熱中症は誰のせい?
2023年7月28日、山形県米沢市で部活動を終えて帰宅する途中の女子中学生が、熱中症で道路に倒れているのが発見され、死亡が確認されたという、痛ましい事故が起こった。
この日は気温が高くなることが予想されたので、予定より早く活動を終了し、活動中も適切に水分補給と休養がとられていたと報じられている。しかし、市教育委員会の「ガイドライン」に沿って「暑さ指数」は計っていなかったことがクローズアップされていた。この点に疑問を感じるのは私だけだろうか?何か事が起こると、誰かに落ち度がないか、誰が責任を取るのかということばかり考えてしまう人間の悲しい性がそこに見えるような気がする。
部活動が何かは公表されていないようだが、「予定より1時間早く終了した」「水分補給と休養を取らせた」「部活中顧問がきちんとついて生徒の様子を観察していた」という顧問の判断は適切であり、何も責められることはない。「暑さ指数」を計っていたとしても、同じ判断を下していたことだろう。そもそも「暑さ指数」も単なる数値であって、それが絶対視されるものではないと思う。
また、「どうしてこんな暑い時に部活動やっているんだ?」というコメントも見かけるが、何でも部活動をやり玉にあげる風潮にもいかがなものかと思っている。部活動は中学生、高校生にとってかけがえのない青春の1ページであり、少しでも上を目指して練習を積み重ねる中で得られるものは大きいものがある。子どもたちから部活動をする権利を奪うことはできない。また、夏休みは授業のあるときにはできないまとまった時間の練習ができ、実力を伸ばせるよい機会である。夏休みに部活動を実施しないという、選択肢はほとんどないだろう。だから、適切な暑さ対策を講じながら、部活動ができるよう、「ガイドライン」が示されているのである。
山形の女子生徒の問題は、部活動だけではないと私は考える。女子生徒が発見されたのは、学校から2.5km離れた国道わきの歩道上だという。自宅と学校との距離はそれ以上だったのだ。午前11時ころと言えば、気温も上がり、アスファルトからの輻射熱もあって、「暑さ指数」は、部活動中よりはるかに危険な数字を示していたはずである。その中を一人で自転車で帰っていったのだ。同じ方向に帰る友だちはいなかったのだろうか?部活動後充分な休息をとってから帰ったのだろうか?帰る途中に充分な水分補給ができたのだろうか?帰り道に木陰などで休むことができたのだろうか?時々ヘルメットを脱いで中の熱を逃がすことはできなかったのか?などいろいろと疑問が沸き起こってくる。
つらつらと疑問を書き並べていくと、そのほとんどが中学1年生に自分で判断してやりなさいというのは無理なことのような気がする。大人(保護者や教師)がきちんと、熱中症の危険は登下校中にもあり、それを予防するすべを教えておくべきだったのではないだろうか。
今後、米沢市と教育委員会、各学校が協議して防止策を考えていくことと思うが、学校管理下だけではなく、登下校中の安全対策も含めた対策を講じてくれることを期待する。
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