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油のはなし。

前回のnoteでは材料について少し書きました。

オープン当初からずっとお世話になっているものもあればその時その時で変化しているものもあり、中でも一番移り変わっているのは【油】かなと思います。


最初の頃は「関根の胡麻油」というごま油を使わせて頂いていました。

原材料にも製法にもこだわっていて香りも良く、とても氣に入っていたのですが、ある時ご来店されたお客様から「noahさんのおやつ食べてみたいんですけど、私はごまアレルギーだから食べられないんです…」というお言葉を頂きました。

せっかく食べたいと思ってくださっている方が居ても材料の選び方ひとつでその機会を失ってしまうこともあるのだなと思い、それならアレルギーの問題が無いものに変えようと決めました。


候補がいくつかあった中で、できれば九州の会社を応援したいと思い、あるメーカーさんの菜種油をしばらく使っていたのですが…

原材料の不足により国産の菜種油と外国産の菜種油を混ぜるという偽装が発覚し、もうそのメーカーさんの油は使えなくなってしまいました。

私たちは作り手さんを信頼して商品を購入しているし、お客様は私の作るものを信用してnoahのおやつを選んでくださっている訳なので、本当に不正はやめて頂きたいです…。


愛用していた油が無くなりふと頭に浮かんだのは、なかしましほさんがレシピ本の中で紹介されていた「平出油屋」さんでした。

以前使ったことのある別の菜種油はクセが強くて苦手だったので手元に届くまではドキドキしていましたが、平出さんの油はうっとりするような綺麗な黄金色とほのかな菜種の香り、作り手さんの想い、伝統的な製法、材料には国産無農薬菜種使用と、どれをとっても素晴らしいものでした。

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良い油に出逢えてよかった…と安堵していたところに《平出油屋さんが2019年末で廃業》という悲しい知らせが飛び込んできました。

長年使用している機械の老朽化や、それを修理できる職人さん達が加齢により引退してしまったこと、息子さん達は別の職業に就いており後継者がいないこと、平出さんご自身も70歳を過ぎており健康上の不安から新たに設備投資をしてまで続けていくのは難しいということ。

以上の理由から、平出油屋さんは178年の歴史に幕を閉じることになったそうです。


菜種油を作っているメーカーさんはたくさんあるけれど、心から「使いたい」と思わせてくれるメーカーさんは本当にごくわずか。

大量生産している所はコストを下げる為に【ヘキサン】という有機溶剤を使って油を抽出しているそうですが《完成した油に成分が残らない》という理由で表示の義務が無いそうです。

こんな話、正直おやつ屋をやるまで聞いたことなかったし、きっと知ってる人よりも知らない人の方が多いんじゃないかな…。

(きちんと手間暇かけて作っているメーカーさんは「圧搾一番しぼり」とか「玉締め」とか表記していますが、さすがにサラダ油とかに「有機溶剤で抽出」とか書いてあるのは見たことないですよね。企業はマイナスなことは書かないんです。だから、消費者が学んでいくしかないと思うのです…)


実はまだまだ油選びの旅の途中でして、次に使う菜種油を決めかねております。

平出油屋さんの油はある程度ストックしてありますが、早めに新しいものを探して確保しておかないと…。


先日ネットで調べて評判の良かった菜種油を取り寄せてみたものの、香りが少し強めなので天ぷらとかには良いけれどお菓子作りには向いていないのかな…と感じたし、サラダ油タイプの菜種油だと手に入りやすくてとてもありがたいのだけど、サラッとしすぎていてドレッシング作ったりするのは良さそうだけどもうちょっと香りとかコクが欲しいなとも思うし…。

なるべく国産(無農薬だとなお嬉しい)・圧搾法・菜種の香りがほんのり残っているけどクセは無い・菜種サラダ油ではなく菜種油、という条件を満たす油に出逢えるまでこの旅は続きます。(そして我が家の台所には店で使えなかった油たちが続々とやってくることになるのでしょう…。うふふ…揚げ物が増えるのかしら…うふふ…⤵︎)


油選びに迷って改めて氣付く、平出油屋さんの偉大さ…。

国産のものを使うよりも海外から菜種を取り寄せた方が安く済むし、化学薬品を使ってしまえば短時間で大量の商品を作ることができるこの時代の中で、昔ながらのやり方にこだわってていねいに商品を作っているメーカーさんは本当に貴重だと思います。

そういったまじめなお仕事をされているメーカーさんがこれからも商売を継続していくには、私たちが買い支えていくしかないと思っています。

うちなんて本当に微力ですが…

良いご縁に恵まれて、素晴らしい作り手さんと出逢えるよう。アンテナ張り巡らせて頑張ります!

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