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カスタマーサクセスの未来はどこへ向かう?──SaaSと非SaaS、二つの軸から考えるキャリアの可能性

こんにちは、ATOMica KOMMONSカンパニーCEOの白塚です。最近「カスタマーサクセスのキャリアパスをどう考えていくべきか?」と聞かれる機会が増えました。先日、COO / 大竹との会話の中でも、SaaSと非SaaSをめぐるカスタマーサクセスの役割や今後の展望について熱く語り合ったので、今回の記事ではその内容を私なりに整理し、持論を展開したいと思います。


SaaS領域と非SaaS領域、二つの大きな軸

まず、私が考える大きな分岐点は以下の二つです。

  1. 事業開発・仕組み作りを軸にするキャリア

    • SaaSのカスタマーサクセスでは、極力“ハイタッチ”の工数を減らし、自動化できる部分を徹底してシステム化していく流れがあります。

    • 企業としては、高い投資効果を求められるSaaSビジネスにおいて、効率的に事業を拡大し続けるために「いかに仕組みを作れるか?」が重視されるため、「仕組みを資産化できる人材」が生き残る構図です。

  2. ハイタッチを軸にするキャリア

    • 一方で、非SaaS領域(高単価かつ個別性の高い商材など)では、人間がじっくり顧客の状況をヒアリングしながらカスタマイズしていく“ハイタッチ”のアプローチがより重要となります。

    • こちらでは個々の顧客接点で得られる深いインサイトが評価されやすく、その結果、顧客と向き合う「実動人材」でも年収を十分に上げられる可能性があります。

私自身、「ハイタッチが必要な事業や非SaaS領域にはまだまだ大きな伸びしろがある」と感じていますし、そこを得意とする人材のキャリアの可能性も高いと見ています。


SaaS領域の“定め”とハイタッチCSの可能性

SaaSビジネスの理想は「プロダクトだけで顧客を成功させる」こと。
そのため、ハイタッチのカスタマーサクセスは最終的には必要なくなるのがベストという思想が根底にあります。

また、投資家や経営陣から「カスタマーサクセスをもっとAIで効率化できないのか?」という声が常に聞こえてくるのが現実です。こうした背景から、SaaSのハイタッチCSは常に仕組みを「回す」側から「創る」側へのシフトを求められる傾向にあります。

しかし逆に言うと、そこで生き残る人材はお客さまの課題を拾い上げ、プロダクトやサービス設計に還元していけるような、より戦略的な役割を担えます。狭き門ではありますが、ここを突き詰めれば、プロダクト開発やビジネス開発に直結するキャリアアップも見えてくるでしょう。


非SaaSの広がりと、プロフェッショナルとしてのハイタッチCSの可能性

一方、非SaaS領域では、単価の高い商材や柔軟な組み合わせが必要な案件が多く存在します。

例として、メーカーに所属するコンサルタントが、複数の商材を自由に組み合わせながら顧客の課題を解決し、継続的に伴走するといったケースです。
コンサルタントは、俯瞰して課題を整理するのが得意な一方で、実際に顧客の現場を手触り感をもって理解し、具体的な施策まで落とし込める人材はまだまだ少ないのが実情です。

カスタマーサクセスには「顧客の声を聞き続ける」「地道な課題解決を行う」といった文化が根付いており、この強みを維持しつつ、より抽象度の高い顧客と向き合えるようになれば、俯瞰視点と現場感を併せ持つ顧客のパートナーになれると考えています。

実際に私の周りでも、こうした非SaaS領域で顧客へのハイタッチ支援を行う方がメンバークラスであっても年収1,000万円超えという例も出てきています。SaaS業界ではなかなか実現しにくい給与レンジをハイタッチCSで稼ぎ出せるのは、非SaaS領域の大きな魅力だと感じています。


BPO×SaaS / AIの可能性──“第三の道”が切り拓く未来

私自身が面白いと感じているのが、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とSaaS / AIの掛け合わせです。

コンサル企業とSaaS企業はそれぞれ得意領域があり、双方を完璧にこなすことは難しい。しかしBPOは、SaaS / AIを活用しながら“人”の力で顧客に深く入り込み、内部のオペレーションを担いつつ効率化を進めることができます。

「人のハイタッチによる付加価値 × SaaS / AIによる自動化・効率化」を目指す中で、顧客対応の経験とその業務を効率化/自動化していく事業開発の経験を同時に積むことができるのではと考えています。
このあたりはまだ黎明期ですが、私は大きな可能性を感じています。


カスタマーサクセスが築く“新しい事業のかたち”

ここまでお話ししてきたように、カスタマーサクセスには

1. SaaS領域で仕組みを作り、事業開発に繋げる方向
2. 非SaaS領域で、より大きな価値をハイタッチで提供する方向
3. BPO × SaaS/AIで、両者のいいとこ取りを狙う第三の道

という複数のキャリアパスが生まれ始めています。かつては「カスタマーサクセスといえばSaaS企業における既存顧客担当」というイメージが強かったかもしれませんが、今後はより広い領域で活躍するようになるでしょう。

特に顧客起点で事業を作り出せる人材は、投資家や経営層からも重宝され、キャリアアップにも直結しやすい。現場で顧客と対峙してきたCSの方々にはぜひ、こうした新しい選択肢を視野に入れてほしいと思っています。


まとめ:カスタマーサクセスは今こそ“広がり”を実感すべき

  • SaaSでは効率化が進み、仕組み作りができる人材が生き残る

  • 非SaaSでは高単価×複数商材のハイタッチCSが脚光を浴び始めている

  • BPOとSaaSの組み合わせは今後の注目領域であり、事業開発・キャリア拡大の大きな可能性を秘めている

カスタマーサクセスという職種が、単なる顧客サポートの延長ではなく、事業の根幹を創り上げる職能として多方面に広がりを見せはじめたと私は感じています。
まだまだ「カスタマーサクセスが事業を生み出す」という文化が一般的とは言えませんが、だからこそブルーオーシャンの可能性がある。顧客起点で新しいものを作るのが好きな方は、SaaSか非SaaSか、あるいはBPO領域かを見定めながら、これからのキャリアを切り拓いていただければと思います。

「CSとして現場で磨かれた思考力や課題解決力は、必ずやビジネスの武器になる」。そう信じているからこそ、私自身もKOMMONSの事業を通じて、この領域で活躍する仲間を増やしていきたいと思っています。

最後までお読みいただきありがとうございます。
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