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映画「ミナリ」感想文

アメリカへ移民した韓国人の家族。
ヒヨコの分別作業で生計を立てながら、夫は農場経営を夢見る。
現実を見ない夫に絶望を重ねる妻。
おとなしい娘とおねしょが治らない息子は、ただふたりの喧嘩が早く終わることを願い、自分たちの想いをしたためた紙ヒコーキを飛ばす。
朝鮮戦争に従軍した経験のあるアメリカ人の協力を得て、夫は作物を育て始める。
夫婦は妻の母親にアメリカへ来てもらい、家族の再生を計ろうとする。
やってきた妻の母親は、「おばあちゃん」らしくないおばあちゃんだった。

村上春樹原作の韓国映画「バーニング」で謎めいたボンボンを演じたスティーブン・ユァンが、今回は山師のような父親を演じています。出だしは若き日の萩原聖人のような瑞々しさがあったのですが、疲弊の果てにトレンディエンジェル斎藤さんのような顔つきに。
自分の夢に確信が持てないので「家族のためにやっている」と責任転嫁するのは、ダメ父ちゃん万国共通の所業といったところでしょうか。
アカデミー賞主演男優賞にノミネートされているそうです。おめでとうございます。

妻役には、ハン・イェリ。李氏朝鮮建国を描いた韓国ドラマ「六龍が飛ぶ」で、政治から身を引いた王様に仕える舞が得意な愛妾(本当は剣が得意な刺客)役で素晴らしいアクションを見せていた女優さん。決して美人ではありませんが、骨格が美しく頼りなさげな肩と柳腰に同性でありながらうっとりとします。
失敗続きの夫を責め、口では自分が家族を食べさせるといいながら、自分ひとりではなかなか先へ踏み出せない古風な女性。
引っ越せば幸せになれると信じているみたいだったけど、これまでもアメリカ国内で引っ越ししていましたよね?!とつっこみたくなりました。
夫婦の様子を静かに見つめる娘アンが、本当にこの両親の子供に見えるくらい、二人のいい部品を集めたようなビジュアルをしていました。
おねしょが治らない弟デビッドは、考えの浅い両親の反面教師のような存在ですが、子供らしさがちゃんとあってとても可愛かったです。
そのデビッドと交流を持つのが韓国からやってきたおばあちゃん。
おばあちゃんを演じるのは、韓国映画「ハウスメイド」でクールな先輩家政婦を演じたユン・ヨジョン。
おばあちゃんと生まれてはじめて会ったデビッドはなかなか慣れることができません。
また、おばあちゃんは全然おばあちゃんらしくないので、デビッドは不満は募らせます。
ただ、利口なところはこの二人はよく似ていて、要領の悪く農業に苦戦する父親を尻目に、おばあちゃんは水辺に韓国から持ってきたミナリ(芹)の種を撒き、簡単に成長させてしまいます。

ここまでだとよくあるおばあちゃんと孫の心温まるお話のようですが、もちろんそんなことはありません。
メッセージとしては、無理はしない、らしくないことはしない、ということでしょうか。
制作陣のなかにブラット・ピットの名前が。
何故彼がこの作品を作ろうと思ったのかが知りたいと、最後の字幕メッセージを読んで思いました。
あと、ユン・ヨジョンさんもアカデミー賞助演女優賞にノミネートされているそうで。おめでとうございます✨。

劇場は3分の1くらいの入り具合。
誰も咳もクシャミもしなかったんですよ。
私はコロナ堝にあっても観劇などに行っているのですが、これは初でした。
私を含め、みんないいお客様!




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