ぶつかりおじさんの一般的な傾向

ターミナル駅の構内を歩いていると高確率でぶつかりおじさんに遭う。コロナウイルス蔓延とともに遭遇率が減ったので彼らも感染対策をしているのかもしれないが。

すれ違いの時に避けるべきところを、むしろ体をこちらに向けて足を踏み出してくるのだ。こっちも歩いているのでとっさに回避できない。私は標準的な体格なので当然よろける。驚いて声も出せず、わざとぶつかりやがったなコイツ、と思ったときには彼はもう去っている。
振り向いて追いかけてとっ捕まえて「今のわざとですよね?!」と警察を呼びたい気持ちはあるが、年上の男性はそれだけで怖いのでそこまで出来ない。

悪質なのは、いわゆる「肘鉄」を胸にキメてくるおじさんだ。手で触るとあからさまに痴漢なので肘にしているのかと思うが、胸を狙っているのは明らかである。
やられた側としては痴漢というより暴行に近い感覚だ。お互い歩いていてスピードがついているし、肘は手より硬いので、骨が突き刺さるような痛みがある。「ゔっ」と呻き声が出ることもある。
仮に通報されたところで「わざとじゃないです」と誤魔化し切れるやり口なので、痴漢よりも逮捕されにくい痴漢といえよう。確実に嫌がってもらえるしそういう性癖のひとには愉しいのかもしれない。

1番よくいる、ぶつかりおじさんの亜種は「1ミリも避けないおじさん」だ。これに関してはわざとぶつかっているとまでは言えないが、こちらとしてはとても気分が悪い。

他人とすれ違うとき、たとえば半歩ずつお互い避けたら、体ひとつ分の隙間が空いてスムーズにすれ違うことができるし、大抵の人はそうしているだろう。
だがこの「避けないおじさん」は、私の姿を視認しているにも関わらず迷いなく直進してくる。結果、私が急角度でよけない限り肩がぶつかってしまう。大抵「チッ」とか舌打ちをしてくるが、そちらが少しでも避けてくれればぶつからなかったのにな、と思う。怖いから反射的に謝ってしまうけど。

これはおじさんの「若い女は俺より下」という無意識が作用した行動だと思われる。ぶつかりおじさんと比べれば積極的加害意思に欠けるかもしれないが、避けないおじさんは深刻な女性蔑視だといえよう。
若い女なら避けて当然、少しでもぶつかったら相手が避けきらなかったのが悪い。こちらが若い女に気を使う必要はない、という考え方だ。
「若い女全般」というよりは、「自分に逆らって来なそうな相手」を選んでいるといえるかもしれない。若い女でも体格が良かったり、派手な髪色やメイクをしていたらおじさんは避けるときく。

ここまで「おじさん」と表記してきたが、「ぶつかってくるor避けない人には女や若い男もいるじゃないか」と疑問を持つかもしれない。
しかし、私の経験上、このようなタックル野郎は9割方40-60代の男性である。

特に、160-170前半の、どちらかというと小柄な男性が多い。
大柄な男性は自分の体格が他の人間に与える衝撃の大きさをよく理解しているからすれ違いの際に気を遣っているのかもしれない。
だが、どちらかというと、「自分より弱そうな相手をわざと選んでぶつかりたくなるような人は、男性社会の体格的ヒエラルキーでは下のほうにいる男性が多い」という帰結なのではないかと感じる。普段自分が敵わない相手が多いため、その鬱憤を弱い相手にぶつける、という心理である。

ストレスが溜まってるんだね、可哀想に。ぶつかりおじさんが我々にぶつからずとも幸せに生きていけるようになりますように、と願いたいところだが、それよりもまずは一度、ぶつかった相手の数だけクッソ不幸になって欲しいものである。

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