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ボイスメッセージ

ボイスメッセージを残すのが苦手だ。録音ボタンを押していざ話そうとすると妙に構えてしまい、的確な言葉がなかなか出てこない。感じたことを瞬発的に言葉にするのが不得手だからだろう。たまに、話す相手が深く考えることなく、感じるままに感情や考えを口にするのを聞いて、感心したり、驚いたりすることがある。
 
書く方が気が楽だ。心の中にあるもやもやとした感情の渦が、文字にすることで少しずつ姿を現す。そこでようやく、自分が感じていた何かを認識する。認識するのに時間がかかるのだが、書くことで救われる。
 
ところで、ある人と交わしたメッセージを読み直すことがあった。事情があって長らく読めないでいた。その人はよくボイスメッセージをくれた。おそらく、書くよりボイスメッセージを残す方が容易だったのだろう。そのつど私は文字で返信していた。
 
ある日、久しぶりにその人がボイスメッセージをくれた。それは心の中をえぐるようなものだった。淡々とした口調だが絞り出すように語る。時折、こらえきれずに絶句し、無言の間ができる。その間が深く胸に刺さった。私は初めてボイスメッセージを返すことにした。心をこめて原稿を書き、推敲し、数回読み上げたのち録音し、送った。
 
その人からまたすぐにボイスメッセージが届いた。ところが愚かな私は、その人にボイスメッセージが得意でないと暗に伝えてしまった。遠慮したのか、それきり送ってこなくなった。ひどく後悔した。
 
改めて、その人の何げない日常のボイスメッセージを聞いてみる。もう二度と聞くことのできないその肉声に、言葉にならない思いがぐっとこみ上げてきた。もう同じ過ちを繰り返さないと肝に銘じた。

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