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本を読む③-α

前号で紹介した本。

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この本の続きで、私たち大人が具体的にはどうすればいいのかを私の個人的な見解含めて書きます。

子どもたちの「非認知能力」を伸ばすためにはどうすればいいのか。
やり抜く力や自制心はどうすれば身につくのでしょうか。
これらに直接働きかけても効果的ではないということです。

学校におきかえてみます。
答えは、「学業のための粘り強さ」を身につけることだと本書では述べています。
この「学業のための粘り強さ」は状況によって大きく左右されます。
生徒に粘り強い行動をさせるためには、子どもたちの心のありようが大切になります。
鍵となるのは4つの信念。

①私はこの学校に所属している
②私の能力は努力によって伸びる
③私はこれを成功させることができる
④この勉強は私にとって価値がある

生徒たちが授業中にこういった信念を持つことができると様々な課題を乗り越えられる力が身に付きます。

ある実験の話しです。
先生がアフリカ系の生徒に課題を出しました。
生徒から提出された課題に先生は2通りのフィードバックをしました。
1つはただのフィードバックの付箋を貼られた生徒たちが課題を書き直したのは17%。
もう1つはフィードバックの付箋に高い期待が貼られた生徒たちは72%も課題を書き直した結果が出ました。
生徒たちに対して信頼しているというメッセージを伝えることでおおきな変化があらわれたのです。

子どもたちが課題に自らやり遂げようとするためには、大人が「自信をもって」、「勉強をしなさい」と直球で伝えてもなかなかうまくいきません。
”性格を教えることはできない”というのは本書でも述べています。
子どもたちが”性格を学ぶ”ためには継続的にサポートを受けながら、思い切ってやってみることを当たり前とすることです。友だちと一緒に取り組んだり、それをクラスの前で発表したりすることで、クラスへの参加を求めるようにします。そうなると子どもたちは最初緊張をしたり、誰かに助けを求めるようになりますが、少しずつ自信をつけていくことで自分で取り組むようになります。
誰かと一緒に取り組んだりする”人間関係”を作り、難しいけど解決できそうな課題を乗り越えることは、

「私はこれを成功させることができる」
「私の能力は努力によって伸びる」

という気持ちを作るうえで大切な要素になります。
前向きな心のありようを貧困層の子どもたちに生み出せる方法でもあるのです。
つまり、子どもたちが前向きな心を持つと、いざ問題に出会ったとしても、自ら取り組み解決できる経験を積み重ねることで努力や苦労をすることで自分の能力が育つことがわかるようになっていくのです。

大人側ができることとすれば、最初から無理難題な課題を与えるのではなく、少しがんばれば解決できる程度の課題から取り組ませることが必要なのだと個人的には思いました。

課題

バージニア大学の教授がアメリカの公立学校を対象に調査した結果、ほとんど全ての学校で生徒たちに出される課題が単純で繰り返しの多いもの、基礎的なスキルを際限なく繰り返すだけのものであることがわかりました。
こうした授業を受けている生徒は知的な課題に粘り強く取り組むような能力を伸ばす機会を失っていることになります。

これはちょっと意外だったのですが、日本の数学の授業はこういった方法に比べるととても良い評価を受けているそうです。
日本では、グループ単位やクラス全体で話し合うことがあります。ここで生徒たちは議論を行い、教師は答えにたどり着けるようにうまくリードします。すると、正しい答えは教師によって教えられるのではなく、生徒から出てくることがあります。
時になかなか答えにたどり着けず、イライラすることもありますが、こうしたことも大事だと考えられています。

このような課題に取り組む過程が「性格を作り上げる機会」となるのです。

ティーパー・ラーニング(より深い学習)

「生徒中心の学習法」とも呼ばれるこの方法の提唱者は現在の教育システムではこれから必要になってくる能力を伸ばすことができないと述べています。
ワンチームになって仕事をする能力、人前でプレゼンする能力、効果的な文章を書く能力、深い分析試行をする能力、新しい問題に対しての解決能力が今後必要となってきます。
これらのスキルを伸ばすためには練習する機会が必要です。
ティーパー・ラーニングの提唱者たちは次のような教育を推奨しています。

・探求型の指導
⇒教室で、教師がただ講義するだけでなく、生徒に議論させること。
・プロジェクト型の指導
⇒生徒たちが、たいていはグループで、仕上がるまでに何週間、何か月も
 かかるような複雑な課題に取り組むこと。
・実績重視の評価
⇒生徒たちを期末試験の得点で判断するのではなく、彼らが一年かけて築い
 た実績、プレゼンテーション、文章、芸術作品などで評価すること。

こういった教育をしていくことで生じる不満などに対処していくことで生徒たちの知力や知識が伸びるだけでなく、非認知能力(学業のための粘り強さ)が伸びることになると著者は話しています。

解決策

まとめになります。

不利な状況下にある子どもたちへの対応として、彼らの人生に介入することは、

①学校でよりよい教育を受けさせること(ティーパー・ラーニング等)
②家で支えが得られるように親を手助けすること、あるいは理想的にはこの
 二つを組み合わせること

貧困撲滅の戦略として最も効果的な手段なのです。

このように、不利な状況下にある子どもたちに介入していくことが重要なのはおわかりだと思います。
ただ、結局どうすればいいのか?

この問いに対して、著者は3つの提案をしています。

第一に、政策を変えること。
貧困層の子どものために十分な支援ができる環境を作ること。
それには、従来の学校のシステムや授業内容を見直すこと。
様々なものを見直していくには、市、州、閣僚などの規模で考えていく必要がある。しかし、それはなかなか難しい。
だからこそ、私たちはいまこそこういった社会政策について議論を行うべきなのです。この本はそれを推進するガイドとなる存在になれたいいと思っています。

第二に、私たちは行動を変える必要があります。
逆境に強い子どもたちを育てていくために、よりよい環境づくりをしていくべきです。
子どもたちを取り巻く大人は、国が変わったり法律が整うまで待つ必要はありません。
子どもたちは大人が気が付かないような些細な物事から変わり始めます。
大人たちはほんの少し余裕をもち、子どもたちのために時間を少し取ること。
こうした個人個人の行動が大きな変化を生むことに繋がります。

第三に、私たちは考え方を変える必要があります。
私たちはデータの詳細にとらわれやすい。データは重要だけど、ときには研究をした個々の人たちに目を向けること。
子どもたちの助けになりたいという思いで孤児院や貧困層が多くいる村に出向く人もいる。
困難な環境にいる子どもたちを手助けすることはかなりの労力が必要です。
しかし、そういった行動が子どもやその家族の暮らし、私たちのコミュニティ、そして国全体に大きな変化を生むことは研究結果で明らかになっています。
研究者がしてきたように私たちも行動することで今より少しでもうまくできるはずだということを理解するべきです。
最初に取り組むことは、その程度でも十分なのです。

これは、本書にもかかれていますが、教師の役割として、ただテストの点を上げたり、有名高校や大学へ合格させることで評価を受けるのではなく、生徒たちの非認知能力を伸ばすことができる教師や大人こそ評価されなければなりません。

この考えを、私のようなサッカー指導者に置き換えると、結果を出せばいいというものではありません。
有名な高校やプロの下部組織に入るような選手を輩出すればいいというわけでもわりません。
サッカーを好きになる子どもたちをたくさん増やすこと。
生涯にわたってサッカーを楽しめるような人間を増やしていくことがサッカー文化を作っていくことにつながると思います。
そういう指導者が評価されることも必要なのです。

以上で本の内容まとめを終了します。
この本を読んで良かったと心から思います。

子どもたちへの接し方が明らかに変わりました。
幼児を指導する機会があるのですが、いうことをきけない、決まりを守れない子がいます。
そういう子に頭を悩ませてた時もありましたが、この本を読んでからは、その背景を見ることができました。
どうしてそういう行動をとるのか、ではどうしたらこちらのことを受け入れてくれるのか、そう考えることができたのです。
頭ごなしで決めていたつもりはないけど、子どもに関わるうえで知識が不足していたのだと思ったのは、いうまでもありません。

親への介入といっても、そんなこと一指導者がなかなかできることではありません。だからこそ、この本で紹介されているようなプロジェクトを学ぶ必要があるということなのでしょう。
そういった考えのもと、今も子どもたちの助けとなるよう行動している人たちに敬意を表したいと思います。
私も行動していきます。考えを変えていきます。政策について議論していきます。

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