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全アーティストのための音楽ストリーミング基礎講座

これからのストリーミング時代に向けて、いますぐできることをまとめました。必ず抑えておいてほしいことと考え方です。

インディーアーティストで自分で楽曲を配信しているアーティストの方、メジャーレーベルと呼ばれる大手レーベルのアーティストの方問わず参考になればと。
ストリーミングに関しては今後主戦場になるので、早めにファンベースを築き上げるのが最良の選択となります。ストリーミングは積み上げ型のビジネスですので。

Apple Music、LINE MUSIC、Spotify、Youtube / Youtube Music、Amazon Music、AWAはじめとするすべての配信サービスで役に立つTipsと思います。

①事前準備・配信開始までに必ず行う7つのこと
②プロモーション・あなたがファンとエンゲージしてる強みはどこ?
③分析・KPIアーティストとの比較
④情報インプット 


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事前準備・配信開始までに必ず行う7つのこと

楽曲を配信する上で、事前に行っておくべきことがいくつかあります。
Tunecoreのような個人アーティスト向けのアグリゲーターサービスは最短2日で配信可能ですが、最低でも2週間〜10日前には(理由は後述)納品作業を行いましょう。大手レーベルの場合、実納品はもっと前かもしれませんね。納品作業を行ったあとは下記を確認しましょう。

-各配信サービスでの自分のアーティストプロフィールページの確認
各配信サービスで自分たちの最新アーティスト写真が反映されているか、これまでのリリースが紐付いているか確認しましょう。
Spotifyの場合、Spotify for Artistsに申請し使用することで自分で適宜変更できます。必ず使えるようにしておきましょう。

下記も必ず事前に抑えましょう。
Apple Music for Artists
Youtubeチャンネルダッシュボード


-配信リンクURLの確認
実際に自分の楽曲が配信される際、ほとんどのケースで日付変更後の0時で配信されます。0時になった瞬間から宣伝可能です。自分のSNSで即投稿できるよう各配信サービスでの楽曲URLリンクは確認しておきましょう。
TunecoreであればLinkCoreのURLは配信前からサイトに埋め込み可能ですね。


-配信時間の注意

多くの配信サービスでは0時に配信開始となります。ただし全世界に配信されるストリーミングサービスの場合、多くの場合その国での0時に配信されるので日本で0時に配信されていてもNYでは14時間後にしか配信されないということですね。一方Youtubeは配信開始の瞬間全世界でライブになります。これはアグリゲーターサービスによってことなるので事前に確認しておきましょう。
自分の楽曲をアメリカの人に聞いてもらおうと思ってSNSに投稿してもまだ聞けない国があるかもしれません。14時間後に投稿してくださいね。

-メタデータチェック
納品の際入力したメタデータに過ちがないか再度確認しておきましょう。
featuring Artist、コラボレーションArtistがどのように各配信サービスで表示されるか再度確認。featuring、&やwithではなく、連名のコラボレーション表示で世界のTOPアーティストが納品しているのはアルゴリズムとの戦いを見据えたメタデータ戦略です。コラボのアーティストがクリッカブルになっている配信サービスでは特に重要。
またYoutubeに関してはISRCが付与されているか確認しておきましょう。ビルボードチャート攻略には動画再生指標がマストです。



-事前プロモーション
デジタル全盛とはいえ、テレビやラジオは強大なメディアです。ラジオ局の人に聞いてもらえるなら事前にプロモーションしておきましょう。
Spotifyであればプレイリストを作っているEditorial teamに聞いてもらえるかもしれませんのでサブミットしておきましょう。
ネットで調べるとHow can I promote my music on Spotify? という項目が用意されてます。熟読の上、Spotify for Artistsからサブミットしてみましょう
How do I submit music to your editorial team? も参考に。
Spotifyでは使っているユーザーさんに合わせたアルゴリズムのプレイリストが多数ありますよね。Release Radarもその1つのようですね。


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サイトによると上記とのことなので、7日前に申請となるとやはり2週間〜10日前には納品しておきたいですね。


-PRE SAVEや予告コンテンツ
  Spotify、Apple Music、DeezerなどではユーザーにPre Saveしてもらうことが可能です。各配信サービスが行ってるサービスではなく第三者サービスが行っているので、SNSとの連動、ソーシャルアンロックが向いている方は利用しましょう。
ティザーMovieをSNSに投稿する場合は必ず遷移先のURLをつけましょう。といっても時代は完全にリリース後のプロモーションに重きを置くのがグローバルスタンダードなので、ティザーは無くてもよいです。どうせ聞けないんですし。
配信以降投稿するコンテンツの準備はタイムラインを敷いて決めておきましょう。


-大手レーベル所属アーティストのかたは上記のような準備ができているか担当者に確認
担当者への確認 is 大事。


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プロモーション
あなたがファンとエンゲージしてる強みはどこ?

リリースされた後は、その作品をどう広めていくか。3つのステップです。
それぞれのステップで何をすべきか考えましょう。

①知ってもらう → 知ってもらうために何をするのか
②広げてもらう → ファンに広げてもらうために何をするのか
③愛してもらう → 毎日聞いてもらうために何をするのか

まずは、あなたがファンとエンゲージしてる強みはどこかを認識しましょう。
インスタでファンと交流するのが得意ですか?生配信が得意ですか?ライブ演奏が得意ですか?Tik Tokでのダンスが得意ですか?Twitterで発信するのが得意ですか?クラブで友達が多いのが得意ですか?
何でもよいのですが、アーティストとしてファンとエンゲージしやすい強みを見つけてください。そこを最重要視しつつ、下記のようにSNS含めプロモーション全包囲で行いましょう。

SNS / オンライン / オフライン / メディアプロモーション

-SNS 
→すべてのSNSで投稿
当たり前過ぎますがすべてのチャンネルで行いましょう。インスタのストーリー投稿の場合はBENIさんのようにサービスごとにハイライトして置いておくのも◎

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配信サービスプラットフォーム別で個別に投稿
前述のLinkCoresmartURLのような各配信サービスへのリンクをひとまとめにしたユニバーサルリンクをつかってSNS投稿行うのも有効ですが、必ず各配信サービスのリンクでも個別に投稿しましょう。クリックした先への距離が短いほうがクリック率高いのはファネルの方程式上しょうがないので。

流行ってるコンテンツってこのあたり確実に抑えてるんですよね。ヒプマイのアカウント参考にしてください。魔法でここまで流行ってるわけじゃないです。きちんと積み重ねてらっしゃいます。

こちらも一例。各配信サービスのリンクで投稿されてるFlowBackさん。


→ファンと接点をもつ瞬間を有効に 
LIVE公演が終わって半年後にBlu-ray / DVDをリリースすることだってありますよね。ファンは映像を見て思い出に浸り、また曲を聞きたくなるはず。そのチャンスを逃さないようにしましょう。ももクロTwitterは完璧。7月にリリースしたクリスマス公演のBlu-ray / DVDの訴求しつつセトリプレイリストに誘導。素晴らしい。

→ファンと喜びを共有
実践しているかた多いですがYoutubeで○○回再生突破、っていうのは嬉しいですよね。いろんなサービスでの数字で投稿しましょうね。
きちんとリンクをつけて、ファンにまた見てもらいましょう。聞いてもらいましょう。愛してもらうために大事です。
さすがの御二方はこのあたり確実に抑えてますね。

→毎日聞いてもらおう
「毎日聞いてください」って心から伝えましょう。ストリーミングは積み上げ型のビジネス。音楽コンテンツが動画配信コンテンツと明確に違うのは、そのコンテンツを何度も何度も再生するということです。リリース日に聞いてもらうための投稿はもちろんですが、それは「知ってもらう」ためだけです。「広げてもらう」「愛してもらう」ためにもSNS使いましょう。


-オンラインでのプロモーション
自身のホームページ、SNS各チャンネルに楽曲の再生リンクいれましょう。ホームページはorigami PRODUCTIONSが完璧ですね。

Youtubeの概要欄も必ずいれましょう。特にYoutubeは画面占有時間長いので概要欄は超重要。たとえばDua LipaのDon't Start Nowはこんな感じ。
ユニバーサルリンクが冒頭に、その後各SNSとストリーミングサービスが並ぶお手本。
(日本人アーティストなら最後は物販サイトのリンク書いてほしいですね)

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LINEでBGM設定もしましょうね。LINE MUSICのフレンズチョイスも有効ですね。お友達からも広げていきましょう。

ジャンルによってはSoundcloudも活用し、概要欄には配信サービスのリンクをいれましょう。私が担当だったAmPmさんだって当たり前のことを積み重ねてこられたのです。

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Twitterとニュースメディアを巻き込んでオンラインでBuzzを起こしていく方法だってありますね。m-floさんチームが自分たちがもっともエンゲージしてる強みを確実に捉えた結果、「知ってもらう」と「広げてもらう」の両方できた一例。


Spotifyで配信していくことでいかにリスナー数を上げていくか、作品数がいかに大事か、Frascoを取り上げたnote。私が在職時Frascoさんチーム担当してたので「書いてるの中の人かよ!」ってツッコミながら読んでいました。
彼らはセルフプロデュース力と周囲の巻き込み力が完璧。それって、これからのアーティスト像そのものですよね。



-オフラインでのプロモーション

ライブは絶好の広げてもらう&愛してもらうチャンスです。
来てくれる予定の人に向けて予習プレイリストを公開、来てくれた人、そして来れなかった人に向けてセトリプレイリストを公開。

本来はライブの前後の日程にストリーミング数が最高値にならないとおかしいはずなのです。(なっていないなら何か間違えてるはず!)

ライブに来てもらう前にコールのやり方動画を公開するのもいいですね。これを何度も見て覚える、覚えるために曲を何度もストリーミングで聞いて会場へ向かう。超特急は上手ですね。


ライブ会場のHMVの物販ブースで、ストリーミングサービスのQRが入ったうちわがもらえるなんて素敵ですよね。これも自分たちがファンともっともエンゲージしてる強みを確実に捉えた結果ですね。

当然ですがCD買って、物販買って、ストリーミングで毎日聞いてくれるのがアーティストのためになることをファンも知っていますから。


-メディアへのプロモーション / Submitプラットフォーム
自分の楽曲をとりあげてくれそうなWEBメディア、ブログサイトにも送りましょう。興味があればSubmitHubのようなプラットフォームに申請しましょう。楽曲の向き不向きあるのと、各配信サービスがAI強化のパーソナライズドが進む今となっては追い風になりづらいのが現状ですが 、それでも確度あげていきましょう。
海外戦略興味ある方は、DTMクリエーター向けの記事ですが下記がお勧め。レーベルの担当者のメールアドレスを自動で引っこ抜くChrome拡張機能のくだりとか、発想がガッツありすぎて最高。

プロモーションの項目は長くなってしましたが、改めて意識しましょう。
ファンとエンゲージしてる強みを見つけ、

①知ってもらう → 知ってもらうために何をするのか
②広げてもらう → ファンに広げてもらうために何をするのか
③愛してもらう → 毎日聞いてもらうために何をするのか

続けることでいつしか、ファンとエンゲージして強みそのものがストリーミングで音楽を聞いてもらうことになるはず。全配信プラットフォーム上でのアルゴリズム対策としても有効です。

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ストリーミングアプリはバックグラウンド再生できるので、可処分時間奪わず課金効果がある数少ないアプリです。
聞きながらSNSでの発信を見てもらったり、物販サイト見てもらったりチケット購入してもらったりしてもらいましょう。
最も気持ちが高まる瞬間を逃さずに。



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分析

曲が配信された後、プロモーションをし続けながら重要になってくるのがアナリティクス=分析です。自分たちのSNSの投稿の結果どうなったのか、どの投稿から人が来たのか、サービスごとの人の増え方に違いはあるのか。
なにかアクションを起こしたときは必ず確認を。

Spotify for Artists
Apple Music for Artists
Youtubeチャンネルダッシュボード
Twitter Analytics
Soundcloud Stats
Chartmetric
Soundcharts
LinkCore smartURL (Twitter Analyticsとの比較)

tunecoreから配信してるのであればご自身のアカウントでのtunecoreダッシュボード、その他アグリゲーターサービスで配信してる場合、各配信サービスでの数値が一括して見れるダッシュボードがあるかどうか確認しましょう。
分析のためにもやはりYoutubeはレコード会社チャンネルから配信するのではなくアーティストチャンネルを勧めます。

各アナリティクスツールの使い方は調べてもらうと出てくることが多いので割愛しますが、とりあえず1点だけ。
再生回数と、聞いているユニークユーザー数の相関関係
多くのツールで確認できます。
「○○再生回数いった〜!」と、それだけで一喜一憂してませんか?
その価値は果たして同じでしょうか?

100人が1回聞く 再生回数100回 
10人が10回聞く 再生回数100回
1人が100回聞く 再生回数100回 

すべて同じ100回再生ですね。

1回しか聞いてくれない人が何%ぐらいですか?10回聞いてくれる人は何%ぐらいでしょう。100回聞いてくれる人はどうですか?バランスはどんな感じでしょう?自分たちのアーティストステージを分析しつつ、100回聞いてくれる=「愛してもらう」人をどう増やすか、に立ち戻りましょう。
いや、自分たちはとにかく1回でもいいから聞いてほしんだ、という場合は「知ってもらう」人を増やすプロモーションに立ち戻りましょう。

KPIにしている国内アーティストがいるのであれば、その熱量バランスを知るためにも、数値が、TV、SNS、CDセールス、ルックアップ、何に紐付いてどう変動してるか分析しましょう。

Youtube music charts & insights
Youtubeの週間楽曲ランキングはCSVでもダウンロード可能です。

Spotify Charts
Spotifyでの週間、デイリーの再生回数とランキング。CSVでもダウンロード可能。

ORICON
CDセールス枚数

実数でランキングを出しているストリーミングサービスが少ないのですが上記3つを計測しつつ下記Billboardのインサイトと比較を行うだけでも、何に引っ張られてどこから来てるかがわかりやすいです。CSVを読み込んでGoogleスプレッドシートでチームで管理するのも良いですね。

各指標がどうランキングに影響しているのかわかります。
(紅白に出ていたアーティストでさえ、点を線につなげれていないことがわかります。悲しい。レコード会社の人、見てますか〜)

当然ですがストリーミング数は全体の利用者数が上昇傾向にありますので、勝手に上昇します。その上昇傾向曲線のパーセンテージを省いてみたりもしつつ、自分たちの数値がどうなのか定量的に分析しましょうね。
(「順調に増えてますね〜」とか言うレーベル担当者に騙されてはいけませんよ。増えてる市場なのだから当たり前です。)

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情報インプット

自己啓蒙も含めてなのですが、情報インプットの精度が上がらないと、何をするにもアウトプットがお粗末になってしまいますね。
みなさんに吉報です!ストリーミングビジネスに関しては実は超ラッキーなことがあります。それは日本が超後進国だということ。つまりビジネスとして成長しきってる先進国があり、そこでの事例がネット上に溢れてるということですね。ただしい情報を精査して世界中の情報を入手しましょう。

進化し続ける配信サービスプラットフォームを攻略していきましょう。みんなで先進国追い越そうぜ。
お勧めの記事を2つ紹介しますね。

日本では個人の方やインディーレーベルの方がストリーミングサービスで配信する場合はTunecoreが多いと思いますが、そういったアグリゲーター、ディストリビューターサービスは世界中に無数にあります。
その中でもArtist without a Labelを掲げるAWAL、小袋成彬さん、Takashi Watanabeさんを取り上げたbeipanaさんの記事です。
長く愛されるファンベースをいかに作るか。そしてヒューマンキュレーテッドプレイリストの限界と、パーソナライズドされていくプラットフォームでの戦いに誰よりも早く気づかれているお二人。さすがです。


音楽とは関係ないのですが、Supremeはこの数年でどうやってブランド価値をあそこまで上げたのか。
みんななんとなくBuzzは体感してるんだけど、実はうまく言語化できていないことなので。音楽プロモーションにも大きなヒントがあります。
Supremeに関しては他にも記事たくさんありますが面白いですね。



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おわりに

わたしの願いとして「みんなでもう少し確度上げようぜ!」というのがあります。点と点がつながっていなかったり、良かった点悪かった点が分析できていなかったり。勿体ないことが散見されるのがいまの日本の音楽業界です。
音楽コンテンツは、数字にしづらい「ファンに愛されて育っていく無形のコンテンツ」だとしても、それを言い訳にして分析と数値化から距離を置くのは間違っています。

個人でDIYに活動されている方も、メジャーレーベルの有名アーティストでも実はするべきことは全く変わらないです。プロモーションはレーベルだけの仕事ではありません。チーム戦。
アーティストも最大限協力して一緒に最大化しましょう。
一方でアーティストも分析力をつけて、物言うアーティストになってください。

良い楽曲を作ることは当然として、プロモーションは、当たり前のことをきちんと積み重ねて、情報インプットの質をあげて、最良のアウトプットにつなげる。知ってもらい、広げてもらい、愛してもらう。一過性ではなく、長く愛されるファンベースを作り上げる。

何かのアクションのたびに
「これって何のためにやるんだっけ?」と常に立ち返りましょうね。

みなさんのアーティスト活動の人生の中で、必ずチャンスのタイミングはやってきます。それは大手レーベルでCMタイアップつけてもらえる事かもしれないし、事務所に所属してTV出演のチャンスをもらえる事かもしれない。念願の紅白出場かもしれない。Tik  Tokで一気に自分の曲がBuzzする事かも。Youtubeでメキシコでの再生が異常にあがる事かもしれない。Spotifyで人気のプレイリストに入ることかもしれない。

いずれの場合も、そのときになって対応していては遅いのです。普段からやるべきことを確実にこなし、舞い込んだチャンスを最大化すべく、点と点を繋げる力つけておいてほしいのです。

お金かけなくてもできること山のようにあるし、みんなでもう少し(目的達成の)確度上げようぜ!なお話でした。

みんなで頑張りましょうよ。
風向きは確実に変わってきてるし。
次回作からじゃなくて、今すぐ。

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