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『雪国』川端康成

日本人初のノーベル文学賞を受賞した作品。
有名で、いつか読みたいと思っていた作品のひとつ。

三十路を超えた今だからこそ、読んで良かったと思う。

川端康成の作品はいくつか読んだことがある。美しいものに対する執念を感じさせるような、細やかな描写、日本語とはここまで多彩な表現が出来る言語なのかと感嘆した。

『雪国』もこと細やかな描写で、特に汽車の窓に映る葉子と光の描写はさながら映画のはじまりのようにドラマチックに描かれており、胸を打つ。

一方で『雪国』は”あえて書かない描写”が素晴らしいと思った。

主人公の島村と駒子の間にある心と身体の距離感、何をしているのかははっきりと描かれない。
しかし、文章と文章の合間に、書かなくても、その行為があったとわかる。
それがわかるのはきっと自分が大人になったからであって、読み手の経験や読解力に頼るところはあるが、それを感じ取らせる絶妙な文章バランスがあり、これは普通の小説じゃ無いな、と素人ながら驚いた。

文章を読むとは必ずしも書かれている言葉だけを読むのではなく、行間を感じ取り背景を想像し、心が動く体験のことを指すのだと思う。

今読めて良かったなと思うのは、大人になったからというのもあるが、20代の頃であれば駒子に感情移入しすぎて辛くて読めなかったかもしれないなと思ったのも理由だ。

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