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樹海ミステリー 生を紡ぐ森と生を終える者 第七話

【富士の樹海と宗教施設】


“人跡未踏の地”というのは、人の好奇心を刺激しさまざまな想像をさせる。

富士の樹海が深く広大な森のため、その奥地には未知の何かがあるのでは?と私も昔から
さまざまな想像をふくらませていた。

「樹海の奥には謎の宗教施設がある?」

この樹海にまつわる都市伝説の実態はどのようなものなのか?

なかには事実と異なる形で伝わってしまい、都市伝説となってしまったこともある。

富士の樹海の都市伝説が今日もまた解明される。

【樹海の奥深くにある宗教施設】


前回前々回と富士の樹海の都市伝説について話してきた。

今回もまたその都市伝説の一つ

「樹海の奥には謎の宗教施設がある?」

こちらについて話していこう。


皆さんはこんな言葉を聞いたことはあるだろうか?

「樹海の坊主を侮るな!」

自殺の教科書と言われている『完全自殺マニュアル』(1993年:太田出版刊)の目次の項目のひとつだ。

この言葉を知っている人は、富士の樹海マニアとしてある程度の知識を持つ者だろう。


実際に樹海の奥深くには「乾徳けんとく道場」という宗教施設が存在している。

現在は廃墟になってしまったが、樹海の都市伝説である「富士の樹海の奥には謎の宗教施設がある?」というのは事実である。

多くのYoutuberや探索家が取材をしているので、調べれば多くの情報が得られるはずだ。


乾徳道場


「乾徳道場」は精進湖の南東にある「富士五湖消防本部 河口湖消防署 上九一色分遣所」裏の道から入る「精進口登山道」を進んだ先にある。

場所がわかりにくいので、精進湖のほとりにある老舗の飲食店「レストランニューあかいけ」を目印にするとわかりやすいだろう。


【標石と祠】


精進湖登山道を進んでいく道はそこまで険しくはない。

登山者向けにある程度整備されているため、登山に慣れていない人でも、そうは苦にならない道だ。


精進湖登山道をしばらく歩いていくと、分岐点に標石が立っている。左が廃道で右が今でも利用されている登山道だ。

標石には、「しやうじ、なるさわ、もとす」と書かれている。


分岐点の標石


現在の地図はおろか、昭和以前の地図にも載っていないため、いつから存在しているかはわからないが、相当古いものだ。

文字の消えかけている標石から歴史の深さが感じられる。


その標石の右側をさらに進んでいくと、右手に祠が見えてくる。

祠の中を覗くとお金やお酒の瓶が供えられている。

こちらもかなり古いものだが、いまだにお参りをする者がいるのだろう。


精進湖登山道にある祠


「富士五湖消防本部 河口湖消防署 上九一色分遣所」からスタートして、時間にして40分〜50分ほどだろうか?
登山道からここまでの距離はかなりのものだ。

下の写真の分岐点を左に行った先が「乾徳道場」だ。


分岐点と乾徳道場入口に立つ看板跡


【乾徳道場】


ここに住んでいた人物は、元々はある宗教の有名な僧侶だったらしい。


 
しかし、信者からお金を巻き上げるような宗教の方針や、人間関係に嫌気がさして富士の樹海の奥深くに住み始めたという。
この場所で修行をしながら「神の国」を理解するための布教活動をしていた。

今から数十年前、まだ法律が行き届いていない頃に、この道場兼夫婦の住居を無断に建ててしまったので、役所が手を焼いていたという話も聞いた。

廃墟になった今、夫婦がどこに行ってしまったのかはわからない。

現在も建物だけが残り、廃墟マニアや樹海マニア、心霊系YouTuberが時々訪れる樹海の名物スポットになっている。

建物の一部が壊されてしまい、見た目もかなり風化してきたため、いつ倒壊してもおかしくない状態だ。


住居へと続く道と壊された施設


電気は自家発電で、ガスは通っていなかったようだ。

建物裏には土埃がつもった釜戸が、建物の外には仮設トイレがある。

携帯電話や車を所有していたようでもあったので、金銭的にも不自由はなかったのだろう。

この建物も信者からの寄付金でまかなっていたという話だ。


建物裏手の釜戸、仮設トイレ


完全自殺マニュアルには「樹海の坊主を侮るな!」と書かれていたが……
 
ここの道場主が自殺者を見かけても特に引き止めたりはせず、基本的にはその人の自由にさせていたという。

私は乾徳道場付近で自殺遺体を見つけたことはないが、遺留品は何度か確認している。

空き家となってしまった今、この乾徳道場跡地で何泊かしてから自殺におよぶ者がいるという情報もあるので、この付近で自殺があるのは間違いないと思われる。


乾徳道場付近に落ちていた遺留品


【精進湖御穴日洞】


乾徳道場の周囲には洞窟や墓、石碑などがある。

その中でも「精進御穴日洞」と呼ばれる洞窟は有名で、この洞窟では実名は出せないが、ある宗派の僧侶が50日間にもわたる間修行をし、即身仏になったという言い伝えが残っている。

乾徳道場も、この僧侶を守るために建てられたものであると言われており、洞窟の周りには供え物の日本酒の瓶などが置かれていた。

乾徳道場とは関係ないが「精進御穴日洞」を開山したのは誓行徳山せいぎょうとくざんであると言われており、そのあとを継ぎ青木ヶ原の富士信仰を維持・発展させたのが二代賢鏡の徳山思慕であった。

「精進御穴日洞」は熔岩洞で、その長さは延長160.6メートルもある。

奥まで入ることはできなかったが、入口の見た目からは160.6メートルもあるとはとても想像できなかった。


精進御穴日洞、墓石


【幽霊探知機“わらしちゃん”】


今回は樹海探索の際にいつも持ち歩いている、「わらしちゃん」という愛称の幽霊探知機を洞窟入口で起動させてみた。

この「わらしちゃん」は霊界コミュニケーションロボットと言われており、悪霊や精霊を感知すると赤や緑にランプが光り、セリフで知らせてくれる。

心霊系YouTuberを中心に愛用者が多く、その精度は高いと評判である。


「よくないヤツがきた」「ここにいるよ」「誰かが通っていったよ」「怖い顔している」「振り向かないほうがいいよ」

など、とにかくセリフのバリエーションが多い。

「乾徳道場」内ではどのようなセリフが出るのか、さっそく起動させてみると

「エンジェル君が近くにきているみたい」

と話し、安全を知らせる緑色にランプが点灯した。

場所を変えて何回か試してみたが、全て同じセリフだったため、危険は少ない場所なのかもしれない。

神聖な場所だけあって、このあたりは守られているのだろうか?


わらしちゃん


富士の樹海にはいくつもの都市伝説が存在している。

今回はその中から

「富士の樹海の奥には謎の宗教施設がある?」


について書いた。

これは都市伝説というよりも事実が異なる形で広まってしまったように思える。

この他にも似たような都市伝説で

「樹海の奥深くには自殺を諦めた人たちが集まって暮らしている集落がある?」というものがあるが、こちらについても精進湖近くにある、「精進湖集落(上空から見ると真四角形をしている)」のことではないか?と言われている。

(※「精進湖集落」はまったく普通の民宿村である)


人跡未踏の地というのは、人の好奇心を刺激しさまざまな想像をさせる。


富士山自体が言わずと知れた、日本を代表するパワースポットのため、周辺にはこの「乾徳道場」以外にもかなりの数の宗教施設があるのも事実だ。

富士山が「呪物」と言われている話もある。


ある都市伝説家と対談した際にも、富士の樹海には何らかの秘密が隠されているという話が出てきた。

それらの話が真実かどうかはわからない。


次回は樹海にまつわる陰謀論や秘密について話していきたい。

ネットにない都市伝説について少しずつ紐解いていこう。


次回につづく

【電話やSNSによる相談窓口】
・# いのちSOS(電話相談/毎日24時間受付、WEB相談/毎日8時~22時まで受付) TEL. 0120-061-338 https://www.lifelink.or.jp/inochisos/
・生きづらびっと(SNS相談/毎日8時~22時まで受付) https://yorisoi-chat.jp/

厚生労働省「まもろうよ こころ」では上記以外にも悩みや年代によって選べる様々な相談窓口が紹介されています。
・まもろうよ こころ https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/

文・写真:ココペリコ

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