むばたま

1951年に生まれたかった2000年生まれ。 古寺と仏像が好き。

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1951年に生まれたかった2000年生まれ。 古寺と仏像が好き。

最近の記事

越前大仏ー実業家が残した迷建築の楽しみ方

 越前大仏(清大寺)は、福井が誇るB級スポットだ。越前大仏といえば、ゴーストタウンと化した門下町や大仏の大きさばかり取りあげられがちだが、私はまた違った楽しみ方を提示したい。  ここは仏像もなかなかに面白いが、今回は建築に絞って書こうと思う。  この清大寺は、だれがどう見ても東大寺を模して造られている。木造の東大寺に対して清大寺の建物は鉄筋製であり、また種々の改変が加えられている。この「再現具合」と「改変具合」が個人的にツボなので、これから書き垂らそうと思う。  まず大仏

    • 斑鳩巡礼ー塔の美しさ、法起寺①

       佇む御姿を拝む前に自分の足を使って歩いてこそ、みほとけのありがたみが分かるものだ。という考えのもと、ひとつ手前の大和小泉駅で電車を降り、そこから畦道をなぞりながら法起寺、法輪寺を巡り歩いた。午後は法隆寺町の古路を通って中宮寺、そして法隆寺を巡礼した。私が歩くことにこだわる理由は、参拝前にその土地に馴染みたいという思いもある。その地で悠久の時間を経てきた古刹に参拝する前に、その地の空気を身に行き渡らせ、その身を馴染ませた空間の中で建築や仏像を捉えたいのだ。近所遠方に関わらず、

      • スピ系神社遠隔参拝動画のタイトル&サムネの煽り文句を類型化する

         ところで皆さんは、スピリチュアル系の神社遠隔参拝動画を見たことはあるだろうか。あるいはおすすめに表示されて1度や2度は目にしたことがあるかもしれない。スピ系の遠隔参拝動画の醍醐味のひとつとえば、やはり付されるアジテーション文句だろう。いわゆる、こういうやつだ。  どうでしょう、なぜだか心をくすぐるものがありませんか。この記事は、このようなスピ系遠隔参拝動画のアジテーション文句を類型化し、皆さんに自力でスピ系アジテ文句を作成できる力を身に着けさせることを目的としている。

        • 恵方はなぜ毎年変わるのか。いかに神様を恐怖させて恵方巻の効率を上げるか。

           節分といえば、豆まきと並んで恵方巻ですよね。その年の恵方を向いて太巻きを1本無言で食べると願いが叶うというあの恒例行事です。恵方というのは、その年の歳神様がいる方角ですね。  しかしここで少し考えてみると、奇妙な点があります。こう考えたことはないでしょうか。  歳神様のモチベーションはどこから湧くの?  我々からすれば無言で美味しい太巻きを食べる年中行事ですが、歳神様側から見れば、ただ素性も知らない人間がこちらを向いて黙ってひたすら太巻きを食べてくる現象です。普通それを

          奈良に行くと憂鬱になる話①

           奈良に行くと、決まって暗い鬱蒼とした気分に襲われる。私はいつしかこれを「奈良鬱」と呼ぶようになった。  この手の深い感傷を抱えることは、奈良に通い始めた最初の頃からあった。当時は長い帰路の途中、古刹古仏巡礼の新鮮な余韻に浸る初々しい余裕もあったため、感傷に襲われるのは家に着いてからであった。家に着いてひと息ついた途端、得体の知れぬ暗い気持ちが挿し込んでくる。何がもとになって起こる感情なのかもわからない。朝早くから東大寺や興福寺、高畑の道を抜けて新薬師寺あたりまでを巡り歩き、

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          薬師寺お身拭いの所感

           2023年12月29日、最愛の寺院薬師寺で白丁に選ばれた私は、ついにかの月光菩薩像に触れることとなった。薬師寺の金堂薬師三尊は私が最も敬愛する仏像であり、なかでも向かって左手の月光菩薩像は、これまで拝したみほとけの中で群を抜いて美しい。複雑に曲げられた腰や腹の肉感、案外太く頼もしい腕、そして何より青銅とは思えないほどの布のやわらかな質感、どこを見てもただ圧倒されるばかりだ。顔には月の光らしく静かな笑みをたたえており、端正な鼻筋や口元もあいまって繊細でやや緊張感のある慈悲の表

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          個人的な美ぺぺちゃんランキングBEST5

          第5位 イオンモールKYOTO裏のぺぺちゃん この作品の魅力は何と言っても形式美でしょう。完成されたぺぺちゃんの定型を代表する典型的な作品です。全体的に角ばった輪郭、半月型の白目、目下の頬、程よく丸みを帯びた顎ライン、これぞぺぺちゃんといったデザインです。また、目元は少し垂れており、目線の先にあるハートと相まって可愛らしい印象です。私は個人的に、この作家さんのハートの描き方がキュイっとしててとても好きです。  第5位には形式美を誇るオーソドックスぺぺちゃんを選びました。仏像で

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          仏像の信仰と美的鑑賞―聖地南山城展に行って後悔した話②@奈良国立博物館

           博物館というのは特殊な空間だ。仏像は寺院という信仰の空間から切り離され、近代的な空間に人工的な照明のもと置かれる。厨子、堂宇、境内など仏教寺院のあらゆるコンテクストから物理的に切り離された仏像は、無機質な台に置かれ或いはガラスケースを被せられ、考古学的・美的観察の目に晒される。その有様を見るとまるで法難を目の当たりにしているような気さえする。  しかし、博物館には博物館の意義がある。仏像が博物館に置かれるとき、寺院から切り離された仏像はもちろん博物館という文脈に従うことに

          仏像の信仰と美的鑑賞―聖地南山城展に行って後悔した話②@奈良国立博物館

          聖地南山城展へ行って後悔した話①@奈良国立博物館

           念願叶って奈良国立博物館の聖地南山城展に行ってきた。南山城といえば、一度京都から自転車で鴨川を下り、三河川合流地点から木津川に入って、そのまま川上を目指して行ったことがあった。そのときは蟹満寺と神童寺を訪れたが、禅定寺や海住山寺など他の古刹群へは参詣を計画しつつも未だ行かず仕舞になっていた。故に展示会で見るもののほとんどは初見のみ仏であった。  2階へ上がって展示室に入ると、平安時代の霊像がずらりと並んだ光景が一目に飛び入ってきた。来訪者は神妙な顔つきで仏像を目前に近寄っ

          聖地南山城展へ行って後悔した話①@奈良国立博物館

          『洛外東西雑言記』第五巻第ニ話 はらいた観音

           むかし男ふたりありけり。名をば九兵衛と助八といふ。年ごろ観世音菩薩を拝み、月毎の十八日には精進にして、いみじう念じ奉けり。ともに慈悲深くして、人を哀み、悪き心なく暮しにけり。  いづれの■*にやありけむ、観世音菩薩の縁日にて、西山の古寺*にて、御開帳あるをぞ聞きにける。三十三年に一度ある、いとありがたき御開帳なれば、九兵衛「これつとめて逃さば、三十三年のちになりぬべし。かまへて拝み参らむ。」となむ言ふ。助八もかならず拝み参らむと思ひ、心寄せつつぞある。つとめて絶起*し得ざ

          『洛外東西雑言記』第五巻第ニ話 はらいた観音

          金閣の見せ方は、ディズニーテーマパークにも使われているような気がする

           この文章は、個人の思いつき100%です。なんの具体的資料にも基づいていません。  私はこの前、10年ぶりくらいに金閣寺に行ってきたのですが、東京ディズニーランド/シーと似ているところを感じたので、今回はそれを書き垂らしたいと思います。  金閣寺の拝観券を購入して門を入るところからはじめます。  門を入ると、左右が木々で覆われた参道を進むことになります。真っ直ぐ進むと、左側の木々がなくなり、前方を見晴らせるようになります。右側は依然として木々で覆われており、見晴らしが悪

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          シアー・ハート・アタック(1974)を布教する

           Sheer Heart Attackは1974年にリリースされた、Queenの3枚目のアルバムです。あの名高いKiller Queenや、最もライヴで演奏されたと言われているNow I'm Hereが収録されていることでも有名なアルバムです。あと、同じSheer Heart Attackという名前の楽曲が、1977年のアルバムNews Of The Worldにあります(紛らわしい)。  個人的には、Queenのアルバムで1番好きなのは何かと聞かれたら、めちゃくちゃ迷います

          シアー・ハート・アタック(1974)を布教する

          ぺぺちゃん探索RTA

          ※以下の内容は全て、筆者の偏愛と私見によるものです。そして、落書き行為を推奨するものではありません。  皆さんは、"ぺぺちゃん"と呼ばれるグラフィティをご存知だろうか?  ぺぺちゃんとは、京都市街を中心にあちこちで見られる、「例のあれ」である。 ↓↓これです↓↓  実のところ、筆者はこのぺぺちゃんに激しく魅了されており、探すためだけに出掛けたり、意味もなく模写したりするまでになっています。いかに作品性が高いのかや、作者の熱意が感じられるかなど、ぺぺちゃんの魅力についてはま

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