなかった。
耳障りのいい共感や慰めよりも、しっかりとここは違うと伝えてくれる彼の優しさに惚れた。
ただ単に共感をするだけではなく、しっかりと相手のことを考え、自分の意見を伝える。
もしかしたら相手に嫌われたり、キレられたりすることを考えてもなお、自分の意見を伝えられる強さ。
かっこいいと思った。
この人のようになろうと思った。
それ以降も、色々なことにコメントをもらったり、コメント欄でイチャイチャしたり笑、彼の考え方を吸収していったが、彼の結婚が決まったことで、彼はそのアプリを辞めてしまった。
そんな彼との出会い&別れから、10年が経とうとしている。
彼と関わりを持っていたのは1年ぐらいだと思う。
それでも、私は彼と出会ったことで確実に変わったと思う。
それまで、他人との関わる時は、いかに相手に不快を感じさせないように行動していた私が、自分の思ったことは伝えるという行動をとり、今では相手に伝えないとストレスを感じるまでになったのだから、すごい変化だと思う。
もちろん、なんでもかんでもドバーっと吐き出して相手を不快にさせているというわけではないが、自分の気持ちを偽って相手に合わせるわけではなく、自分の気持ちは自分の気持ちとして恐れずに伝えることができるようになった。
相手がどう思うかは相手の領分であり、自分は自分の気持ちを伝えることが誠意であると考えるまでになったのだから、師匠が与えた影響は大きい。
もちろん、今でもメンヘラるし怖いと思うことも多々あるが、自分が自分であるために戦ってきた日々があって、その自分に自信があるから、立ち向かえる。
「自分の可能性を信じて、それを裏切らないように行動する」
彼からもらったこの言葉は、今でも私の人生において原動力となる言葉であり、お守りであり盾であり剣だ。
クズで自信家な師匠に出会ったおかげで、今の自己肯定感とプライド増し増しの私がある。
10年間、本当に色々あったし、今でも色々あるし大変だけど、自分の人生が楽しいと思える。
去年の8月から今年の8月までは、過去を引きずって、とてつもなくウダウダしてたし、楽しくないとか面白くないと思っていた時期もあるけど、「今」を生きている今は多少大変なことがあっても楽しい。
そして、その楽しさの根幹となった師匠に伝えたいと思った。
こんなに大きくなったよと。
インターネットの海を漂って、いつか届くといいな。