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恋愛ヘッドハンター2 砂時計②

賢太郎が青年の素性を知ったのは、馴染みの居酒屋で飲み物と料理を頼んだ後だった。
「実は僕、こういうものでして」
賢太郎は差し出された名刺を受け取った。
「恋愛ヘッドハンター 朝井智也。恋愛ヘッドハンターって何だかすごい仕事ですね、初めて聞いた」
「はい。よく言われます」
店員が飲み物を運んできた。
「乾杯」
賢太郎はビール、智也は烏龍茶を一口飲んだ。
「実は僕、ある方から依頼を頂いておりまして」
「はあ」
智也は居住まいを正し、賢太郎をじっと見た。
「大岡さん。あなたとお付き合いしたいという女性がいます。一度、会ってくれませんか」
「えええ」
途端に鼓動が激しくなった。
「え、何ですか、それ」
「申し訳ありません。実は、そのお話をするために大岡さんを追っていたんです。エレベーターで声をかけるつもりだったんですが、その前に大岡さんが倒れてしまって」
「ああ、そういうことだったんですか」
「成り行きでこうなってしまったわけですけど。食事も本当は僕から声をかけるつもりだったので」
「はあ、へえ。でも、僕と付き合いたいだなんて。そんな人いるの?オッサンだよ。というか、僕、既婚者だし。ムリムリ」
賢太郎は自分を嘲りながら、手を振った。
智也の態度は変わらない。
むしろ、さらに真剣な眼差しで賢太郎を強く見ていた。
「大岡さん」
「はい?」
「今の恋愛に、満足していますか?」




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