胡桃堂書店、あるいはポスト資本主義の静かな実践
息子の学校見学のついでに、国分寺の胡桃堂喫茶店。
ドアを開けた瞬間に、店長の影山さんと鉢合わせに。
影山さんは、フローレンス立ち上げの時にアドバイスをもらったくらい古い友人。元マッキンゼーのゴリゴリのコンサルタントなのに、喫茶店を立ち上げて文化を創り出そうとする、風変わりで静かなチャレンジャー。
影山さんは最初に西国分寺でクルミドコーヒーを立ち上げ、その後、胡桃堂喫茶店を国分寺に立ち上げる。そして古い社員寮をリノベして、「ぶんじ寮」というコレクティブハウス的な取り組みも始めた。3万8000円という破格の値段で住める代わりに、水回りの修繕とか掃除とか草抜きとかを入居者たちでやることで運営がなされているそう。
さらにはクルミド出版っていう出版社もやっていて、そこで出した本を胡桃堂書店で売ったりしている。
そんなの成り立つの?と思わず聞いちゃったのだけど、カフェのスタッフが出版社のスタッフもやることで人件費がシェアできて、かつ書店で直売できることで小ロットでも採算が取れる仕組みとのこと。
「大切なことだけど、たくさんは売れない」ことも、この方式だったら世の中に本という形で出せる。
感動した。影山さんはポスト資本主義を実践している。カフェやまちの寮や本づくりを通して。それは資本主義の否定ではなく、オルタナティブな、もうちょっと優しくて、手触りのする資本主義の形だ。なんてクールなんだろう。事業でありながら、文化創造でもある。
フローレンスでもいつか出版社やりたいなぁ。絶対バカ売れしないけど、絶対社会に残した方が良い言葉や風景や感情を、僕たちはたくさん見てきている。SNSの海に浮かんでは消えていく言葉も嫌いじゃないけど、人生という旅に抱えていく言葉も愛おしい。
あなたも国分寺という街を訪れたら、忘れずにクルミドコーヒーか胡桃堂喫茶店に行ってタルトとコーヒーのマリアージュを味わいながら、「もう一つの」資本主義について想いを巡らしてほしい。