『グランジュ・ルノルマン・カード入門 神話と錬金術の占い』刊行記念 R.M.Bijou先生・鏡リュウジ先生トークショー③
組み合わせを覚えなくても、本を頼りに絵を読んでいってほしい
鏡 1枚のカードに複数絵があって、一番下段の真ん中に花があって、左右の絵がユニークなシーンがあるんですけど、この組み合わせから来る意味はビジューさんの考案なんですか?
B いえいえ、これはブルトーさんオリジナルのもので、私の意思はここには全く入っていません。あくまでも5冊の本を引っ張り出して日本でわかりやすく使えるようにまとめただけです。
鏡 なるほど。メインのイラストとその他のイラストとの整合性とかも謎めいていて……。
B そうですね。カテゴリごとのルールを作りかったんだろうなと思うんです。たとえばトロイア戦争なんかはちゃんとトロイアの話が書かれていて、順番はランダムですが続き物になっているんですけど、それ以外の【予想外】というシリーズは色々な神話がランダムに19枚分あります。AKiさんにイラストをお願いした際、これなんかは、エジプト王メネスが描かれてるので、もうちょっとエジプトっぽくしてくださいと要望を出していて。下左右には牢獄に囚われている人(左下)と枢機卿とお話ししている方(右下)が描かれています。こうした、犯罪や枢機卿が登場することからも、このカード自体が法にまつわるものなのがわかります。ここから、法律家や弁護士を表しているので、逮捕されないように気をつけて、という意味がつけられています。この当時のフランスでは牢獄自体が吊るせるようになっているものもあって、そのまま持ち上げると水責めできるんですよね。
鏡 こっわ……(笑)。
B あと惑星マークが描かれているカードが出たら、その惑星をお守りにしてください、と書かれていました。タリスマンですね。惑星の力を借りたい時などに使って頂きたいです。
実は拙著に記した以外にもたくさんのスプレッドがあって。当時は良縁というのが一番大事なことだったので、結婚する時に相手の両親が自分のことをどう思っているかとか、自分の両親はどう思っているかとか、相手はどう思っているかっていうのを全部いっぺんに占える方法などもあります。これは現代でも使えそうですけど、まずはシンプルなものを最初に覚えていただいて、慣れ親しんでいただければと思っています。
鏡 これだけでもね、組み合わせとか覚えてマスターするのは大変そう。
B 覚えなくていいんです。もうこれは本を見ながらでもいいんじゃないかなと思っていて。あとは全体の意味さえわかっていれば、絵を見て、これはこんなことが書かれていたな、とか、こんな人だなっていうような理解をしていただければ、あとは自ずとわかるかと。なので神話のパートをしっかり書いたんです。
メインのイラストついてもキャラクターがわかっていて、この人はこんな風に考えるんじゃないか、この神様はこんな風に動くだろう、と想像してもらえるとそんなに的外れな占断にならないと思うんですよ。
鏡 アフォリズムに近いんでしょうか? 占星術でいうと偽プトレマイオスの100の格言とか。アフォリズムって、そのままだとよくわからないんだけど、基本的な原理を押さえていたらメッセージになるというかんじ。
B そうですね、それぞれに格言めいたことが書かれているのでだいぶ近いと思います。
18~19世紀のフランスにおいて高価だった「グランジュ」の本や占い
B (画像を見せながら)これが当時のポスターなんです。グランジュの。そこに50リーブルと40スーって記載されてますよね。リーブルって書かれていますけど、1795年にはフランに変わっています。なので、本当はフランなはずなのにリーブル表記。まだ一般に馴染んでいなかったんでしょうね。バルザック(オノレ・ド・バルザック)の本で当時のフランスの貨幣価値がわかるので、あの辺から推測すると、1フランが1.3リーブルくらい。それで、1フランがどのくらいの価値だったかというと、大体3000~4000円。これを50リーブルに直すと、3000円で換算すると15万円だし、4000円で換算すると20万円……(笑)。
鏡 すごーい(笑)。
B そうなんですよ、結構お高いですよね(笑)。
鏡 それを買えるってことは相当な……?
B やっぱり、マドモワゼル・ルノルマンの顧客はお忍びでサロンに通えるぐらいなので、みんなブルジョワジーなんです。貴族はもちろん、大店のお商人(?)などがいらしてたので、当時の占い鑑定料金もとても高いんですよね。コラムに書かせていただいたんですが(76ページ)、西洋占星術を使ったフルセッションは80万、コーヒー占いが約25万、で、カードを使ったものも同じくらいしていたんだと思います。で、西洋占星術といってもちゃんとホロスコープを読めていたのかどうかは……。要は主にシビュラを使っていたと思うんです。神託的に、いわゆる今でいう霊感占いだったんじゃないでしょうか。それに通っている人たちならば、20万円のカードデッキはなんてことないと思いますよ(笑)。すごいなとは思いますけど。
じっくり楽しんでほしい、こだわり満載のカードのイラスト
B (次の画像を見ながら)今回はカードの裏面もすごくこだわらせてもらって。私、あんまり気に入ってしまって自分のiPadとiPhoneのケースにしているくらいです。すごくたくさん、色々なモチーフが描かれていて。ここに元のグランジュのケイローン先生が描かれているんです。(図を見ながら)この部分にいるんですけど、これをカードの裏面にしてしまうと……ここなんですよ、ここの端っこ。だから、これは2枚重ねないとこうならないんです。
鏡 あー。
B (笑)。こっちにお尻があって。
鏡 これは描き起こしてもらったんですか?
B そうです。細かいでしょう? このクジャクも雌雄が違うんです。こっちがオスでこっちがメス。
鏡 ホントだ。
B ここにハデスを表す黒い馬がいて、そのちょっと上のコウモリでペルセフォネとか(笑)。すごい細かく描いてもらっています。よく見るとアシンメトリーになっているところが多くて。だからぜひ、虫眼鏡を使って細かく観てもらいたいと思います。『ウォーリーを探せ』みたいな感じで楽しんでもらえたら新しい発見があるはずです。神々ってそれぞれ象徴があるので、それを調べてから探していただければより楽しいんじゃないかなって。本にはほんの少ししか書けなかったので。
AKiさんのイラスト繋がりの話をしますが、私、ルイ15世がホントに好きで(笑)。観てください、この美しい男性(笑)。
鏡 ちょっとビジューさんに似てない?
B え(笑)? とんでもない! 恐れ多い! 似てないです(笑)! でももう、本当に好きで。私のグランジュが56枚になったのは、私のわがままからです(笑)。本来グランジュの人物カードは男女1枚ずつなので、フルデッキで54枚なんですけど、AKiさんにわがまま言ってどうしても15世を描いて欲しい……と。男女2枚ずつですとそれぞれ目線を合わせても占えますしね。
鏡 なんでもこだわり始めると止まらなくなっちゃいますね。僕もグランジュ・ルノルマン、使ったことがないので、もしよかったらデモンストレーションをしていただければ。
(中略 ※会場参加者を占う)
鏡 3枚しか引いていないのにこれだけの話ができるんですね。これがグランジュの醍醐味なのかなと。
B そうですね。だから、1枚とか3枚だけでも、鑑定時間が30分あったとしてもみっちり話すことになります。本当に使えるようになると面白いです。あと、こういっちゃなんですけど、ちゃんと当たります!
鏡 (笑)。
B 1枚引きだけでもわかると思うんですが、結構シビアに当ててくるんで。そのシビアさ加減に耐えて、我慢していただければ仲良くなれるはずです。
鏡 (笑)。では本日はありがとうございました。
B ありがとうございました!
登壇者プロフィール
R.M.Bijou(ルージュ・メイジ・ビジュー)
占い師、グランジュ・ルノルマン・カード研究家。幼少期に父から贈られたタロットカードをきっかけに占いを始める。音楽大学在学中よりWEBデザイナー、歌手、占い師を兼業していたが、2017年、占い師に一本化。グランジュ・ルノルマン、タロット、西洋占星術、ルーンなどに加え、生来の第六感を駆使して多方面からアプローチする鑑定を行い、占術の講座も開催。フランス語の翻訳も手がける。座右の銘は「無知の知」。
鏡リュウジ(かがみ・りゅうじ)
占星術研究家、翻訳家、京都文教大学客員教授、東京アストロロジースクール主幹。10代のころより占星術や秘教などに関連してさまざまなメディアで活躍、30年以上にわたって圧倒的支持を受ける。『秘密のルノルマン・オラクル』(夜間飛行)など著書多数。責任編集にユリイカ増刊『タロットの世界』がある。
『グランジュ・ルノルマン・カード入門: 神話と錬金術の占い』
R.M.Bijou 著、鏡リュウジ 解説、AKi xenubilum イラスト
2023年10月24日発売
A5変形 344ページ
ISBN:9784909646705、定価 4,950円(税込)
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