プロ彼女

返信がなくても、騒ぎません。
SNSはやってるけど、
匂わす写真は一切載せません。
会社でも妙に馴れ馴れしく接しませんし、
もちろん、誰にも話しません。
万が一周りに疑われても
シラを切り通す自信があります。
と言うか、そんなシチュエーション
そもそも作らないこと徹底します。

どう？
この条件なら安心する？

カラオケの小さな個室で、
飲みながら歌ってたけど、
次の曲を長々探してる間に言った。

何すか、それ。
めっちゃいい条件なんですけど。
って言うか、何すか本当それ。
え、俺に言ってます？
ヘラヘラ笑いながら彼が聞いてくる。

だってさー、あたしたち、
チューから先に進まないじゃん。
さっきもチューしたけど、それだけ。
もう一歩先に進むの、
リスクあって怖いのかなぁって思って。

いや、俺は別に…

あたしは、内緒に出来るよ。
何かあっても、奥さんに連絡しない。
家の前で待ち伏せしたりしない。
夜中の2時にLINEしまくらない。
そもそもLINEに匂わせも書かない。
ハートマークも送らない。
ただの同僚。

何、そのいい条件…

だってお互い様じゃん。
どっちかがリスク負うなら、
もう片方もリスク負うんだよ？
自分のリスク管理もしてるだけ。
好きは止まらないもん。
でも、今あるものは壊さない。
既に壊してるかもだけど、
表面上は壊れてない。
あたしたち、一生じゃないもん。
だから、そんなの分かっての交渉。
あくまでリスクが理由ならね。

うん…そうっすね…

チューだけで終わるの、ズルい。
しかも何回もしてるのに。

いや、なんか、迷ってるとこあって…
本当にいいのかなって…

ま、戻るなら今だよね。
やめるなら今がいいかな。

好きは、好きです。
好きになっちゃってるのは事実で。
もう、戻れないくらい
めちゃくちゃ好きっす…
だから、本当は抱きしめたい。
カラオケでチューするだけじゃなくて。

じゃ、２人で完全犯罪、しよ。
あたし、プロ彼女になれるから。
レモンサワーをちょっと飲んで、
あたしから彼に軽くキスをした。