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シケモクを見るたび思い出すよ

暑い。


夏か。


蝉鳴いてないな。なんだ春か。
暑い春か。


日本国全体で暦を見直した方が良いと思う。
明らかに暦がズレている。
冬のように暑い4月、夏のように暑い5月。
まだまだ暑いのかってなった去年の10月。
明らかに月のイメージの気温とかけ離れ始めている。誰も怒らないからやっても良いと思う。
いや、僕がやるか。
いや、面倒いな。誰かやってくれ。


このnoteは当日のことを書いている。
大体、その日のことは次の日にまったりかくのだが、今日のは新鮮。まだ動いてる。僕の中の江戸っ子も「踊り食いが乙なんでい」と言っている。そんなサタでい。


今日も朝の早よからバイトだ。
土日は空けるように頼んでたのに。
深刻な人員不足のおかげで休日出勤。
みんな令和の元号に慣れてきたのに学徒出陣のような気持ちで出勤出来る。有難いバイト先だ。


会話も今日みたいな暑い日はみんな「暑いねー」「夏かなー?」しかない。まるでbotだ。血が通ってない会話。


突然、徴兵された僕は短い時間だが、
休憩をいただけることになった。
ありがたい。この時間帯はきっとお腹が空く。


ご飯を食べて、煙草を吸う。
この時間が至福だ。
そなたは素晴らしい。生きろ。


煙草をぷかぷか吸ってると、
喫煙所の灰皿から煙草を回収しているおばさんがいた。いつも本当にご苦労様です。の顔で見ていたが、明らかに様子がおかしい。


明らかに選んで回収している。
綺麗な状態の良いシケモクを、
まだ長い吸えるシケモクを。


僕がマジか。の顔で見ていたのに気づいてしまったおばさんは逃げるようにチャリのストッパーを外し、一瞥もすること無く逃げるように遠くに消えてった。そんなおばさんが…。マジか…。


でも割と見慣れた光景だなっても思った。
養成所時代、僕の相方だったあの男も喫煙所の灰皿からシケモクをよく回収していた。


僕はシケモクを回収する程、
そこまで煙草に執着していない。
やめろ。と言われたら辞めれるくらい浸かってないと思うし、やめろ。って強く言ってくれる人を求めている。今はやめる理由がないだけだ。
喫煙者はみんなそう言うかもしれないけど。
僕だけはマジだ。信じてくれ。


あと人づてに聞いたことだが、
大阪西成の家なき人達もシケモクは流石に吸わないらしい。結核が移るからという理由らしい。
さすが西成、スケールが違った。


僕の相方だったあの男とは本郷という男だ。
名前を出してるのは本郷は絶対に芸人を辞めないし、いずれ出てくるだろうだと思ってるからだ。
深夜帯の番組かニュースで出てきそうだ。
あと怒らなそうだから。
僕は本郷がキレてるところを一度も見たことがない。怒っても怖くなさそう。得体の知れない怖さとかはありそう。


本郷と初めて会ったのは養成所のクラス替えの時だ。僕が通ってた人力舎の養成所は黄、緑、赤、青クラスに別れてた。黄色から年齢が高く、青クラスになると10代とかもいる。まだ肌に撥水性があるギラギラした若者が沢山いる。僕はコンビを組み替えて本郷と同じ緑クラスに入った。


第一印象はなんだか雰囲気があるなぁ。
くらいだった。なんか記憶違いかもだが、睨まれてたような気もする。普通に怖かった。


このクラスは社会人経験のある人が多く、
年下の僕を歓迎してくれて飲み会を開いてくれた。
とても優しくて居心地が良かった。
その飲み会にも本郷がいた。
1人の男を相方にするためにめちゃめちゃ口説いてて怖かった。僕の方を全く見てなかった気がする。見てたかもだが睨まれてた気がする。


本郷と初めてちゃんと喋ったのは
養成所の喫煙所だ。3回ほど会話をラリーした後に
「あっ、関わってはいけない人なんだな!」
とちゃんと気づくことができた。


本郷の異常性に気づいたのは
このクラスでのパントマイムだか演技だかの授業だったと思う。ペアを作って準備運動をしようという時間があった。
この時の相方は体が僕より一回り二回り大きく、
「なるべく体格の近い人とやりなさい」という講師からのお達しもあったので別々で探すことにした。
しかし、行動が遅かったのか、
みんなあぶれたくないという気持ちがあったのか
もう本郷しかいなかった。
話すことないよー。


本郷とこれをやることになった。


本来、僕はこの体操がめちゃめちゃ好きだ。
背中がバキバキバキッていうのがたまらない。
でも仲良い人とやりたいよなー。
パーソナルエリア侵害されまくりだよー。
しかも得体の知れない奴に。
嫌だ。怖すぎる。


でもやるしかないので、
僕は彼と組み合った。
その時だった。
彼のさらなる異常性に気づかされる。


「獣…?」


明らかにこの教室に獣がいる。
しかもかなり近い。
獣臭が凄い。絶対にいる。


見渡してみたがどうみてもヒトしかいない。
ヒト科ヒト目、ホモサピエンスしかいない。
あぁ、ということは…
僕が今、背中に背負っているのが獣なんだな。
僕は自らの運のなさに絶望した。


その後、本人に聞いてみると
彼は風呂なしの物件に住んでいることを良いことに風呂に入らないらしいのだ。狂ってる。
夏場というのもあり凄かった。


同期で1番兄貴肌だった男に
「本郷に風呂を貸してやってくれ!」
と懇願したことがある。
すると兄貴肌の表情が曇り、
「やだよ、排水溝に髪が詰まりまくるもん」
と正当に断られた。
この時に「どうしたらいいんだよ!」じゃなくて、「あいつなりにちゃんとやれることは全部やってるんだな!」と少し感心したあたり、僕は本郷のそこらへんをかなり諦めてたんだと思う。


僕は当時のコンビを解散し、
最初のライブを前に不本意ピンになった。
その時に本郷からコンビ結成の誘いを受けた。
雰囲気ある人と組めるのは悪くないと思ったが、
あの時の臭いがまだ鼻にこびり付いていたので、
「俺、ピンでやることあるわ」
とかっこよく断った。


すると「え〜〜、組もうよ〜〜」
と駄々をこね始めたので
「M-1だけ」という契約で組むことになった。


でも僕と本郷のコンビはM-1に出ていない。
本郷にM-1の資料提出を任せたのだが、
「間に合わなかった…」とのことらしい。
裏切らないな。と感心した。
これで僕と本郷のコンビは終わった。


その後、
僕は不本意ピンを本意であるかのように続け、
本郷はさまざまなコンビを組んでは解散していた。


僕は年を越しても不本意ピンを続けていた。
もうなんらかの結果が出るまで辞めることが出来なくなっていた。本郷は元々ブラックスワンというコンビだった桑折くんと「餅喰いシンデレラ」というコンビを組んで漫才をしていた。


「餅喰いシンデレラ」の漫才は独自のパンチラインがあって面白かった。でもあんまり笑いは起きていなかった。多分、起伏が無さすぎるんだろう。ずっとボソボソのしゃべくり漫才。


僕はというと
リズム紙芝居の「ドク撲パク」
アホ紙芝居の「コンビニキング」
赤ちゃんを川に流すコントをやってた。
パイナップルと進路相談するコントもやってた。


「ドク撲パク」の台本をなんとここで初公開!

ぼく!アンパンマン!
撲!アンパンマン!
パク!アンパンマン!
ドク!(バックトゥーザ・フューチャーのドク)
パク!(韓国の一般男性)
ドク!パク!ドク!
パク!ドク!ドク!
ドク!ドク!ドク!
パク!パク!パク!
ドク!撲!パク!
パク!撲!ドク!
ドク!撲!パク!
パク!撲!ドク!
イムチャンヨン(韓国のピッチャー)(転調)
イムチャンヨン…
イムチャンヨン…(フェードアウト)
リズム紙芝居「ドク撲パク」


懐かしい。僕も意味が分からない。
講師も好評の時には頭を抱えていた。
けどこれをやるのはめちゃめちゃ楽しいし、
書いてる時、ずっと笑ってた。


これをやった後、
本郷が「それ面白すぎる」と言ってくれた。
その時、あっ、コイツと組めば良かったな。
と思った。


でもその頃、もう「餅喰いシンデレラ」が存在してたのでそれは出来ないなー。と思って、
僕は紙芝居をたくさん書くことにした。


ライブ前、最寄りのコンビニで練習していると、
知らないアイコンからラインが来ていた。
「餅喰いシンデレラ」の桑折くんだ。


この「餅喰いシンデレラ」を覚えてる同期、
もう僕だけだろうな。ペットショップの漫才めっちゃ面白かったんだよな。


そこで餅喰いシンデレラに加入してくれないか?とお誘いを受けた。ピンを辞めたかったが、「返事はすぐにしちゃダメ」ってYUIが言ってた気がするからしばらく置いて、
「ピンでやりたいことあるから」と断った。


でも結局、加入した。
お酒の力は凄い。正直になっちゃう。


僕が加入したことにより、
「餅喰いシンデレラ」「アスカラ」
に変貌を遂げた。


「アスカラ」を組んでから、
成績はぐんぐんめきめきと伸びたが、
所属まではいけなかった。


本郷がもう一度養成所に行きたいと言って、
「アスカラ」は解散となった。


しかし、この話には続きがあり、
本郷はなんと、
人力舎の養成所2年目の面接で落ちたのだ。
すごい、養成所の面接なんて落ちないで有名なのに、何をやったんだ?凄すぎるぞ。


トリオのグループLINEにも既読をつけない。


彼は今何をしているのだろうか?
シケモクを回収するおばさんを見てふと思った。




気になって色んな同期に聞いたら
彼はまともな人の格好をしないで、
ウーバーイーツをしていたらしい。





再会するのはもうちょっと後でよさそうだ。

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