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樹海ミステリー 生を紡ぐ森と生を終える者 第十二話

【樹海の奥深くに存在するという「樹海村」。

なぜ、霊能者は樹海を嫌うのか】

日本を代表する心霊スポットでもある「富士の樹海」
樹海の奥深くには、自殺志願者によって作られた集落が存在するという噂が囁かれている。
映画のモデルにもなった精進湖村しょうじこむらと都市伝説の関係はどのようなものか?

霊感の強い者は樹海に近づくことすらできないという。
国道139号線を境に次元が変わり、死者の世界と人間界をわけている……
霊能者から見た富士の樹海とはどのような場所なのか?
樹海の秘密が少しずつ解き明かされていく。

【自殺志願者の村】

富士の樹海の奥深くには、自殺を思いとどまった者や死にきれなかった者たちの「自殺志願者の村」が存在する。

富士の樹海の都市伝説の一つだ。 

もちろん、そのような村は存在しない。

しかし、2ちゃんねるを中心に一時期話題となった村がある。
映画「樹海村」のモデルになったといわれている、富士河口湖町にある「精進湖集落」だ。

この村はごく普通の民宿村であり、世間で囁かれている怖い噂とは無関係である。

 樹海の真ん中にポツンと存在しており、村全体が不自然に真四角な形をしているため、「樹海村」という印象を世間に与えてしまったのだろう。 

精進湖集落は、昭和41年9月に発生した台風26号で被害を受け、西湖の近くから現在の地への移動を余儀なくされた。
森を急いで開拓した結果、不自然な真四角になってしまったという。

集落には民宿が何軒もあり、多くの学生や登山客に愛されている。

樹海YouTuberとして有名な『樹海放送』のマサヲさんもこの集落に住んでおり、「丸慶」という民宿の若旦那を務めている。

丸慶をはじめ、精進湖集落の民宿はどこも料理が美味しくとても過ごしやすい。
四方を樹海に囲まれているため、自然を満喫するにも最高の場所である。
興味のある方は利用してみるといいだろう。 

「コンパスが狂う」「お経が聞こえてくる」など、富士の樹海にまつわる都市伝説は多い。

 これらについては以前の記事にも書いたが、そもそもなぜ樹海にまつわる都市伝説はこんなにも多いのだろうか?

「学校の七不思議」や「異世界に行く方法」など、人は目に見えないものに恐怖を感じ、真相を確かめられないものに魅力を感じる。

 今でこそ樹海の情報は多くなってきたが、ネットやYouTuberの活躍が少ない頃は今ほどの情報は出てこなかった。樹海は広大な森で、入り込んだら出てこられない……
自殺者も多く、成仏できない霊が彷徨っている……

特定の噂に尾ひれが付き広まったことで、現在のような都市伝説に仕上がったのだろう。

【心霊スポット】

都市伝説と並んで有名なのは、やはり「心霊スポット」としての一面だ。

おびただしい数の霊がおり、霊感の強い者は近づくことすらできない。

 テレビ番組の収録でも、撮った写真すべてにはっきりと霊が写ってしまい、依頼していた霊能者も手におえず逃げてしまったという話もあるほどだ。

霊感の強い者から見たらどれほど凄まじい場所なのだろうか?

【次元の違う場所】

樹海や廃墟は、普通の場所に比べて霊が多いのは間違いない。 

私はそのような場所に行く機会がとても多いので、定期的に親しい霊能者に除霊を頼んでいる。

 以下、その霊能者「龍輝」氏に聞いた話も盛り込んでみたい。

霊能者:龍輝氏

東京方面から樹海の入口である鳴沢風穴に向かうには、中央自動車道の河口湖ICを下りて、国道139号線を富士宮、本栖方面へと進んでいく。

 道が混んでいなければ河口湖ICから20~30分程で鳴沢氷穴、鳴沢風穴の看板が見えてくるだろう。

車から見える両サイドの景色は、街並から樹海へと徐々に姿を変え、この国道139号線と鳴沢風穴の入口を境に次元が変わる。

 道路を隔てた先にある樹海は、霊能者から見ると人間界ではなく、死者の世界だという。

この世に生きられなかった者たちの感情が樹海をとりまいており、霊感の強い者が近づくと、おびただしい数の霊が「成仏させてくれ」と頼ってくるという。

 “悲しい”と“寂しい”しかない。

霊能者や霊感の強い者が樹海に近づきたくない一番の理由だ。

樹海全体が悲しさや寂しさで溢れており、亡くなった者の気持ちが伝わってくる。

 誰しも好んで命を絶つわけではない。
その多くは、病に侵されていたり、社会から疎外されていたり、大きな借金を抱えていたり……。

 理由はそれぞれだが、共通しているのは“孤独”ということだ。

 誰にもいえない悩みを抱えている者は悩み、いつしか孤独の道を突き進んでいく。

樹海を死に場所に選ぶのは、誰にも知られずにひっそりを死をむかえるためだという。

 自らの死をもって、抱えている問題を解決する。

死後、その孤独な念は増幅していく。

 “恨み”や“怨念”よりも“悲しさ”や“寂しさ”が多くなる。

 樹海をとりまいているという感情がそれを証明しているように思える。


腐敗する遺体の臭いに引き寄せられ、魑魅魍魎ちみもうりょうや餓鬼も集まってくる。

 餓鬼は人間の遺体を食べるという。

本来ならば、自殺遺体はウジ虫やねずみなどに食べられ、やがて分解され骨になる。

しかし、霊感の強い者には、遺体に群がり喰らいつく餓鬼の姿が見えるそうだ。

餓鬼に喰われて徐々に白骨化する遺体。

霊が見える者と見えない者とでは、白骨化する過程までもが全く違うのだ。

首吊り遺体の近くには餓鬼がいるから近づくなといわれた。

盆の時期になると、海から大勢の白装束の者たちが砂浜に向かって歩いてくるという話を聞いたことがあるだろうか?

 海で亡くなった者たちが一斉に家に帰っていくのだ。

樹海で命を絶った者たちには帰る場所がない。

樹海でも盆の時期になると、樹海の入口や無縁仏の納骨堂に花やビール、菓子などが供えられる。

遺族や寺の関係者が持ってきたものだろう。

樹海を彷徨う霊の多くは白装束は着ておらず、死んだときの格好をしている。地縛霊といわれるものだろう。

樹海入口(写真:上)と無縁仏の納骨堂に添えられた花束(写真:下)

“そっとしておいてあげなさい”

 その霊たちは、自殺志願者を迷わせて死に誘うこともあるが、基本的には静かにそこにいたいだけなのだ。

 あなたが一人で家にいるときに、見知らぬ者が家の中に入ってきたらどうだろうか?

「人の家に勝手に入ってくるな!」と怒りや不快の感情を抱くだろう。

樹海にいる霊も同じだという。

自分の世界に踏み込んでくれば追い出そうとするが、普段から人を陥れようとしているわけではない。

「樹海に入るときは、人の家にあがるような気持ちで、感謝の念を持って手を合わせてから入りなさい」

礼儀が必要なのは人間の世界だけではない。

前回の記事で樹海の恐怖体験を書いたが、樹海にいるすべての霊が悪霊というわけではない。

霊能者に聞いた樹海の霊は、私が想像しているよりも穏やかなものだった。

ある樹海探索者から、真夜中の樹海で女性3人組の笑い声が響いていたという話を聞いたことがある。

人が入れないような樹海の奥深く、それも深夜の2:00ぐらいだ。

3人で自殺をするということは、過去の経験からみても考えられない。

樹海で命を絶った者たちが、霊になり一緒に過ごしているのだろうか?

【樹海村の存在】

富士の樹海の奥深くには、自殺を思いとどまった者や死にきれなかった者たちの「自殺志願者の村」がある……そのような村は存在しない。

孤独の末に選んだ「死の選択」は褒められたものではない。

どんなに話を美化しても、自殺という行為は認められるものではない。

しかし、死んだ者の魂によって作られた「樹海村」がもし存在するのなら。

ひとり孤独に亡くなった者たちの魂が集まる“心の拠りどころ”になっていてほしい。

心の底からそう願っている。

【電話やSNSによる相談窓口】
・# いのちSOS(電話相談/毎日24時間受付、WEB相談/毎日8時~22時まで受付) TEL. 0120-061-338 https://www.lifelink.or.jp/inochisos/
・生きづらびっと(SNS相談/毎日8時~22時まで受付) https://yorisoi-chat.jp/

厚生労働省「まもろうよ こころ」では上記以外にも悩みや年代によって選べる様々な相談窓口が紹介されています。
・まもろうよ こころ https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/

文・写真:ココペリコ

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