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梟の杖1
商店街の道沿いにある老舗の骨董品屋には、中々そこらでは見ることのできない物が置いてある。見た目の割には軽い大木のようなデザインの扉を開けて、店に入ると、ホコリっぽい匂いと鼻の奥を乾燥させるような煙たさに出会う。お香の香りがする。中は広くできていて、ウッドデッキのようになっている2階もある。
レジに座る無愛想なおじさんが迎えてくれる。
「いらっしゃい。」
「おっちゃん。新しい品物入ってる?」
「おう。」 といつものリズムで話す。
骨董品屋の割には商品の入れ替わりがよく起こる。
自分の決まった道筋で店内を歩いて、2階に登る。
登るとすぐにいたレギュラーメンバーの仮面ワンダーに挨拶。
「元気してる〜?今日は暑いね。」
「。。。」
等身大のスーパー戦隊のフィギュアは決めポーズをしたまま、喋るはずもない。
「ん?なにこれ、」
新顔だ。でも何か異様な雰囲気を放っている。
「なにこれ、キリン…?、シカ?。ん〜ラクダ?」
仮面ワンダーの人形の隣に、同じくらいの高さの何かの動物の木彫りが置いてある。
胴体には引き出しのようなものがついていた。
ゴトゴト言いながら開けてみると、
梅干しのように多くの溝が掘られている木簡がでてきた。
「木の板だ。デコボコしてる。なんか、かっこいいな。おっちゃん!これ貰っていい〜?」
「いまいく。」
ドッドッドッと階段が足を受け止める音がする。
「この中に入ってたんだ、なんか不思議な模様がついてる。かっこいいから欲しいな。」
「どうせ売れないからな、いいぞ。ただ、大切にするんだぞ。できないならまた戻しにくるんだ。」
「おっちゃんありがとう!大切にするよ〜」
「そうか。この調子で行くと家がうちの2号店になりそうだな。」
「おっちゃんも面白い事言うようになったね〜」
鼻で笑っておじさんはまたレジに戻った。
「これなんなんだろう?」
木の板の重みはやけに手に残った。
街灯もない、田んぼだらけの田舎。
闇に溶け込むような黒い車が風を切り、古民家の前に止まる。力強く締まるドアの音が辺りに響いた。
黒いスーツを着た男達がぞろぞろと中に入っていく。
「全てひっくり返すまで見ろ。隈なく。」
「こっちの部屋は全部みたぞ!」
「"麒麟の像"なんてものはどこにもない!」
「早く!早くしないと…。」
「何としてでもみつけろ。」
男達はあらゆるものを投げ飛ばし、部屋を荒らす。
その家には1年ぶりの灯りが灯っていた。