お子さまの矯正をお考えの保護者の皆様へ
色々な歯の悩みがあるかと思いますが、現在、日本人の子供の歯の治療に関して「歯並び」や「かみ合わせ」が気になる人は、全体の70%を占めています。そこで今回は子供の矯正についてご紹介します。
小児矯正とは
小児矯正とは、子供の時期に行う矯正治療のことです。
歯列矯正は大人になってからでも可能ですが、子供の時期から矯正を行うことによってより理想的な治療を行うことが出来る場合があります。
その理由として、大人はアゴや骨の成長が終わってしまっているので歯を動かすだけの矯正になってしまいますが、子供はまだ成長段階にあるので、ある程度アゴの成長をコントロールしながら矯正を行うことが出来るからです。大人の歯並びになるにつれて、歯を抜いたり、削ったりせずに歯並びやかみ合わせを理想的にすることは難しくなります。
大人の矯正に移行する可能性とメリット
子供の時期(歯の生え変わりの時期)は、骨の成長が起こるため、あごが発達しやすい時期です。
この時期は歯の移動だけではなく、あごの発達も視野に入れて治療(1期治療)を行います。
この時期での治療はあくまで将来的に歯並び・かみ合わせが有利な状態となるための治療です。
この時期での治療によって、すべての患者様が将来的に治療が100%必要なくなるわけではありません。
矯正治療の時期
●園児(乳歯列)の矯正治療
永久歯が1本もはえていないうちから、難しい装置で歯を動かすような治療はよほど特殊で難しいケースでない限り、通常は必要ないと考えています。ただし、簡単な装置で改善が見込まれる場合は治療を行うことがあります。
例えば、舌や唇などの悪習癖が原因で”受け口(反対咬合)”になっているケースでは、マウスピース型トレーナー装置(ムーシールド、プレオルソ、など)で悪習癖を除去することによって改善する可能性があります。
とはいえ、簡単な装置でも小さいお子様にとっては継続して使用するのは難しいもの。
お子様が嫌がるようであれば、この時期にどうしても治療しなければならないものではありません。
矯正治療の時期
こどもの矯正歯科治療は2段階に分かれています。
●1期治療
5、6歳頃~10、11歳頃の混合歯列期(乳歯と永久歯が生えている時期)に行う治療のことです。比較的簡単な装置を使用し、本格的な矯正歯科治療(2期治療)に入る前の準備的な矯正歯科治療とも言えます。
治療期間(目安)
1期治療では治療期間は1~2年前後、1~2か月に1回の通院となります。上下のあごのバランスを整えたり、歯列を広げて歯がならぶスペースを作ったり、前歯を部分的なワイヤーの矯正装置でならべたりすることが主な目的です。
1期治療の目的がある程度達成されたら、経過観察に切り替えます。この場合は3~6ヶ月に1回の通院になります。
2期治療では治療期間が2年前後、1か月に1回の通院となります。全体的なワイヤーの矯正装置やインビザラインを用いて永久歯の歯ならびやかみ合わせをしっかりと作り上げます。歯を抜いてならべるのもこの時期に行います。
2期治療できれいにならんだ歯ならびやかみ合わせを維持するのを保定(ほてい)と言います。取り外し式のリテーナーという装置を終日または夜間使用します。 保定期間は最低でも4年程度、治療前の歯並びの状態によっては、より長期間継続することがあります。
せっかくきれいにした歯ならびを長く維持していくためには矯正治療後のメンテナンスも重要です。
矯正のメリット
◆顔のバランスについて(これが一番大きなメリットだと思われます。)
上下のあご(お顔)のバランスを整えます。下顎前突(受け口)や上顎前突(出っ歯)の場合、歯の問題だけではなく、骨格的な問題が関係している場合が多くなります。その場合には、お顔つきにも影響が出てきます。1期治療では、骨格的に上下のあごのバランスが悪い場合でも、成長を促してバランスを整えることができます。成長期の治療ではこれが一番大きなメリットだと思われます。成長期のうちに上下のあごのバランスを整えておくことで、2期治療での抜歯が必要なくなったり、簡単になったり、将来的な外科矯正のリスクが少なくなったりするなど、たくさんのメリットがあります。
◆歯ならびについて
歯列を広げて、歯がならぶスペースを確保します。凸凹があっても歯列を横に広げることで、ある程度は自然と凸凹が改善します。
本来は、上の奥歯が下の奥歯よりも外側にあるのが正しい咬み合わせですが、片方、もしくは左右両方とも、奥歯のかみ合わせが上下逆になっている場合があります。
片側の場合、上下の中心もズレてあごの曲がりもともなうことが多いため、早期の改善が望まれます。
永久歯の生え変わりを良い方向へ促します。まだ生えていない永久歯が、変な位置に生えてきてしまうことはよくあります。(レントゲンを撮らないとわからない問題点です)変な方向に生えそうな永久歯は、乳歯をタイミングよく抜歯することで、良い位置に誘導することができる場合があります。
◆機能について
呼吸にも良い影響を与える場合がある。
骨格的に下あごが小さいこどもの場合、気道が狭くなっていることがあります。下あごを前方に成長させることで、気道が広がり、呼吸状態がよくなることもあります。
また、急速拡大装置も鼻腔の中を広げる効果があると報告されており、鼻の通りの改善が期待できます。
(※いずれも個人差があります。)
発音にも良い影響を与える場合がある。
特に開咬(前歯が咬んでいなくて隙間が開いている)のこどもで顕著な場合が多いです。前歯が開いているため、サ行などが明瞭に発音できず、滑舌が悪い場合があります。
かみ合わせの改善にともなって、発音の改善も期待できます。
矯正治療のデメリット
◆治療期間が長くなってしまう
◆取り外し式の装置ではなくなってしまう
◆抜歯しなくてはいけなくなる可能性が上がる
◆費用が高くなる
といったデメリットが出てきてしまいます。
このようなデメリットから、特に思春期のお子様にとっては、「寝ているときだけの装置」で治療できるのは大きなメリットではないでしょうか?
矯正治療で知っておいてほしいこと
原因によって矯正の治療内容は異なります。
お子様が5~6歳になると、下の前歯から永久歯がはえ始めます。永久歯がなかなかはえてこなかったり、ゆがんではえてきたりするとご両親はとても心配されると思います。
お子様の矯正治療では今見えている歯のことだけではなく、今後はえてくる歯の状態や将来的に永久歯がはえそろった時点の予測も含めて、効率的・計画的な治療方針を立てる必要があります。
また、子どものうちに早めに改善しておきたいのは、歯ならびを悪くする原因となる悪習癖です。
悪習癖の代表的なものとして、指しゃぶり、口呼吸、舌癖、吸唇・咬唇癖などがあります。これらの悪習癖は、成長過程で歯ならびや顎骨の形態に悪影響をおよぼします。
悪習癖を改善することは、矯正治療を行う上で治療をスムーズに進め、治療後のきれいになった状態を維持するためにも重要なポイントです。
お子様の矯正治療では、治療の途中に永久歯がはえそろうのを待つ期間や保定中の観察期間を含めると、数年にわたって治療を行うことになります。 “早く治療を始めれば早く終わる”、あるいは“早く治療を始めれば将来歯を抜かずに済む”というものでもありません。
必要以上に早く治療を始めても、結果的に治療期間がより長くなってしまうことさえあります。
健全な永久歯列を育成することが治療のゴールですので、本当の意味で“治療終了“と言えるまでにはそれなりに長い期間が必要です。
ゴールに到達するまでに長い道のりとなるからこそ、ご本人の状態に合わせてできる限り無理・無駄のない治療を計画することが大切です。
また矯正治療には患者様自身の治療協力が必要不可欠です。
お子様が装置を嫌がって使ってくれないような場合、無理に治療をさせても十分な治療効果が得られないこともあります。また、歯磨きなどの基本的な生活習慣がうまくできていないと判断される場合は、矯正治療中に虫歯や歯肉炎などのトラブルが発生しやすいため、矯正治療をお勧めできません。
“早く治療しなければ手遅れになる“わけではなく、ご本人が成長して”歯ならびを治したい!”という気持ちが出てきてからでも矯正治療は可能です。
(※開始時期によって治療内容が変わってくる可能性はあります。)
転勤・転居のため長期間にわたる継続的な治療が難しい場合はあらかじめご相談ください。
生活スタイルに合わせて治療開始時期をコントロールすることも可能です。
当院では、お子様の状態に合わせて、無理・無駄のない治療を行うことが大切だと考えております。大人から見た「子どもの矯正」とはどのようなものなのでしょうか。いざ矯正となると、さまざまな疑問や悩みが生じてきます。歯を動かすというお子さんにとって大きな負担となる治療であること、また期間も長く高額な出費となることから、是非後悔のない医院選びをしていただきたいと思います。