韓国の赤ちゃんポスト「ベイビーボックス」創設者との出会い
たまたま来日していた、韓国の赤ちゃんポスト「ベイビーボックス」創設者のイ・ジョンラク牧師にお会いしてきました。
ベイビーボックスは、是枝監督の「ベイビーブローカー」のモデルにもなりました。
【イ牧師の挑戦】
ジュサラン(主愛)共同体教会を立ち上げたイ牧師は、2007年4月の寒い日の夜中に、魚臭い段ボール箱の中に入ったダウン症の赤ちゃんが、教会の前で捨てられていたことに気づきました。
その体験をキッカケに、イ牧師は2009年にベイビーボックスを開設。チェコで運営されていたベイビーボックスをモデルにしたといいます。
ベイビーボックスを始めてから、すぐに相談事業も始めました。本当は自分で育てたい場合は、何とか母子で生きていく道がないか、一緒に考えます。相談後、おむつや食品・生活用品を3年に渡って届けたり(この辺り、僕たちの「こども宅食」とそっくり)、学費を援助することもあります。
ベイビーボックス運営チームは、相談員4人、保育士3人、センター長1人、事務員1人の計9人で24時間対応。相談は年間2000件受けているそうで、相談手法は電話とカカオトーク(韓国版LINE)の合わせ技で、件数はカカオトーク経由の方が多いようです。
(この辺は、僕たちの赤ちゃん縁組相談とそっくりです)
運営経費は12億ウォン(1億2000万円)で、全て寄付で賄っているそう。障害児の児童養護施設的な施設も運営しているので、そちらで国からの補助が取れないのか聞いてみましたが、ベイビーボックスも障害児児童養護施設も、どちらも100%寄付で成り立っているとのことでした。
【批判と結果】
政府はずっと冷たかった、と。世論的にも「捨て子を助長する」という批判があったことも理由の一つ。しかし、今目の前の火事は消さないといけないし、とにかく動かないといけない。誰かがやらないといけないと思った。それが自分たちだった、と。
「赤ちゃん遺棄を助長する」と批判されたベイビーボックスですが、当初は全国での遺棄児童に占める割合は2%でしたが、2016年には84%にまで増えました。
一方で、遺棄の数は2010年対比で16年は73件増えていますが、ベビーボックスへのお預けは219件増です。
つまり、遺棄になりそうなケースが、ベイビーボックスに「吸収」されているように見えます。ということは、遺棄で亡くなってしまうよりも、ベイビーボックスに置かれて命が助かって養子縁組等で新しい家族と出会う方がよっぽど良い、ということになります。
【我々がすべきこと】
イ牧師は最後に我々に
「あなたが拡声器となって、人々の嘆きを世に広げなさい」
と仰りました。
日本もまた、2週間に1人、赤ちゃんが遺棄されて亡くなっている国です。
我々、フローレンスも、赤ちゃん縁組事業を行って、遺棄される前に相談に乗り、特別養子縁組に繋げて赤ちゃんの命を救ってきましたが、遺棄の数を減らすことはできていません。
もっと広く世の中に社会的インフラを広げ、遺棄を撲滅できるためにはどうしたら良いのか。
イ牧師に言われた言葉を思い出しながら、必死になって考えなければ、と大きな宿題を課せられた気分になりました。
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