樹海ミステリー 生を紡ぐ森と生を終える者 第十一話
【遺体発見後、様々な霊障が私を襲う】
【樹海の帰り道に起きた霊障】
思い返すと違和感はあった。
高速の入口でETCバーが開かなかったのだ。
後に検査してみたが、車載のETCは故障していなかった。
なんらかのエラーが起きたのだろう。
自殺遺体を見つけたあと、私は自分に都合のいい解釈をしていた。
進むはずだった方向と逆から死臭がしてきたことは、遺体の主が見つけてもらいたかった、そう思っていた。
実際は違ったのだ……。
樹海からの帰り道、霊能者から電話があったことは前回書いた。
電話越しに聞こえる霊能者の声はかなり緊張していた。
「なにか見ただろう?」
この問いに対して「男性の遺体を見つけた。しかし、酒と線香を供えて供養をした」と答えた。
そもそも、私には霊が見えない。
電話の向こうの霊能者は、私の周りに起きている異変を察知している。
同時に、同乗している霊は、私が霊能者と繋がっていることに気付いたようだ。
話の通じない私ではなく、霊は霊能者と直接コンタクトを取り始めた。
「こいつら誰だ、何しにきた!?
人のことを笑いものにしやがって!
今すぐ殺してやろうか!?」
遺体を見つけた私たちに強い怨念と怒りを露わにして、霊能者に激しい口調で捲し立てたという。
「成仏させてやる」という霊能者に対して
「余計なことはしなくていい。
自殺をしたらあの世へいけないことは最初からわかっていた。
そんなことは理解して自殺をした。
二度と俺に近づくな!」
そういうとどこかへ消えてしまったという。
「撮影した動画と写真はすぐに処分しろ」
霊能者に強くいわれたが、配信者として撮影データを消すことなどできない。
樹海について語っていくうえでこの先必要になるため、データは絶対に消すことはできないと伝えた。
すると、「保管をしておくならUSBメモリーなどに移して、なるべくファイルを開くな!」と強く警告された。
遺体を探すという目的は達成されたものの、遺体の主は成仏していなかったのだ。
遺体の主は我々に強い怨みを持っているため、今後もなにか起きないか心配であった。
私は樹海探索の後には必ず塩で清め、神社を参拝するようにしていた。
今回も可能な範囲で除霊はしてきた。
それでも、不可解な現象は帰宅後すぐに起き始めた。
【猫の変化と周りへの影響】
動物は勘が鋭く第六感の持ち主ともいわれている。
霊はUV(紫外線)や電磁波を出しているのではないかといわれており、犬にはそのUVが見えていると、イギリスの生物学者が発表している。
また、猫も霊的なエネルギーを感じとることができるといわれており、古代エジプトでは神聖な動物とされていた。
私が帰宅してから、目に見える変化が最初にあらわれたのは飼い猫だった。
普段は寝ており、22:00ぐらいに起きてきて、私の部屋で過ごすことが多い。
その猫が廊下に座り、私の部屋に入ってこようとしない。
近づいてもすぐに離れてしまう。
飼い猫にどこまで霊的な力があるのかはわからないが、何かが見えているのだろうか?
一定の距離を保ち、じっとこちらを見つめている。
この日を境に、私に近寄らなくなってしまった。
家族への影響も出始めた。
私が遺体と遭遇したことが関係しているのかは不明だが、
夜中に子供が飛び起き、泣き叫びながら部屋の隅を指さして
「おばけがいる!!」と訴えてきた。
私には確認できなかったが、部屋の隅に霊がいたのだろうか?
「何もいないよ」となだめて寝かしつけたが、私もその日は眠ることができなかった。
初めて遺体を見たショックのせいだろう、目を閉じるとあの現場が蘇ってくる。
翌日になると、今度は妻が交通事故を起こしてしまった。
子どもを幼稚園に送る際、車で人と接触してしまったのだ。
妻が事故を起こすのはこれが初めてだ。
その直後には、子ども2人が40度近い高熱を出し、私も高熱で動けなくなった。
これらの出来事がすべて霊と関係しているかどうかはわからない。
霊能者の友人に相談しても、樹海の帰り以来、この件については何も話してくれなくなってしまった。
「撮った写真を見るな。ファイルを開くな」という忠告をしてくるだけだ。
幸い一週間ほどすると霊障はおさまったようで、家族への影響も出なくなった。
私は撮影をする際、スマホにもデータを残すようにしている。
一眼レフのデータは、USBメモリーに移して開かないようにしていたが、スマホのデータはそのままだった。
スマホのデータは樹海に行った日以来、触れないようにしていた。
高熱で動けなかったこともあるが、何よりも記憶が鮮明に蘇るので、今思うと無意識に写真との距離を置いていたのだろう。
家族を含めての霊障に悩まされたため、データをメモリーに移しスマホからは削除することにした。
その時にファイルを恐る恐る開くと、首の無い黒い服を着た生々しい遺体写真がある。
発見時の臭い……飛び交うハエの羽音……鮮明に蘇ってくる。
ファイルを開いたついでに編集しようしたところ、画面が急にフリーズしてしまった。
スマホ自体が動かなくなったため、再起動をした。
もう一度ファイルを開くと、首無し遺体の写真1枚が真っ赤に変色していた。
なぜそのような変化が起きたのかはわからないが、赤いセロファンを画面に貼ったかのように、真っ赤に染まっていた……。
“自ら命を絶ったものはあの世へ行けない”
その真相は定かではない。
霊を信じない者には、くだらない話だろう。
様々な影響が出た身としては、そのような話を信じてしまい、霊も存在するのではないかと考えてしまうのだ。
私は、この話を人には話さないようにしている。
話しはじめるとなぜか体調が悪くなってしまうからだ。
記事を書いている今も体調がすぐれない。
遺体の主が私のもとへ寄ってくるのだろうか?
この体験は人生で一番の恐怖体験だった。
呪物コレクター田中俊行さんのYouTubeチャンネル「トシが行く」に出演させていただいた際、この話をさせていただいた。
興味のある方は是非ご覧になっていただきたい。
【田中俊行の呪物開封】
【樹海怪談】「成仏する気はない」樹海で使われた縄と持ち主不明の観音像を引き取ると、怒る霊が恐怖のメッセージを送ってきました⋯
【残された遺族の心境とは】
日本は自殺死亡率上位の国と認識されている。
自殺は残された遺族に大きな影響を与える。
残された遺族がまず最初に直面する感情は悲しみではない。
「なぜ気づけなかった?」「どうして止めることができなかった?」という、自身への怒りと後悔である。
ほとんどの遺族は“なぜ?”と思うそうだ。
以前、取材をした「自殺防止センター」のスタッフも、自分の兄を自殺で亡くしている。
その時も、「まったく気づかなかった」と話していた。
一週間前に会ったときは普通だったのに……“なぜ?”
いじめを家族に相談できない者が多いのだから、自殺についてなど相談できるものではないだろう。
私には姉がいるが、私と姉はどちらも過去にいじめられた経験を持っている。
姉はその時のことを両親に話しているが、私は今でもその話はしないようにしている。
話すことによって両親が過去の自分を責めてしまうと思ったからだ。
私は母親に愛されていた。
愛されているがゆえに話せないことはある。
遺体の主がどのような理由で死を選んだのかはわからない。
あの場所で一人、自殺を選んだということは、相談できる環境がなかったと考えて間違いないだろう。
およそ1年が経過した頃に、その現場に再度足を運んでみた。
現場からは骨や遺留品がすべてなくなっており、そこに遺体があったことなど想像もできないだろう。
片付けの様子からみて、警察が回収したのは間違いない。
あの遺体の主は家族のもとへ帰ったのだろうか?
それとも引き取り手がなく、無縁仏として納骨堂におさめられたのだろうか?
その後のことはわからないが、虚しさだけを感じた。
遺体の痕跡がなくなり、周りと変わらない景色。
この場所で一人の人生の幕が閉じたことは、紛れもない事実である。
文・写真:ココペリコ
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