〔小説〕美影風夏①わがまま
きっかけは私、市川風夏(いちかわふうか)のワガママだった。
高校に入って以来、どうも周りについていけなかった。
おしゃれ、男の子、勉強。
ぜーんぶに疎いものだから、毎日がどんどん楽しくなくなった。
つまり、身も心も成長を嫌がっていたのだ。
これ以上、大人に近づくのが怖かった。
この気持ち、あの子だったらわかってくれるはず。
思い浮かべた相手は中学時代の親友、朝田美影(あさだみかげ)だった。
美影は私とは別の高校に通っていた。
親友なのに、なぜ、別々の高校に行っているのかというと、美影が今通っている高校に私が落ちたからだ。
ざーんねん。
勉強しなかった自分が悪い。
高校が別々になっても、美影とはしょっちゅう連絡を取っていた。
最初の二か月は。
だんだん、美影から連絡が来なくなった。
美影が通っている高校は試験が多いことで有名だった。
忙しいのはわかっていても、寂しくないといえばうそになった。
一学期の期末テストが終わった日。
私は久しぶりに美影にメールした。
『久しぶり。元気にしてる?ねえ、一緒に死んでくれない』
怒られるかな。
ドキドキしながら、返事を待った。
意外に返事はすぐに来た。
『いいよ。どこで死ぬ?』
私たちは自殺することにした。