【うつ病日記 12】言葉を吐き出し、地図を描く
2022/7/5
車に乗るのが怖い。
というより、人を見たくないし人に見られたくない。
小さくなって、毛布を被って移動した。
そういえば、少し前からバラエティー番組など人が映っているテレビが見られなくなった。
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不安が心の中から溢れてくる。
熱くて激しい不安。
ぐちゃぐちゃの、激しい不安がどんどんぐるぐる大きくなってくる。
熱をもって、体の中から熱くなる。
冷や汗がでてきた。
手足がそわそわする。
歩かなきゃ。
とにかく動かないと。
あつすぎる。
ぐるぐる、ぐるぐる、部屋を歩き回った。ズボンの裾を握りしめて、ぐちゃぐちゃの不安を押し込めるように、何度も何度も。
お母さんがなにか声をかけているけど、あまり聞こえない。正確に言えば、聞こえてはいるけど、意味がわからない。
もういやだ。
あつい。
かゆい。
ふあんが大きすぎる。
あのくすり、クスリをのまないと。
くすりをのんだらふらふらするから、ベッドにいかないと。
ベッドに横たわる。
ようやく、私は動くのをやめた。
足はフラフラと空中で歩き続けている。
声を出して泣いた。
獣みたいな声だと自分でも思った。
抱きしめた枕に顔を押し付けて、何度も咆哮し、歯を食いしばって唸った。
ツライ。イタイ。コワイ。イヤダ。
これは、一年半のうつ病生活の中でも最も辛い時期だったと思います。
今でも、文章を読むと心がギュッと縮こまるような思いがします。
ただ興味深いのが、この日記は後日思い出しながら書いたものではないということです。上に書いたようなことを体験して、泣いた数秒後には、がむしゃらにパソコンにその様子を書いていました。
「言葉を紡ぐ」なんて言えばかっこいいのかもしれませんが、どちらかというと「吐き出す」感覚でした。
「言霊」
という言葉があります。
よく、ネガティブなことを言うとそれが現実になるからやめておけ、なんて言われますよね。
私の場合は、言葉にすることで形のない
「ツライ。イタイ。コワイ。イヤダ。」
が文字となり、輪郭をもち、居場所を獲得するような気持ちがしたんです。
それは、得体の知れない、底なしの真っ暗闇の中で、少しずつ地図を書いていくような感覚でした。
言葉は武器にもなるけれど、時に鎧ともなり、心強い地図ともなるのかもしれません。
写真は、インドネシアのプランバナン寺院にて