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Nikon F2を考える

 Nikonのフィルム時代の旗艦(フラッグシップ)、F2について今一度考えたいと思います。
 というのが、昨今のフィルム価格の高騰により中々気軽に使えずにいるのですが、つい昨日何の気なしにフィルムが入ってるから撮り切らないとと思い、外出時に持ち出して数枚切ったら、とても気持ちよかったのです。最近はミラーレス機を主軸として撮ってますので、特にかもしれませんが、シャッターを切ったという体験がすごく感じれるカメラだなと。その感覚がZ6iiをはじめD850よりも強く感じたのが印象的でしたので、以前にも以下の記事を投稿してますが、より深掘りしてみたいと思います。

 1971年年8月に報道発表され、翌9月に東京で発表会を開催し、当月に発売した言わずと知れた当時のニコンの旗艦モデルです。
 それまでのNikonの旗艦モデルNikon Fから、裏蓋が着脱式から蝶番式に変化したり、セルフタイマーも3〜10秒まで調節できてたものが、2〜10秒までと改善されていたり、シャッター周りも一眼レフとしての使いやすさを追求したものへと進化していきました。

 ファインダーについては昨今のデジタルカメラでは交換できないのが当たり前ですが、当時のF2の場合、高倍率ファインダー(DW-2)、ウェストレベルファインダー(DW-1)、アクションファインダー(DA-1)、アイレベルファインダー(DE-1)、フォトミックファインダー(DP-1)等多くの交換できるファインダーが用意されており、特にフォトミックファインダーはフォトミックA、フォトミックS、フォトミックAS、フォトミックSB等種類も豊富だったようです。
 また、ファインダースクリーンも18種類用意されていました。
 発売当時の価格は、F2フォトミックでシルバーが82,200円、ブラックが84,700円、アイレベルボディがシルバーで64,200円、ブラックが67,200円でした。
 総務省統計局「2020年基準消費者物価指数」によると現在の価格に換算する場合、3.25倍すれば現在の金額になるようです。とすれば、大体20万円〜25万円くらいの価値になると思います。
 今の旗艦モデルであるZ9が75万円程で新品が売られていることを考えれば、破格とも思えますが、デジタルカメラじゃないことや完全機械式のマニュアルカメラの旗艦モデルと考えたら妥当な気もしますし、いろんな見方ができると思います。
 レンズはAutoレンズやAiレンズ等マニュアルで絞りが可変できるFマウントレンズであれば使用できる懐の広さを持ち合わせています。

 Nikonの旗艦モデルとしては、Nikon FやF3も有名ですが、FはレンジファインダーカメラのS時代の軍幹部デザインが引き継がれていて一眼レフとして操作面で最適化されていなかったり、F3になると絞り優先が使えるようになったりしていますが基本的に電池ありきの操作に変わってしまい、新品を当時使っていたのならまだしも、発売から40年程経た現在となっては電子部分の劣化は交換できるパーツがなければ治らないリスクがあることを考えると、Nikon F2は末永くフィルムが存在する限り使うカメラとしてちょうどいい落とし所にあると思うのです。
 レンズも古いMFのFマウントレンズであれば数千円からありますし、前述のファインダー類もネットオークションを根気強く探せば程度の良いものが案外まだあったりします。
 メンテナンスにしても、有名なところであればキィートスさんや、常時ではありませんがたまにNikonでもメンテナンスしてくれる場合があります。

 私の使っているF2は祖父の時代から代々使っているものでシリアルナンバーから73年のものとわかります。
 また、季節としては夏〜秋(7月〜10月頃)のものと思われます。
 別に製造年や季節が分かったからといってそれが性能に関わるわけじゃないですが、50年も前の工業製品がいまだに現役で脈々と使われ続けているということにちょっとした感動を覚えるのです。ロマンの一種のようなものです。代々親から子へ受け継がれてきた機械式の腕時計のような感じにも似ていると思います。
 性能云々という話ではないですが、そのカメラに気持ちが入るというか、ただの工業製品に留まらない、そんな魅力があると思います。

 前述のとおり、Nikon F2に対してフィルムカメラとしての全幅の信頼を寄せているわけですが、最初からそうであったわけではありません。
 事実、Nikon FやF3の方が特徴的なデザインがされています。亀倉雄策やジウジアーロのデザインという訳ですから、デザインも当時として先鋭的だったと思いますが、平成に生まれた私にとってもカメラと言ったらこのデザインというイメージを持ったデザインでしたし、ストーリー性もある。
 何とも地味なカメラだなぁとF2を手にした時に感じました。それに加えて、ローライフレックスやハッセル、ライカとかの方が譲り受けるんだったら良かったなぁと思うこともありました。実際何度かライカは購入していますし、Nikon F2だって売りに出そうと思ったことも何度もあります。
 ですが結局のところ手元にあるフィルムカメラはこのF2だけですし、それ以外に使っているカメラもZ6ⅡとD850ということでNikon製品だけです。
 妻もNikonユーザーだったり、結果論としてそうなってしまってるというのもありますが、結局手元にNikonのフィルムカメラを残しているのは圧倒的に壊れないのと、使ってて気持ちがいいからだと思います。ライカのカメラは店舗ではなく、オークションで個人から買ったものもあるので一概に言えませんが、シャッターが途中で切れなくなって修理に出したり、レンズも結構な値段しますし、たま〜に偽物もあったりするし、とトラブルが何度か起きたことがあったり、新品でLeica MP 0.72 を買った時は腕が購入金額に伴わなくて、趣味なのになんか責任感じて落ち込んだりとネガティブなイメージが多く、換金率も高いので手元に残らないんだと思います。で、ライカは手元に残らないのにF2だけ何やかんや手元に残っていくと、自分の結婚式をF2で撮ったり、産まれた子供をF2で撮ったりと、どんどん自分とF2の思い出が増えていく。
 そうこうしているうちに、手放せないカメラになっていきました。フィルムカメラNikonでFマウントMFレンズがあったら、間に合わせでMFレンズがそのまま使えるのでデジタル一眼もとりあえずNikonにしよう、Gタイプレンズを買ったら、ミラーレスもFTZでGタイプレンズが使えるZにしよう、と芋蔓式にNikonにお金を払ってきた訳ですね。もちろんその途中でFujifilm XマウントシステムやライカMマウントなど寄り道してきましたが、Nikonのカメラが手元に1台もなかったことはありません。常に何かしらNikonのカメラが手元にありました。それは壊れないといった製品に対する不安やストレスがなかったことが大きいと思います。
 あと、使っていて気持ちがいいということですが、これは最初にどこのカメラから趣味を始めたかによると思いますが、私自身何故か家電量販店に行った時にカメラ売り場を見るのが好きで、特にNikonの製品がかっこいいなと思っていた記憶があり、最初に買った一眼レフもD5300でNikonだったのでということもあると思いますが、Nikonの操作感がシンプルで好きです。あと、シャッター音。
 ミラーレス時代になり、シャッター回数という概念もなくなりつつありますが、シャッターというのは撮影体験としてとても大事なファクターを担っていると思っています。
 特にF2のシャッター音は古く油が抜けてると金属音が混じった高い音になってしまいますが、しっかり整備されていると、シャッターショックと相まって撮影体験を高めてくれます。
 シャッター音がいいのはD850やD500もそうなので、Nikonの伝統なのかもしれません。ですが、私としては1番はNikon F2の音を聴くと今まで使ってきたカメラの中で1番聴いているシャッター音ということもあり、ホッとします。落ち着くような、久しぶりに実家に帰ってきたような感覚に襲われます。

 たくさん書いてきましたが、自分にとってNikon F2は手放せないカメラ、切っても切れない関係のカメラということが改めてわかりました。
 比較的中古市場でも手に入れやすい金額で出回っているカメラだと思いますので、この記事を読んで興味を持った方がいらっしゃれば、一度手に取っていただくことを強くお勧めします。程度の良いのに出会えたのならそれはきっと縁なのですから。

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