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酒には、美味しいということ以上に大事なことがある。
こんにちは、こみや酒店です。
3年ぶりにnoteを復活させてみました。
三日坊主にならないよう頑張ります。
さて、今回訪問してきた酒蔵はこちら↓
滋賀県・竜王町 松瀬酒造
ブランドは『松の司』です。
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<基本情報>
住所:滋賀県蒲生郡竜王町弓削475
創業年:1860年
主要ブランド:松の司
行き方:東海道新幹線 米原駅より車で約50分
<竜王町について>
蔵の位置は、琵琶湖と鈴鹿山系の間に開ける湖東平野の中央。琵琶湖の南側です。肥沃な大地が広がる田園風景が素敵な町です。食材では、日本三大和牛の1つである『近江牛』をはじめ、町内の約30%を占める水田から採れる『近江米』、四季折々のフルーツなどがあります。琵琶湖も近いので鮒寿司とかもありますね。
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<以前の蔵は洪水で全壊>
明治時代までは現在とは別の場所に蔵があったそうですが、洪水で全壊し流されてしまいました。そしてその流された木材をかき集め、現在の場所に元は仕込み場だった事務所を作ったとのことです。
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<酒造りに対する想い>
理念は「竜王町の大地から生まれた歴史や風土、自然の恵みに感謝し、一筋の純粋な真心で酒造に研鑽を積むことを通して、竜王町に息づく文化の向上に貢献する」というもの。シンプルな中にも奥深い味わいを求めて、というのが松の司の目指す部分です。
甘さは全体的に控えめな酒質で透明感と繊細さ。単体で飲んで「とても美味しい!」という感じの味わい表現ではないですが、そこがまた良いポイントで、お食事との相性が最高です。毎日飲みたい酒。冷蔵庫に何本か入っている中で、気が付いたら手に取っている酒、といったイメージで伝わりますでしょうか?
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杜氏を勤めているのは石田敬三さん。雰囲気からベテラン感満載で、どこかの酒蔵でも杜氏を勤めてきたような貫禄があるのですが、伺ってみるとなんと大学卒業後に松瀬酒造さんに就職しそこからずっと1本とのこと。他の企業では働いたことが無いそうです。蔵の事は社長の次くらいに知っているくらいの方です。一筋でここまでやってきた方が造るブレない気持ちと信念が、松の司の素晴らしい味わいを形成しております。
石田さんの酒造りのモットーは
「日本酒の本質とは何かを常に考え、美味しい以上に大事なことを求め続けていきたい」ということ。
この意味を紐解くと、日常に溶け込むような身体と一体化する酒。酒だけで完結させすぎず、普段のお食事と一緒に毎日飲める酒。こんな意味合いが込められているのかなと勝手に解釈しております。
どうしても酒の主張が強いと食事と合わなかったり、ブームが過ぎたら需要が減ったりなんてこともあるかもしれません。石田さんはブームなどには乗っからず、安定した酒質で派手すぎない酒を造るのが卓越しています。逆に華やかな酒は自分には造れないとまで仰っておりました。
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<原料米へのこだわり>
1988年から竜王町と兵庫県旧東条町にて山田錦の契約栽培を開始。そうして1992年からすべての原料米を契約栽培による生産に切り替えています。2002年にはすべての契約圃場に「環境こだわり農産物認証」を取得し、翌2003年産から栽培期間中は無農薬・無化学肥料栽培米に取り組んでいます。
このお米で造られるお酒が『AZOLLA(アゾラ)』シリーズです。AZOLLA(アゾラ)とは水草で、無農薬の水田や湖に浮かぶウキクサの学名です。これが水面を覆うことで、雑草への光を遮断することで、農薬に頼らず雑草の成長を抑える働きをします。AZOLLA(アゾラ)の造りに関しては、田園風景などの自然・生命力・躍動感などを表現したいという想いから、培養酵母に頼らない生酛造りを採用しています。
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<竜王山田錦・土壌別仕込み酒>
AZOLLA(アゾラ)に引き続き、竜王町山田錦を使った圃場別での仕込みも行い、味わいの違いを感じることが出来るシリーズ。
これを展開する理由は、竜王町の土壌条件にあります。平地から山裾、河川の側と様々な場所にある田んぼ。場所が変わると土壌も変わり、粘土・山土・砂や礫などバラバラ。
粘土質の場合は、ふくよかでたくましい米に。
砂礫まじりの山土の場合は、硬く繊細でシャープに。
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土壌別の特徴は下記資料にまとまっております。
・駕輿丁地区(粘土質)
・橋本地区(粘土+砂)
・林地区(粘土+砂)
・山中地区(山土+砂礫)
・山之上地区(赤土+砂礫)
・弓削地区(粘土+砂)
・山面地区(山土+砂礫)
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<精米はすべて自社で行います>
松瀬酒造さんの特徴の1つに自社精米があります。他社さんで精米歩合を指定して精米してもらったものを仕入れる形が一般的ですが、珍しい自社精米。弊社でお取り引き頂いている酒蔵さんの中でも自社精米を行っているところはごくわずか。
メリットとしては、農家さん毎で精米が出来ること。どうしても大きい精米会社さんに委託すると農家さんごとで細かくは精米して頂けません。米の品質は農家さんごとでもちろん変わります。松瀬酒造さんではロットごとで米を細かく管理し使用しています。
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<若い世代にも日本酒の魅力を伝えたい>
専務の松瀬弘佳さんは28歳。私のおひとつ先輩ということでとても驚きました。中々、この業界で20代というのは絶滅危惧種のような感じもしますが、感性を大切にして既存の概念には捉われない魅力の伝え方をしていきたいと思っております。
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<見学を終えて>
いろんな酒蔵さんをこれまで訪問してきましたが、必ず新しい発見があります。同じ酒蔵さんでも2回目伺った際にも必ず得られる情報や知識があります。
松瀬酒造さんでは、改めて日本酒において大切にするべきことは何かというのを学んだ気がします。どのお酒を飲んでも1本の芯が通っており、石田杜氏の目指す酒質の考え方と、表現されているお酒がとてもマッチしていると感じます。
松の司を飲んで、竜王町の風土や蔵の雰囲気、杜氏・蔵人の個性、蔵の周りに広がる田んぼの風景を感じてもらえたら嬉しく思います。
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