絵から生まれたお話「あじさい色の気持ち」
週末に紫陽花を見に行きました。6000株の色とりどりの紫陽花にうっとり魅せられて絵を描いてみました。描いた絵を眺めていたら、こんなお話が生まれてきました。
トコちゃんは、自分の気持ちや思っていることを、ことばにするのが少し苦手な女の子です。
急に胸があつくなって、涙があふれたり、なんだか落ち着かなくてソワソワしたり、心の奥がチクッと痛くなり、かたまってしまうことがよくあるのです。
まわりのみんなが、どうしたの?大丈夫?と声をかけてくれるのですが、何も言えず、どうしようもなく、その場にたちつくしてしまうのです。
そんなトコちゃんは、愛犬クロベエとまんまる山にお散歩に行くのが大好き。とくに梅雨の時期は毎日のようにまんまる山にでかけます。
なぜなら、まんまる山にはあじさいがたくさん咲いているからです。
青や紫のあじさいは、それぞれ色がちょっとずつ違っていて、さまざまな色合いがトコちゃんの心のとびらをそっと開いてくれるのです。
ことばにならないたくさんの気持ちがあじさいの色に映りこんで、トコちゃんに教えてくれるのです。
紫は大好きだったおばあちゃんのカーディガンの色、お空に行ってしまったおばあちゃんに会えなくて悲しい気持ち。
おばあちゃん、会いたいよー
かくれんぼでトコちゃんだけみつけてもらえず途方にくれて見上げた真っ青な夏の空の色。
みんなどこー、わたしはここにいるよー、ひとりぼっちだよー、だれか早くみつけてー
おかあさんが作ってくれたお気に入りの淡い水色のワンピース。どろんこ道を走ってきた男の子がはねあげたどろ水で、ワンピースが汚れてしまいました。あたまにくるやら、悲しいやら。
わたしの大事なワンピースどうしてくれるの!
仲良しのみーちゃんが遠くに引っ越していった日の夕暮れ。赤紫の夕焼け雲。みーちゃんさびしいよー、わたしのことわすれないでね。元気でねー
あじさいの色合いは、トコちゃんの心のなかのさまざまな思いや気持ちを映し出し、やさしくトコちゃんを包みこんでくれます。
あじさいいっぱいのまんまる山をクロベエと歩きまわると、トコちゃんは気持ちがすっきりとして元気が出てきます。
そんなトコちゃんをみて、クロベエは「わん」と吠え、うれしそうにしっぽをふるのでした。
おしまい